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二章 誇れる自分である為に
ex もう一人、見えている光景が違った者
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アイリス・エルマータという一年生の噂は瞬く間に学園中に広まっていて、故にその力を見てみようとかなりの数の生徒も会場へと集まっていた。
当然の事ながら、そのお目当てはアイリスだ。もう一人、その術式を形にする劣化コピーの固有魔術を持つ一年も現れたが、そっちの方は運よく都合の良い固有魔術を身に着けて、お零れを貰ってラッキーだった奴としか思っていない生徒が多い。
だからそうじゃない見方をする者はどちらかと言えば少数派。
観客席に居た劣化コピーの少年の兄、ロイド・レイザークもその一人。
アイリス・エルマータの術式は追試の時に一度見ている。
その時からとんでもない魔術だという認識は強いし、改めて見てもその感想は変わらない。
基礎出力。
柔軟性。
多様さ。
あらゆる点で既存の術式を大きく上回る革新的な術式なのだろうと思った。
そんな物を作り出したアイリス・エルマータという生徒は、色々な人から天才と呼ばれてきた自分なんかよりも遥かに優れた頭脳を持っている。
……どうやら現状まともに魔術を運用できないようだが、それでも本当に凄いと思う。
これまで埋もれていたのがおかしい。
埋もれさせていたあのハゲのようなプライドしかないタイプの魔術師はおかしいと。
自分の兄や父の姿を重ねて、色々な意味で溜息が出る。
そしてなによりため息を吐きたくなるのはこの状況だ。
(……なんだこれ)
分かってる。
皆アイリスを目当てに此処に来ているという事は。
ユーリがその術式の出力装置の役割としてこの場に居るという事は。
だけど……それでもだ。
(もうちょっとなんとかならなかったのかよ)
ユーリの扱いに、どうしても納得がいかなかった。
おそらくあの場に居る教師を含め、此処に居る全員がアイリスの術式の事を正しく理解できていない中で、唯一それを形にして証明できるのがユーリなのだ。
アイリス・エルマータの論文が立証されたのも。
未知の術式で知的好奇心を揺さぶれるのも。
全部全部全部、ユーリが死に物狂いで頑張ってきた結果なのに。
彼の固有魔術というのは、きっとそういう力の筈なのに。
誇っていい物の筈なのに……一人位それができるユーリを気にかけても良い筈なのに。
それだけ凄いことをやっているユーリが、多くの人間から無能として扱われている。
……この程度のどうしようもない再現率でも凄い出力を出せるというような、そんな認識を持っている奴らばかりだという事が伝わってくる。
(……駄目だろ、これは)
ユーリの味方が極端に少ない。
きっとアイリス・エルマータは勿論、あの時も乱入してきた新任の教師も怪しさはあるもののユーリの事を味方してくれるだろうが、それでもあまりに少ない。
……努力の結果、凄い事をやれるようになっているのにだ。
見てられない。
時々微かに見せる、良くない類いの表情の変化が、強くそう思わせる。
「……」
あの追試を一緒に見ていてくれた今日此処にいない友人や、自分達の事情を把握してくれている友人には余計な事はするなと釘を刺してある。
自分には関わる資格が無いと思ったから。
ユーリは絶対に関わってほしくないと思っているだろうから。
でも……果たしてこのままで良いのだろうか。
(……良い訳ねえよな)
結局、ユーリが関わってほしくないと思っているだろうからなんてのは逃げの感情だ。
自分自身がこれからどう向き合っていけば良いのか分からないから……逃げているだけなのかもしれない。だから勇気を出さなければ。
少なくともアイツの家族で味方をしたいと思っているのは自分だけなんだから。
(……これが終わったら、ユーリに会おう)
会ってどんな事を話せばいいのか。
もう何年も酷い言葉だけをぶつけてきて、今更何を話せばいいのか分からないけど、それでもやらなければならない。
(兄ちゃんなんだから。弟の事は守ってやらねえと)
今更どの口が言うんだと、自身で心臓にナイフを突きつけているような気分になるけど。
それでも……それでも。
当然の事ながら、そのお目当てはアイリスだ。もう一人、その術式を形にする劣化コピーの固有魔術を持つ一年も現れたが、そっちの方は運よく都合の良い固有魔術を身に着けて、お零れを貰ってラッキーだった奴としか思っていない生徒が多い。
だからそうじゃない見方をする者はどちらかと言えば少数派。
観客席に居た劣化コピーの少年の兄、ロイド・レイザークもその一人。
アイリス・エルマータの術式は追試の時に一度見ている。
その時からとんでもない魔術だという認識は強いし、改めて見てもその感想は変わらない。
基礎出力。
柔軟性。
多様さ。
あらゆる点で既存の術式を大きく上回る革新的な術式なのだろうと思った。
そんな物を作り出したアイリス・エルマータという生徒は、色々な人から天才と呼ばれてきた自分なんかよりも遥かに優れた頭脳を持っている。
……どうやら現状まともに魔術を運用できないようだが、それでも本当に凄いと思う。
これまで埋もれていたのがおかしい。
埋もれさせていたあのハゲのようなプライドしかないタイプの魔術師はおかしいと。
自分の兄や父の姿を重ねて、色々な意味で溜息が出る。
そしてなによりため息を吐きたくなるのはこの状況だ。
(……なんだこれ)
分かってる。
皆アイリスを目当てに此処に来ているという事は。
ユーリがその術式の出力装置の役割としてこの場に居るという事は。
だけど……それでもだ。
(もうちょっとなんとかならなかったのかよ)
ユーリの扱いに、どうしても納得がいかなかった。
おそらくあの場に居る教師を含め、此処に居る全員がアイリスの術式の事を正しく理解できていない中で、唯一それを形にして証明できるのがユーリなのだ。
アイリス・エルマータの論文が立証されたのも。
未知の術式で知的好奇心を揺さぶれるのも。
全部全部全部、ユーリが死に物狂いで頑張ってきた結果なのに。
彼の固有魔術というのは、きっとそういう力の筈なのに。
誇っていい物の筈なのに……一人位それができるユーリを気にかけても良い筈なのに。
それだけ凄いことをやっているユーリが、多くの人間から無能として扱われている。
……この程度のどうしようもない再現率でも凄い出力を出せるというような、そんな認識を持っている奴らばかりだという事が伝わってくる。
(……駄目だろ、これは)
ユーリの味方が極端に少ない。
きっとアイリス・エルマータは勿論、あの時も乱入してきた新任の教師も怪しさはあるもののユーリの事を味方してくれるだろうが、それでもあまりに少ない。
……努力の結果、凄い事をやれるようになっているのにだ。
見てられない。
時々微かに見せる、良くない類いの表情の変化が、強くそう思わせる。
「……」
あの追試を一緒に見ていてくれた今日此処にいない友人や、自分達の事情を把握してくれている友人には余計な事はするなと釘を刺してある。
自分には関わる資格が無いと思ったから。
ユーリは絶対に関わってほしくないと思っているだろうから。
でも……果たしてこのままで良いのだろうか。
(……良い訳ねえよな)
結局、ユーリが関わってほしくないと思っているだろうからなんてのは逃げの感情だ。
自分自身がこれからどう向き合っていけば良いのか分からないから……逃げているだけなのかもしれない。だから勇気を出さなければ。
少なくともアイツの家族で味方をしたいと思っているのは自分だけなんだから。
(……これが終わったら、ユーリに会おう)
会ってどんな事を話せばいいのか。
もう何年も酷い言葉だけをぶつけてきて、今更何を話せばいいのか分からないけど、それでもやらなければならない。
(兄ちゃんなんだから。弟の事は守ってやらねえと)
今更どの口が言うんだと、自身で心臓にナイフを突きつけているような気分になるけど。
それでも……それでも。
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