4 / 29
一章 男だと思っていた親友が女の子だった話
ex 僕には戦う権利が与えられていない
しおりを挟む
先輩との通話を終えた後、男子制服に身を包む秋瀬楓は複雑な面持ちで小さく息を吐く。
今日はとてもめでたい日だ。
姉の誕生日であり、そして特別な日。
誰が考えたって時代錯誤で馬鹿みたいだと思えるルールから解き放たれて自由になれる日。
(良かった……うまくいきそうだったな)
先輩の様子を見る限り、当然のように困惑している様子はあっても自分を曝け出した姉を拒絶している様子はなくて。
だとすればあの二人ならば、この先悪いようにはならないだろう。
なる筈が無い。
紆余曲折はあるかもしれないけれど、それでも。
二人の事を良く知っているからこそ確信が持てる。
……現実的に、秋瀬渚が望んだ結果が見えてくる。
「大丈夫かな!? 誰かに明人盗られたりしないかな!?」
不定期に、そして高頻度で。
昔からそんな不安を自分に吐露してきた姉の、望んだ未来が見えてくる。
ようやく真っ当な形で恋路を歩み始めた姉の、そんな未来が。
「……」
それはきっとめでたい事だ。
誕生日と一緒に祝うべき事だ。
ずっと見て来たからこそ、そうあるべきなのだ。
そう考えながら。
そう言い聞かせながら、少し前まで一緒に居た人達がいない通学路を歩く。
道中、通学路にある店の窓ガラスに反射された自分の姿が視界に映った。
当然のように可愛げのない男子の制服。
見られたい姿とは真反対の姿。
偽り。
「……なんだこれ」
苦笑いが零れる。
あと二年だ。
中学三年生で三月生まれの自分が、姉のように素の自分を他人に曝け出せるようになるまであと二年。
そうするべき理由をちゃんと理解している、決して破ってはいけない縛りから解き放たれるまであと二年。
楠明人という、本当の自分を見て欲しい相手の前で、見て欲しい自分を表現できるようになるまであと二年。
あまりにも、長い時間。
その頃にはきっと、全部終わっているだろう。
祝福すべき未来が訪れているだろう。
「…………なんだこれ」
姉の幸せな戦いは始まった。
では、秋瀬楓は。
最初から、戦う事すら許されていない。
それは、分かっていた筈なのに。
ずっとずっと理解していた筈なのに。
(……めでたいって思えないや。最低だな、僕って。大好きな二人の事なのに)
ずっと、理想の未来を掻き消せない。
秋瀬楓自身の、理想の未来を。
今日はとてもめでたい日だ。
姉の誕生日であり、そして特別な日。
誰が考えたって時代錯誤で馬鹿みたいだと思えるルールから解き放たれて自由になれる日。
(良かった……うまくいきそうだったな)
先輩の様子を見る限り、当然のように困惑している様子はあっても自分を曝け出した姉を拒絶している様子はなくて。
だとすればあの二人ならば、この先悪いようにはならないだろう。
なる筈が無い。
紆余曲折はあるかもしれないけれど、それでも。
二人の事を良く知っているからこそ確信が持てる。
……現実的に、秋瀬渚が望んだ結果が見えてくる。
「大丈夫かな!? 誰かに明人盗られたりしないかな!?」
不定期に、そして高頻度で。
昔からそんな不安を自分に吐露してきた姉の、望んだ未来が見えてくる。
ようやく真っ当な形で恋路を歩み始めた姉の、そんな未来が。
「……」
それはきっとめでたい事だ。
誕生日と一緒に祝うべき事だ。
ずっと見て来たからこそ、そうあるべきなのだ。
そう考えながら。
そう言い聞かせながら、少し前まで一緒に居た人達がいない通学路を歩く。
道中、通学路にある店の窓ガラスに反射された自分の姿が視界に映った。
当然のように可愛げのない男子の制服。
見られたい姿とは真反対の姿。
偽り。
「……なんだこれ」
苦笑いが零れる。
あと二年だ。
中学三年生で三月生まれの自分が、姉のように素の自分を他人に曝け出せるようになるまであと二年。
そうするべき理由をちゃんと理解している、決して破ってはいけない縛りから解き放たれるまであと二年。
楠明人という、本当の自分を見て欲しい相手の前で、見て欲しい自分を表現できるようになるまであと二年。
あまりにも、長い時間。
その頃にはきっと、全部終わっているだろう。
祝福すべき未来が訪れているだろう。
「…………なんだこれ」
姉の幸せな戦いは始まった。
では、秋瀬楓は。
最初から、戦う事すら許されていない。
それは、分かっていた筈なのに。
ずっとずっと理解していた筈なのに。
(……めでたいって思えないや。最低だな、僕って。大好きな二人の事なのに)
ずっと、理想の未来を掻き消せない。
秋瀬楓自身の、理想の未来を。
0
あなたにおすすめの小説
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる