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第四章

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 偵察の報告では、オークの数は百体前後集まっているらしい。しかも陣形を組んでいるという事だ。四体が四角に配置された物が二組。その二組の間に、一体のハイオークが配置されている。その九体のチームが十一組。そして、その一番後ろに控えているリーダーらしき一体、という集まりという事だ。しかも、その後ろに控えているリーダーが厄介らしい。
「オークロードか」
 ギガルドがため息をつく様に呟いた。オークロード。書物の中でしか知らないけど、ハイオークのさらに上位種のオークだったはず。ギガルドや冒険者たちの顔を見て分かるのは、厄介な相手という事だ。私は恐る恐る聞いてみる。
「オークロードに勝てるランクの冒険者はいるんだよね?」
「あぁ……普通のオークロードの、討伐実績がある冒険者チームがいくつかいる」
 本来なら安心できるはずの言葉だったけど、今のこの状況では不安が増すばかりだ。ギガルドの普通のオークロード、という強調された言葉が原因だろう。普通に考えたらこの状況で、オークロードだけがバカなはずがない。つまり、どれくらいの脅威度があるかわからない、未知の相手という事だ。それに加えて、陣形を組んでいるオークとハイオーク。経験が低い冒険者である私でも、マズい状況だと理解できる。
「……どうするの?」
 私はギガルドに問いかける。もうこれは、ギガルドの采配に任せるしかない。連携せずにそれぞれ単独でぶつかっていったら、ひとたまりもない気がする。
「……こちらが一つ有利な点があるとすれば、魔法による遠距離攻撃だ」
 ギガルドの言葉に、私は大きく頷く。モンスターは魔法が使えない。魔法は学問だから、知能が無ければ使えないのだ。つまり魔法で遠くから攻撃していけば。
「でもそれは、普通のモンスターだった場合ですよね」
 エリスの声が響く。よくわからなくて、私はエリスに問いかける。
「どういう事? あっ」
 そこまで言って、エリスの言葉の意味を理解した。エリスは確認する様に、事実を述べる。
「色々な状況を踏まえて、オークたちは知能が高いと考えるべきです、知能が高いという事は魔法が使えるかもしれない」
 かもしれない、という事だけでも十分警戒に値する事だった。でもそれじゃあ。
「そうだ、使える可能性を捨てきれない、人間ほど使いこなせるとは思えないが」
 険しい顔でそう口にするギガルド。それに対してエリスが、さらに言葉を重ねる。
「しかも、相手は森の中です、木々が盾になって魔法が通り辛い」
 それは遠距離攻撃の効果が薄いという事だ。
「じゃあどうするの?!」
 私の言葉で、ギガルドとエリスは揃って顔をしかめた。
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