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第四章
06
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「すみませんでした」
私がなんて言おうか迷っている所で、ミリエナが突然そう口にした。なんで謝ったのかわからない。私とエリスがそんな感じで戸惑って視線を合わせると、ミリエナが続ける。
「あぁ……あの、あの時の事です、グルシアが滅亡したという話をして、その後の私の態度についてです」
「あぁ」
つい私は納得の声をあげてしまう。あの時の事。私が取り乱して、それから翌日にここを訪れた時。ミリエナは気まずそうに、なんと声をかけたらいいか分からないという態度だった。
「でも、そんなの」
そんなの謝ることじゃない。そう言おうとしたところで、ミリエナの言葉に遮られた。
「あの時、いつもと変わらない態度をとるべきだったんです……それが」
そこまで言ってミリエナが、エリスをチラリと見てから続ける。
「それが、エリスさんと私の、差だったんですよね」
二人の間に、差なんてない。私が小さく顔を振ると、ミリエナが苦笑した。
「ありがとうございます、また、この街で冒険者として活動する機会があったら、その時は」
そこまで言った時にはもう、ミリエナはいつもの笑顔に戻っていた。
「何なりとお申し付けくださいませ、ご要望のクエストをお探しいたしますので」
「はい」
私が何も言えないでいると、エリスが代わる様に返事をした。それから「いきましょうか、ルネーナ」と私の背中に触れて促してくる。
受付を離れながら、何とも言えない感覚が私の中に広がった。どんな言葉をかければよかったのか。ミリエナのアレはどういう意味だったのか。スッキリしない感覚。チラリと一度視線を向けると、ミリエナは机に視線を落としているだけだった。
「……友達って難しいな」
少なくとも、上手くいかなかったというのは分かる。
「ルネーナは友達作り初心者なのに、とても難易度が高い環境にありますから、余計に」
声をかけたというより、独り言のような感じで呟いた言葉にエリスが返してくる。難易度が高い。元王女でしかも母国は滅亡して、そんな環境は上級者でも難しいんじゃないかな。
「そう、だよね」
私は笑顔をうかべる。うかべたつもりだったけど、力が入っていない気の抜けた笑顔になっているような気がする。それに対してエリスが「運が悪いですね」と苦笑した。自分の生まれを呪うつもりはないけど、それなりに過酷な物なんだから、友達作りくらいもうちょっと簡単にしてほしい物だ。そこだけは少し呪う。
こうして、ミリエナとの別れは、私が想像していた別れとは違ったものになっていた。
私がなんて言おうか迷っている所で、ミリエナが突然そう口にした。なんで謝ったのかわからない。私とエリスがそんな感じで戸惑って視線を合わせると、ミリエナが続ける。
「あぁ……あの、あの時の事です、グルシアが滅亡したという話をして、その後の私の態度についてです」
「あぁ」
つい私は納得の声をあげてしまう。あの時の事。私が取り乱して、それから翌日にここを訪れた時。ミリエナは気まずそうに、なんと声をかけたらいいか分からないという態度だった。
「でも、そんなの」
そんなの謝ることじゃない。そう言おうとしたところで、ミリエナの言葉に遮られた。
「あの時、いつもと変わらない態度をとるべきだったんです……それが」
そこまで言ってミリエナが、エリスをチラリと見てから続ける。
「それが、エリスさんと私の、差だったんですよね」
二人の間に、差なんてない。私が小さく顔を振ると、ミリエナが苦笑した。
「ありがとうございます、また、この街で冒険者として活動する機会があったら、その時は」
そこまで言った時にはもう、ミリエナはいつもの笑顔に戻っていた。
「何なりとお申し付けくださいませ、ご要望のクエストをお探しいたしますので」
「はい」
私が何も言えないでいると、エリスが代わる様に返事をした。それから「いきましょうか、ルネーナ」と私の背中に触れて促してくる。
受付を離れながら、何とも言えない感覚が私の中に広がった。どんな言葉をかければよかったのか。ミリエナのアレはどういう意味だったのか。スッキリしない感覚。チラリと一度視線を向けると、ミリエナは机に視線を落としているだけだった。
「……友達って難しいな」
少なくとも、上手くいかなかったというのは分かる。
「ルネーナは友達作り初心者なのに、とても難易度が高い環境にありますから、余計に」
声をかけたというより、独り言のような感じで呟いた言葉にエリスが返してくる。難易度が高い。元王女でしかも母国は滅亡して、そんな環境は上級者でも難しいんじゃないかな。
「そう、だよね」
私は笑顔をうかべる。うかべたつもりだったけど、力が入っていない気の抜けた笑顔になっているような気がする。それに対してエリスが「運が悪いですね」と苦笑した。自分の生まれを呪うつもりはないけど、それなりに過酷な物なんだから、友達作りくらいもうちょっと簡単にしてほしい物だ。そこだけは少し呪う。
こうして、ミリエナとの別れは、私が想像していた別れとは違ったものになっていた。
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