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5章【りゅうの忠告と、ポテトのタバコ】
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鉄格子の向こう、また新しい番号で呼ばれる日々。
ポテトはもう、数字でしか存在を認識されない“物”になっていた。
名乗ることもない。自己紹介もない。朝になれば起こされ、飯を食い、作業に出される。夕方に戻ってきて、あとはただ、壁を見ている。
「……なにこれ、マジで、人生か?」
ある夜、独房でぼそりと呟いたその言葉には、もうかつてのような“開き直り”もなかった。
虚無。その一言がふさわしい。
ふと、脳内に“あの声”が蘇る。
——「お前、それ、マジで一線越えてるんだぞ」
りゅうの声だった。
あの夜、最初に闇バイトを始めたことを伝えたとき、りゅうは怒りを通り越していた。
「本当にやめとけ。お前、今ふざけてるつもりかもしれんけど、笑えんことになるぞ」
「そんなもんで稼いだ金、全部地獄に引っ張られる」
ポテトは、そのときどう返したか思い出す。
「しらね。お前、黙ってろ」
——煙を吐きながら。
ポテスピの味と一緒に、忠告を灰にした。
自分が正しい、俺は分かってる——そう思い込むことで、かろうじて“自分”を守っていた。
でも今、その言葉が、何より胸に刺さる。
「……黙ってるべきじゃなかったかもな、りゅう」
初めてそう思った。でも、今さら何も届かない。
りゅうはもう、二度と面会にも来てくれないだろう。
裁判の日以来、誰とも会っていない。手紙も来ない。差し入れもない。
完全な“孤立”。
作業中、隣の囚人が呟いた。
「お前さ、前にネットで見たよ。借金理論のやつ。ガチでキレてて笑ったわ」
「……」
ポテトは反応しない。
その“笑われた映像”こそが、自分をここまで引きずった鎖だと、今ではよく分かる。
——自分を面白がっていたのは、世間じゃない。自分だった。
夜、夢に出てきたのは、かもめでもりょうでもなく、りゅうだった。
「お前、壊れてるの、自分じゃん。気づけよ、なあ」
その言葉に、夢の中のポテトはタバコを吸いながら、また言っていた。
「……正直言っていい? 俺、間違ってなかったって、今も思ってる」
けれど——
そのタバコは、燃え尽きることなく、煙すら出なかった。
朝。無機質なブザーが響く。
薄い毛布を剥がされ、ポテトはゆっくりと体を起こした。
誰にも話しかけられず、誰の名前も呼ばれず、ただ「2854番」として存在を維持している。
昨日と今日の区別も、曜日の感覚もない。
ただ、規則正しく死んでいくだけのような時間が、ここにはある。
「ガチで、俺、生きてんの?」
呟いた声は、もう“反抗的な若者”のそれではなかった。
カラカラに乾いた、使い古された雑巾みたいな声。
洗面所で鏡を見れば、そこには“ポテト”などいない。
目の下に深く刻まれたクマ。脂ぎった肌。前歯の黄ばみ。頭頂部は完全に薄くなり、もはや“汚い中年”でしかなかった。
「なにこれ……だれ?」
心の奥で、小さな“ポテト”が震えていた。
かつて“お前の知らないやつ”だったはずの自分が、今や“誰も知らなくていいやつ”になっていた。
作業場では、隣の受刑者がまた話しかけてくる。
「お前、昔SNSで自分語りしてたやつだよな。『金は貸す側が負け』ってやつ。あれ、マジで伝説」
「……伝説じゃなくて、事故な」
ポテトは苦笑するが、その笑いには力がなかった。
けれど、心の中ではこう叫んでいた。
——「お前に言われたくねぇよ。てめぇだってここにいるクズだろ?」
だが、口には出さなかった。もう、自分がクズだと認めざるを得なかったから。
夜、独房で一人。ポテスピは当然吸えない。
手持ち無沙汰なまま、ポテトはベッドに横たわる。
夢に出てくるのは、いつも同じ。
りゅうの顔。
かもめの笑い声。
りょうの煽り。
そして、かつての自分——バカみたいに笑って、バカみたいに金を借りて、バカみたいにタバコを吹かしてたあの男。
夢の中で、りゅうが言う。
「お前は、誰かが止めてくれると思ってた。ずっと。他人のせいにすれば、全部リセットできると思ってた。でも、俺は何度も言ったぞ?“今に地獄見る”って。なぁポテト、それでもお前、俺の声、聞かなかったよな?」
ポテトは、夢の中でも目を逸らす。
「……だって、誰も……助けなかったし……俺が悪いだけじゃねぇし……」
その言い訳を遮るように、りゅうが顔を近づける。
「お前、ずっと誰のせいにしてた?“世界が悪い”“時代が悪い”“周りが馬鹿”って。……でも結局、お前、ただの“自分が嫌いなだけのやつ”だろ?」
「ちがう……」
「じゃあ証明してみろよ、塀の外で。それができなかったから、お前はここにいるんだろ?」
「ちが……俺は……俺は……っ」
目が覚めた。体が汗でびっしょりになっていた。
息が荒い。手が震えている。
今すぐタバコを吸いたい。でも、どこにもない。
代わりに、部屋の隅に蹲って、声を殺して叫んだ。
「……俺は……悪くねぇ……っつってんだろ……!!」
しかし、その声に返答はない。鉄格子が答えてくれるわけもない。
“りゅうの忠告”は、今になって初めて理解された。
そして、理解したところで、もう遅い。
「なあ、ガチで聞いてくれる?」
その日、作業場でポテトはいきなり隣の受刑者に話しかけた。
「俺さ、言われてんの。“全部自分のせい”って。でも、普通に考えて、こんな社会でまともに生きてけるわけなくね?」
隣の男は無視した。だがポテトは止まらない。
「しらねぇだろ、お前。俺がどんだけネットでバズったか。“借金してても偉そうなやつ”って、超話題だったから。正直、あの時の俺、マジで伝説だと思ってる」
男がチラリと視線を送るが、すぐに前を向き直す。
「でもさぁ、炎上ってやっぱ嫉妬なんよ。俺のキャラが濃すぎたってだけ。あいつら、俺が自由だったのが気に入らなかっただけ」
その語り口は、まるで“まだ世界の主役を気取っているかのような”厚顔無恥な自信に満ちていた。
だが、どこか目が泳いでいた。声のトーンも不安定で、早口だった。
「お前の知らないやつになってやる、って言って、俺マジで“越えた”んだよね。しらねーけど」
「……黙れよ」
隣の男が低く言った。
「は?」
ポテトは一瞬、ムッとした顔を浮かべる。
「お前、俺の話聞いてた?ガチで、今の話、人生訓レベルだったっしょ」
「お前の“人生訓”で、人生終わってんだよ。まだ気づいてねーのかよ」
その言葉に、ポテトは目を見開いた。
「は?何様?ガチで言うけど、お前みたいな量産型受刑者とは違うから、俺」
「違うよな。お前、ただの“痛い奴”だよ。自分の口臭にも気づかずに、世間に毒ばら撒いて自爆した、ただの恥さらしだ」
沈黙。作業場の空気が一瞬、止まる。
だが、ポテトは笑ってごまかした。
「いやいや、草。お前、センスねぇな。口臭ネタ、今さら?時代遅れだって」
「それ、お前が言う?」
「……しらね。お前は黙ってろ」
そう言って目を逸らしたが、その背中には“敗北”の気配がにじんでいた。
もう誰も、彼を“面白がって”はいない。誰も“いじって”もくれない。
“無関心”という最大の軽蔑だけが、彼の存在に張りついていた。
夜、独房で一人。
ポテトは自分の匂いにむせそうになりながら、ふとこう呟いた。
「……でも俺は、正直に生きただけなんだけどな」
その“正直”が、どれだけ多くの人を傷つけ、不快にさせ、巻き込み、潰してきたか——
彼には、まだちゃんとは分かっていなかった。
「俺が間違ってた? いや、しらね。だって、お前の知らないやつが、俺だったんだし」
最後の逃げ道も、もう誰も聞いてくれない空間で、ポテトは“自分だけの言い訳”を、ただ一人で繰り返していた。
「なぁ……ちょっと見てみ?」
ある日の夕方、独房の中で、ポテトはゴミ箱を漁っていた。
空になったティッシュ箱、黒ずんだペットボトルのキャップ、割れたボールペンの芯。
その一つひとつを吟味するように拾い上げては、自分のスペースに持ち帰る。
「これさ、“ポテスピ改”って名前なんだけどさ。正直言って、ガチで発明だと思うわ」
——“ポテスピ”とは、ポテトが塀の外で吸っていた、誰も知らないほど安い粗悪なタバコの銘柄名。
いまや当然、刑務所では禁煙。代替品などない。だが、ポテトは自作していたのだ。“記憶とプライドの再現”として。
ボールペンの芯を中空にして、ティッシュを巻き、黒い糸で縛る。内部に、乾燥した茶葉を詰める。
それを使い捨てライターで(なぜか所持していた)炙るという、完全にアウトな工程。
「しらねーけど、俺の発明力、ヤバくね?」
そう笑いながら、囚人服の裾でこっそり隠しつつ、“ポテスピ改”に火をつける。
「……っく……ゲホッ!!」
最初の一口で、咽せ返る。煙じゃない。“燃えた布”の毒気だった。
「お前、なにやってんだよ」
その様子を見ていた隣房の囚人が、呆れたように呟く。
「見りゃわかるだろ。タバコだよ。“自作”の。“ポテスピ改”。ガチで革命。俺、これで起業できると思う」
「……死にてぇのか?」
「いやいや、しらねーし。俺、耐性あるから。外でもこれに近いもん吸ってたし」
その言葉に、周囲からくすくすと笑い声が漏れた。それは“感心”でも“羨望”でもない。
——“憐れみ”と“軽蔑”の入り混じった音。
数分後、巡回に来た看守が異臭に気づき、ポテトの独房に踏み込んだ。
「なにを燃やした。言え」
「いや、ガチで……あの、実験……っていうか、クリエイティブ?」
「“燃やしてはいけない物品の不正使用”。罰則対象だ」
「え、でも、ポテスピって……」
「聞いてない」
そのまま引きずり出され、別棟で小一時間説教を食らった。
罰点が加算され、作業は最下層の“糞バケツ清掃”に降格された。
—
それ以来、ポテトは“くさいやつ”という新たな肩書きを得ることになった。
食堂では誰も同じテーブルに座らなくなった。
「おい、ポテスピが来るぞ」「マジで臭くね?まだあれ吸ってんの?」「いや、あれ脳まで焼けてるだろ」
聞こえるように囁かれ、わざと咳き込まれる。
ポテトは笑っていた。最初は。
「お前ら、しらねーよな。伝説になるってこと」
「俺、今、お前らの知らないとこでバズってるから。マジで」
でもその笑顔は、日を追うごとに引きつっていった。
自分を“面白がってくれる”観客はいない。
自分の“ナルシズム”に拍手してくれる舞台もない。
ある日、作業場で、“糞バケツ清掃”の途中。ポテトは誤って、清掃用バケツの中身を自分の足元にぶちまけた。
その瞬間、作業場中に汚物の悪臭が充満した。
「うわ、ポテトじゃん!まーた“臭い伝説”作ったの?」
「お前、もう“ポテスカトール”に名前変えろや」
笑いが弾けた。
そして、その中の一人が、ポテトの肩を叩いてこう言った。
「なぁ、次はそのうんこで“ポテスピ最終形態”でも作ってくれよ?」
ポテトは、その瞬間、口を開けて笑った。
「は……いや……しらね……俺は、ただの発明家……っしょ?」
しかし、目の奥には涙が浮かんでいた。
誰も見ないと思っていた。でも、見ていた。
そして、誰も、もう助ける気はなかった。
夜。ベッドで横になりながら、ポテトはこうつぶやいた。
「……俺って……いつから、こんなに……いらねぇやつになったんだろ」
その言葉が、虚空に吸い込まれた。
でも、すぐにこう言い直した。
「ま、でも……しらね。ガチで俺、間違ってねぇし」
もう、誰もその言葉を聞いていない。
それでもポテトは、今日も“王”のつもりで、孤独な玉座に座り続けていた。
夜明け前、点呼前の薄暗い独房。
ポテトは壁に向かって喋っていた。
「……俺がさ、“今の社会”で間違ってるって言われても、正直、納得いかねーのよ。わかる?ガチで」
壁は答えない。
「だって俺、才能あったし。ネットでも話題だったし。“言葉選びのセンスがある”ってDMも来てたし。マジで」
布団の上に足を崩して座り、膝を抱えながら、独り言は続く。
「バズってた頃、1日5000再生くらいは普通だったし。“お前の知らないやつ”シリーズ、毎日拡散されててさ……ほんと、今でも伝説だと思ってるし」
誰かに伝わるはずもない言葉を、ポテトは“聞こえてるつもり”で吐いていた。
—
日中、作業場。
ポテトは清掃担当として便器を磨いていた。
雑巾がけ中に、後ろから囁く声が聞こえる。
「ねえ、“ポテスピ様”って、今も吸ってんの?」
「いや、吸ってるっていうか、“生き様”が煙たいんだよ」
爆笑。
ポテトは無言で雑巾を絞り続けた。
「お前さ、何で笑わないの?」
背後の囚人がわざとらしく声をかけてきた。
「昔みたいに『しらね、お前は黙ってろ』って言わねーの?」
ポテトは、雑巾をもう一度強く絞った。
滴る水音が、滑稽なくらい大きく響いた。
「……言ったところで、どうせ“はいはいポテト君”で終わりじゃん」
「は?なにそれ。“被害者ムーブ”すか?w」
「しらねーけど、俺ってさ、どっちにしても“ウザい”って言われんの。だったら、黙ってた方がマシじゃね?」
「いやいや、黙っててもウザいよ、お前は」
その一言に、周囲がまた笑った。
——“何をしてもムカつかれる存在”。
ポテトはついにそこまで“純化”されていた。
—
午後、休憩中。ポテトは食堂の隅に座っていた。
目の前のトレーには、冷えた白飯と煮物。誰とも話さない。話しかけられない。
周囲のざわめきの中で、ポテトは小声で歌い始めた。
「お前のしらな~い~や~つ~……♪ 今も~王様~~……♪」
変なメロディ。変な声。誰も笑わない。
「……俺はまだ……終わってない」
そう呟いた瞬間、背後から何かが飛んできて、トレーに落ちた。
——残飯だった。
「おっと、王様に献上物。失礼いたしました~」
笑い声。ポテトは一瞬、拳を握った。
でも、何も言わなかった。
ただ、静かに残飯を拭き取って、飯を食べ続けた。
—
夜。独房。
また、壁に向かって喋っていた。
「……俺は、諦めてない。しらねーけど、ここ出たら……もう一回やれるって、俺は信じてんの」
言葉は、泣いているようだった。
でも、目には涙がなかった。
「りゅうがさ、“今に地獄見るぞ”って言ったけど……ここが地獄って、俺、まだ思ってないし」
「俺はさ、“お前の知らないやつ”で、ここから出てくって決めてんだよ。誰に何言われても、それだけは……」
——その言葉の途中で、ポテトの声が詰まった。
誰も見ていないと思っていた。
でも、監視カメラの向こうで、記録を取っていた若い職員が、ぼそりと呟いた。
「……あの人、もう“人”じゃないな……」
画面の中のポテトは、汚れた囚人服のまま、独房の壁に語り続けていた。
まるで、そこに“自分しかいない”ことを証明するために。
冬。冷え込みが厳しくなった頃、ポテトの部屋の暖房が壊れた。
独房の中、冷たい床に毛布を巻きつけて横たわるポテトは、唇を噛みながらこう呟いていた。
「いや……でも、これぐらい別に。ガチで、外の方が寒かったし」
声が震えていた。
歯がカチカチと鳴るのを止められず、それでも“寒さに負けてない”自分を演じようとしていた。
それは“誰かに見せるため”ではない。
——“自分にだけは、見下されたくなかった”からだった。
—
ある日、雑居房の壁に、囚人たちの落書きが書かれていた。
《ここで一番イラつくやつランキング》
そこには、堂々とこう書かれていた。
1位 ポテト(うざい・口くさい・全てが不快)
2位以下は空欄だった。
「……は?」
ポテトは見て、固まった。
「いや、しらね。ガチで俺、ここで一番“考えてる人”だと思うけど?」
呟きながら、歯を食いしばる。
だが、その直後、他の囚人が背後から囁いた。
「ポテト、お前、書いた本人かと思ったわ。自作自演?」
周囲に笑いが起こる。
ポテトは何も返せなかった。
怒鳴りもせず、睨みもしなかった。ただ、黙って落書きをじっと見つめていた。
その夜。
壁に向かって話す癖も、もう無くなっていた。
布団の中で、小さくつぶやく。
「俺、なんでここにいんの?」
言葉が出た瞬間、胸がギュッと痛んだ。
——その答えだけは、知っていた。ずっと前から。
だけど、ずっと、見ないふりをしていた。
——金を借りて
——人を裏切って
——自分は悪くないと信じて
——嘘を垂れ流して
——他人のせいにして
——全部崩れたのに、まだ崩れきってなかったフリをして
「……正直言っていい? 俺……ただのゴミだったわ」
その言葉だけは、誰にも聞かれたくなかった。
だから、涙がこぼれる前に、自分の口を毛布で塞いだ。
—
翌朝、看守が巡回に来たとき、ポテトはまだ布団にくるまっていた。
声をかけられても動かない。何度呼ばれても反応しない。
「おい、大湯。点呼だ」
無反応。
看守が扉を開け、近づくと、ようやくポテトが動いた。
だが、その目は焦点が合っていなかった。
まぶたは腫れ、口元はわずかに開いていた。
「……しらね。もう全部……どうでもよくね?」
声は、限りなく“終わっていた”。
看守は無言でその場を離れた。報告も、何もなかった。
——“あいつは、もう壊れた”
それだけだった。
—
誰もがポテトを忘れ始めていた。
りゅうは新しい仕事に集中していた。
りょうは別のネタでSNSを荒らしていた。
かもめは、どこか別の場所で、別の“面白いやつ”と笑っていた。
そして、ポテトだけが、未だに“自分が主役”の世界で、誰にも届かないセリフを、口の中で繰り返していた。
「……お前の……知らないやつ……」
しかし、それを覚えているのは、もはやポテトだけだった。
ポテトはもう、数字でしか存在を認識されない“物”になっていた。
名乗ることもない。自己紹介もない。朝になれば起こされ、飯を食い、作業に出される。夕方に戻ってきて、あとはただ、壁を見ている。
「……なにこれ、マジで、人生か?」
ある夜、独房でぼそりと呟いたその言葉には、もうかつてのような“開き直り”もなかった。
虚無。その一言がふさわしい。
ふと、脳内に“あの声”が蘇る。
——「お前、それ、マジで一線越えてるんだぞ」
りゅうの声だった。
あの夜、最初に闇バイトを始めたことを伝えたとき、りゅうは怒りを通り越していた。
「本当にやめとけ。お前、今ふざけてるつもりかもしれんけど、笑えんことになるぞ」
「そんなもんで稼いだ金、全部地獄に引っ張られる」
ポテトは、そのときどう返したか思い出す。
「しらね。お前、黙ってろ」
——煙を吐きながら。
ポテスピの味と一緒に、忠告を灰にした。
自分が正しい、俺は分かってる——そう思い込むことで、かろうじて“自分”を守っていた。
でも今、その言葉が、何より胸に刺さる。
「……黙ってるべきじゃなかったかもな、りゅう」
初めてそう思った。でも、今さら何も届かない。
りゅうはもう、二度と面会にも来てくれないだろう。
裁判の日以来、誰とも会っていない。手紙も来ない。差し入れもない。
完全な“孤立”。
作業中、隣の囚人が呟いた。
「お前さ、前にネットで見たよ。借金理論のやつ。ガチでキレてて笑ったわ」
「……」
ポテトは反応しない。
その“笑われた映像”こそが、自分をここまで引きずった鎖だと、今ではよく分かる。
——自分を面白がっていたのは、世間じゃない。自分だった。
夜、夢に出てきたのは、かもめでもりょうでもなく、りゅうだった。
「お前、壊れてるの、自分じゃん。気づけよ、なあ」
その言葉に、夢の中のポテトはタバコを吸いながら、また言っていた。
「……正直言っていい? 俺、間違ってなかったって、今も思ってる」
けれど——
そのタバコは、燃え尽きることなく、煙すら出なかった。
朝。無機質なブザーが響く。
薄い毛布を剥がされ、ポテトはゆっくりと体を起こした。
誰にも話しかけられず、誰の名前も呼ばれず、ただ「2854番」として存在を維持している。
昨日と今日の区別も、曜日の感覚もない。
ただ、規則正しく死んでいくだけのような時間が、ここにはある。
「ガチで、俺、生きてんの?」
呟いた声は、もう“反抗的な若者”のそれではなかった。
カラカラに乾いた、使い古された雑巾みたいな声。
洗面所で鏡を見れば、そこには“ポテト”などいない。
目の下に深く刻まれたクマ。脂ぎった肌。前歯の黄ばみ。頭頂部は完全に薄くなり、もはや“汚い中年”でしかなかった。
「なにこれ……だれ?」
心の奥で、小さな“ポテト”が震えていた。
かつて“お前の知らないやつ”だったはずの自分が、今や“誰も知らなくていいやつ”になっていた。
作業場では、隣の受刑者がまた話しかけてくる。
「お前、昔SNSで自分語りしてたやつだよな。『金は貸す側が負け』ってやつ。あれ、マジで伝説」
「……伝説じゃなくて、事故な」
ポテトは苦笑するが、その笑いには力がなかった。
けれど、心の中ではこう叫んでいた。
——「お前に言われたくねぇよ。てめぇだってここにいるクズだろ?」
だが、口には出さなかった。もう、自分がクズだと認めざるを得なかったから。
夜、独房で一人。ポテスピは当然吸えない。
手持ち無沙汰なまま、ポテトはベッドに横たわる。
夢に出てくるのは、いつも同じ。
りゅうの顔。
かもめの笑い声。
りょうの煽り。
そして、かつての自分——バカみたいに笑って、バカみたいに金を借りて、バカみたいにタバコを吹かしてたあの男。
夢の中で、りゅうが言う。
「お前は、誰かが止めてくれると思ってた。ずっと。他人のせいにすれば、全部リセットできると思ってた。でも、俺は何度も言ったぞ?“今に地獄見る”って。なぁポテト、それでもお前、俺の声、聞かなかったよな?」
ポテトは、夢の中でも目を逸らす。
「……だって、誰も……助けなかったし……俺が悪いだけじゃねぇし……」
その言い訳を遮るように、りゅうが顔を近づける。
「お前、ずっと誰のせいにしてた?“世界が悪い”“時代が悪い”“周りが馬鹿”って。……でも結局、お前、ただの“自分が嫌いなだけのやつ”だろ?」
「ちがう……」
「じゃあ証明してみろよ、塀の外で。それができなかったから、お前はここにいるんだろ?」
「ちが……俺は……俺は……っ」
目が覚めた。体が汗でびっしょりになっていた。
息が荒い。手が震えている。
今すぐタバコを吸いたい。でも、どこにもない。
代わりに、部屋の隅に蹲って、声を殺して叫んだ。
「……俺は……悪くねぇ……っつってんだろ……!!」
しかし、その声に返答はない。鉄格子が答えてくれるわけもない。
“りゅうの忠告”は、今になって初めて理解された。
そして、理解したところで、もう遅い。
「なあ、ガチで聞いてくれる?」
その日、作業場でポテトはいきなり隣の受刑者に話しかけた。
「俺さ、言われてんの。“全部自分のせい”って。でも、普通に考えて、こんな社会でまともに生きてけるわけなくね?」
隣の男は無視した。だがポテトは止まらない。
「しらねぇだろ、お前。俺がどんだけネットでバズったか。“借金してても偉そうなやつ”って、超話題だったから。正直、あの時の俺、マジで伝説だと思ってる」
男がチラリと視線を送るが、すぐに前を向き直す。
「でもさぁ、炎上ってやっぱ嫉妬なんよ。俺のキャラが濃すぎたってだけ。あいつら、俺が自由だったのが気に入らなかっただけ」
その語り口は、まるで“まだ世界の主役を気取っているかのような”厚顔無恥な自信に満ちていた。
だが、どこか目が泳いでいた。声のトーンも不安定で、早口だった。
「お前の知らないやつになってやる、って言って、俺マジで“越えた”んだよね。しらねーけど」
「……黙れよ」
隣の男が低く言った。
「は?」
ポテトは一瞬、ムッとした顔を浮かべる。
「お前、俺の話聞いてた?ガチで、今の話、人生訓レベルだったっしょ」
「お前の“人生訓”で、人生終わってんだよ。まだ気づいてねーのかよ」
その言葉に、ポテトは目を見開いた。
「は?何様?ガチで言うけど、お前みたいな量産型受刑者とは違うから、俺」
「違うよな。お前、ただの“痛い奴”だよ。自分の口臭にも気づかずに、世間に毒ばら撒いて自爆した、ただの恥さらしだ」
沈黙。作業場の空気が一瞬、止まる。
だが、ポテトは笑ってごまかした。
「いやいや、草。お前、センスねぇな。口臭ネタ、今さら?時代遅れだって」
「それ、お前が言う?」
「……しらね。お前は黙ってろ」
そう言って目を逸らしたが、その背中には“敗北”の気配がにじんでいた。
もう誰も、彼を“面白がって”はいない。誰も“いじって”もくれない。
“無関心”という最大の軽蔑だけが、彼の存在に張りついていた。
夜、独房で一人。
ポテトは自分の匂いにむせそうになりながら、ふとこう呟いた。
「……でも俺は、正直に生きただけなんだけどな」
その“正直”が、どれだけ多くの人を傷つけ、不快にさせ、巻き込み、潰してきたか——
彼には、まだちゃんとは分かっていなかった。
「俺が間違ってた? いや、しらね。だって、お前の知らないやつが、俺だったんだし」
最後の逃げ道も、もう誰も聞いてくれない空間で、ポテトは“自分だけの言い訳”を、ただ一人で繰り返していた。
「なぁ……ちょっと見てみ?」
ある日の夕方、独房の中で、ポテトはゴミ箱を漁っていた。
空になったティッシュ箱、黒ずんだペットボトルのキャップ、割れたボールペンの芯。
その一つひとつを吟味するように拾い上げては、自分のスペースに持ち帰る。
「これさ、“ポテスピ改”って名前なんだけどさ。正直言って、ガチで発明だと思うわ」
——“ポテスピ”とは、ポテトが塀の外で吸っていた、誰も知らないほど安い粗悪なタバコの銘柄名。
いまや当然、刑務所では禁煙。代替品などない。だが、ポテトは自作していたのだ。“記憶とプライドの再現”として。
ボールペンの芯を中空にして、ティッシュを巻き、黒い糸で縛る。内部に、乾燥した茶葉を詰める。
それを使い捨てライターで(なぜか所持していた)炙るという、完全にアウトな工程。
「しらねーけど、俺の発明力、ヤバくね?」
そう笑いながら、囚人服の裾でこっそり隠しつつ、“ポテスピ改”に火をつける。
「……っく……ゲホッ!!」
最初の一口で、咽せ返る。煙じゃない。“燃えた布”の毒気だった。
「お前、なにやってんだよ」
その様子を見ていた隣房の囚人が、呆れたように呟く。
「見りゃわかるだろ。タバコだよ。“自作”の。“ポテスピ改”。ガチで革命。俺、これで起業できると思う」
「……死にてぇのか?」
「いやいや、しらねーし。俺、耐性あるから。外でもこれに近いもん吸ってたし」
その言葉に、周囲からくすくすと笑い声が漏れた。それは“感心”でも“羨望”でもない。
——“憐れみ”と“軽蔑”の入り混じった音。
数分後、巡回に来た看守が異臭に気づき、ポテトの独房に踏み込んだ。
「なにを燃やした。言え」
「いや、ガチで……あの、実験……っていうか、クリエイティブ?」
「“燃やしてはいけない物品の不正使用”。罰則対象だ」
「え、でも、ポテスピって……」
「聞いてない」
そのまま引きずり出され、別棟で小一時間説教を食らった。
罰点が加算され、作業は最下層の“糞バケツ清掃”に降格された。
—
それ以来、ポテトは“くさいやつ”という新たな肩書きを得ることになった。
食堂では誰も同じテーブルに座らなくなった。
「おい、ポテスピが来るぞ」「マジで臭くね?まだあれ吸ってんの?」「いや、あれ脳まで焼けてるだろ」
聞こえるように囁かれ、わざと咳き込まれる。
ポテトは笑っていた。最初は。
「お前ら、しらねーよな。伝説になるってこと」
「俺、今、お前らの知らないとこでバズってるから。マジで」
でもその笑顔は、日を追うごとに引きつっていった。
自分を“面白がってくれる”観客はいない。
自分の“ナルシズム”に拍手してくれる舞台もない。
ある日、作業場で、“糞バケツ清掃”の途中。ポテトは誤って、清掃用バケツの中身を自分の足元にぶちまけた。
その瞬間、作業場中に汚物の悪臭が充満した。
「うわ、ポテトじゃん!まーた“臭い伝説”作ったの?」
「お前、もう“ポテスカトール”に名前変えろや」
笑いが弾けた。
そして、その中の一人が、ポテトの肩を叩いてこう言った。
「なぁ、次はそのうんこで“ポテスピ最終形態”でも作ってくれよ?」
ポテトは、その瞬間、口を開けて笑った。
「は……いや……しらね……俺は、ただの発明家……っしょ?」
しかし、目の奥には涙が浮かんでいた。
誰も見ないと思っていた。でも、見ていた。
そして、誰も、もう助ける気はなかった。
夜。ベッドで横になりながら、ポテトはこうつぶやいた。
「……俺って……いつから、こんなに……いらねぇやつになったんだろ」
その言葉が、虚空に吸い込まれた。
でも、すぐにこう言い直した。
「ま、でも……しらね。ガチで俺、間違ってねぇし」
もう、誰もその言葉を聞いていない。
それでもポテトは、今日も“王”のつもりで、孤独な玉座に座り続けていた。
夜明け前、点呼前の薄暗い独房。
ポテトは壁に向かって喋っていた。
「……俺がさ、“今の社会”で間違ってるって言われても、正直、納得いかねーのよ。わかる?ガチで」
壁は答えない。
「だって俺、才能あったし。ネットでも話題だったし。“言葉選びのセンスがある”ってDMも来てたし。マジで」
布団の上に足を崩して座り、膝を抱えながら、独り言は続く。
「バズってた頃、1日5000再生くらいは普通だったし。“お前の知らないやつ”シリーズ、毎日拡散されててさ……ほんと、今でも伝説だと思ってるし」
誰かに伝わるはずもない言葉を、ポテトは“聞こえてるつもり”で吐いていた。
—
日中、作業場。
ポテトは清掃担当として便器を磨いていた。
雑巾がけ中に、後ろから囁く声が聞こえる。
「ねえ、“ポテスピ様”って、今も吸ってんの?」
「いや、吸ってるっていうか、“生き様”が煙たいんだよ」
爆笑。
ポテトは無言で雑巾を絞り続けた。
「お前さ、何で笑わないの?」
背後の囚人がわざとらしく声をかけてきた。
「昔みたいに『しらね、お前は黙ってろ』って言わねーの?」
ポテトは、雑巾をもう一度強く絞った。
滴る水音が、滑稽なくらい大きく響いた。
「……言ったところで、どうせ“はいはいポテト君”で終わりじゃん」
「は?なにそれ。“被害者ムーブ”すか?w」
「しらねーけど、俺ってさ、どっちにしても“ウザい”って言われんの。だったら、黙ってた方がマシじゃね?」
「いやいや、黙っててもウザいよ、お前は」
その一言に、周囲がまた笑った。
——“何をしてもムカつかれる存在”。
ポテトはついにそこまで“純化”されていた。
—
午後、休憩中。ポテトは食堂の隅に座っていた。
目の前のトレーには、冷えた白飯と煮物。誰とも話さない。話しかけられない。
周囲のざわめきの中で、ポテトは小声で歌い始めた。
「お前のしらな~い~や~つ~……♪ 今も~王様~~……♪」
変なメロディ。変な声。誰も笑わない。
「……俺はまだ……終わってない」
そう呟いた瞬間、背後から何かが飛んできて、トレーに落ちた。
——残飯だった。
「おっと、王様に献上物。失礼いたしました~」
笑い声。ポテトは一瞬、拳を握った。
でも、何も言わなかった。
ただ、静かに残飯を拭き取って、飯を食べ続けた。
—
夜。独房。
また、壁に向かって喋っていた。
「……俺は、諦めてない。しらねーけど、ここ出たら……もう一回やれるって、俺は信じてんの」
言葉は、泣いているようだった。
でも、目には涙がなかった。
「りゅうがさ、“今に地獄見るぞ”って言ったけど……ここが地獄って、俺、まだ思ってないし」
「俺はさ、“お前の知らないやつ”で、ここから出てくって決めてんだよ。誰に何言われても、それだけは……」
——その言葉の途中で、ポテトの声が詰まった。
誰も見ていないと思っていた。
でも、監視カメラの向こうで、記録を取っていた若い職員が、ぼそりと呟いた。
「……あの人、もう“人”じゃないな……」
画面の中のポテトは、汚れた囚人服のまま、独房の壁に語り続けていた。
まるで、そこに“自分しかいない”ことを証明するために。
冬。冷え込みが厳しくなった頃、ポテトの部屋の暖房が壊れた。
独房の中、冷たい床に毛布を巻きつけて横たわるポテトは、唇を噛みながらこう呟いていた。
「いや……でも、これぐらい別に。ガチで、外の方が寒かったし」
声が震えていた。
歯がカチカチと鳴るのを止められず、それでも“寒さに負けてない”自分を演じようとしていた。
それは“誰かに見せるため”ではない。
——“自分にだけは、見下されたくなかった”からだった。
—
ある日、雑居房の壁に、囚人たちの落書きが書かれていた。
《ここで一番イラつくやつランキング》
そこには、堂々とこう書かれていた。
1位 ポテト(うざい・口くさい・全てが不快)
2位以下は空欄だった。
「……は?」
ポテトは見て、固まった。
「いや、しらね。ガチで俺、ここで一番“考えてる人”だと思うけど?」
呟きながら、歯を食いしばる。
だが、その直後、他の囚人が背後から囁いた。
「ポテト、お前、書いた本人かと思ったわ。自作自演?」
周囲に笑いが起こる。
ポテトは何も返せなかった。
怒鳴りもせず、睨みもしなかった。ただ、黙って落書きをじっと見つめていた。
その夜。
壁に向かって話す癖も、もう無くなっていた。
布団の中で、小さくつぶやく。
「俺、なんでここにいんの?」
言葉が出た瞬間、胸がギュッと痛んだ。
——その答えだけは、知っていた。ずっと前から。
だけど、ずっと、見ないふりをしていた。
——金を借りて
——人を裏切って
——自分は悪くないと信じて
——嘘を垂れ流して
——他人のせいにして
——全部崩れたのに、まだ崩れきってなかったフリをして
「……正直言っていい? 俺……ただのゴミだったわ」
その言葉だけは、誰にも聞かれたくなかった。
だから、涙がこぼれる前に、自分の口を毛布で塞いだ。
—
翌朝、看守が巡回に来たとき、ポテトはまだ布団にくるまっていた。
声をかけられても動かない。何度呼ばれても反応しない。
「おい、大湯。点呼だ」
無反応。
看守が扉を開け、近づくと、ようやくポテトが動いた。
だが、その目は焦点が合っていなかった。
まぶたは腫れ、口元はわずかに開いていた。
「……しらね。もう全部……どうでもよくね?」
声は、限りなく“終わっていた”。
看守は無言でその場を離れた。報告も、何もなかった。
——“あいつは、もう壊れた”
それだけだった。
—
誰もがポテトを忘れ始めていた。
りゅうは新しい仕事に集中していた。
りょうは別のネタでSNSを荒らしていた。
かもめは、どこか別の場所で、別の“面白いやつ”と笑っていた。
そして、ポテトだけが、未だに“自分が主役”の世界で、誰にも届かないセリフを、口の中で繰り返していた。
「……お前の……知らないやつ……」
しかし、それを覚えているのは、もはやポテトだけだった。
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