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一章 男だと思っていた親友が女の子だった話
4 男女の友情という奴は果たして成立するのだろうか?
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これまでの事よりこれからの事を。
そんな楓のアドバイスに頷きはしたが、あくまで振り返らないのは詮索しても既に終わった事でしかない秋瀬家のルールについてだけだ。
渚の、渚とのこれからを自分なりに考える為には、やはり渚とのこれまでの事くらいはちゃんと掘り返しておいた方が良いだろう。
その過去が有って俺達の今がある訳だから。
改めて渚と向き合っていくにはそれが必要だ。
そう考えながら駅までの道程を移動していた訳だが、やはり思い返される思い出の一つ一つが既に原型を留めていない。
当然と言えば当然だ。
「……当たり前だけど、ずっと女だったんだよな」
同性の親友との過去が、実は異性だった親友との思い出となる訳で。
そこに対する見え方が今までの全く同じかと言われたら、そんな風にはできない。
「俺、ずっと女の子と一緒に居たって事なんだよな……」
……そこにこれまでとは違う、実はそうだったという後付けのような華やかさが加わってしまう。
「……良くねえな、これは」
正確に言えばそれを良いと思ってしまう自分の姿勢が良くない。
「良くねえよこれ……」
呟きながら、視線を右手の掌へと落とす。
さっきの感覚が、まだ手に残っている。
……言い訳のできない高揚感と一緒に。
「……渚に会う前に落ち着けよ、俺」
自分に言い聞かせる。
「どうであれ……渚は渚なんだから」
何故これまで女だと気付けなかったのかなんて疑問は一旦置いておくとして、あくまで気付けなかっただけで昨日以前と今日で別人に変わってしまった訳じゃない。
渚は渚なのだ。
秋瀬渚。
幼馴染で俺の親友。
それは変わらない。
変わらない筈なのに、女だって分かった途端にこれまでの過去を含めてそういう対象として認識してしまうのは。
そんな都合の良い掌返しは。
あまりにも人付き合いの在り方として不誠実なように思えた。
高校生活の目標に可愛い彼女を作る事を掲げていた奴が言える話ではないのかもしれないけれど。
否、寧ろそういう事を馬鹿みたいに掲げていたからこそ。
その辺は意識して考えておかなければならないのかもしれない。
そんな事を考えている内に最寄り駅に着いた。
然程広い駅でも無ければ行き先も一緒なので、渚を見付けるのは簡単だった。
「お、やっと来たね。遅かったじゃん」
ベンチに座る渚はこちらに気付いてそう声を掛けてくる。
「そりゃ困惑して固まるってあんなの……お前、絶対他の知り合いとああいう話になっても同じ事するなよ」
「する訳ないじゃん……いや、ほんと勢い余ってやっちゃったって感じだったから……やるとしても明人にしかやらないし」
「いや俺にもやるなよ俺にも」
「……こうやって最後にボソっと小声で喋る奴は聞こえないのが相場じゃないかな」
「そんな漫画みてえな事、そう何種類も一辺に起きるかよ。聞こえるって普通に」
言いながら、なんとかそれらしい事を言いながら……自然と視線が渚の胸元に落ちる。
俺になら良いのか?
そんな考えが、脳内を駆け巡る。
こういうのが良くないと、分かっているのに。
そして渚は少し顔を赤らめて言う。
「しっかし実際どうなのかなって思ってたんだけど……分かるもんだね、そういう視線って」
完全に何を見ていたのかがバレている。
「わ、悪い」
「いいよ謝んなくて。触らせた後なんだから今更でしょ。というか明人的には今までどうやって隠してたんだーとか疑問に思う事も有るだろうから。見るなっていう方が無理があるよ。知的好奇心って奴」
「……まあ、それもあるな」
嘘だ。
今見ていた理由に、そんなもっともらしい理由はない。
有ったのはただの欲だ。
親友に対してあの瞬間、そんな事しか考えていなかった。
そしてそんな俺に対し、渚は自分の隣をポンポンと叩きながら言う。
「とにかく立ち話も何だし座りなよ。まだ電車来るまで時間あるし」
「そうするよ」
そう言って渚の隣に腰掛ける。
渚の隣に。
……こんな事でも意識してしまう辺り、男女の友情という奴は成立しないのかもしれない。
これまで固く成立していた筈なのにな。
そんな楓のアドバイスに頷きはしたが、あくまで振り返らないのは詮索しても既に終わった事でしかない秋瀬家のルールについてだけだ。
渚の、渚とのこれからを自分なりに考える為には、やはり渚とのこれまでの事くらいはちゃんと掘り返しておいた方が良いだろう。
その過去が有って俺達の今がある訳だから。
改めて渚と向き合っていくにはそれが必要だ。
そう考えながら駅までの道程を移動していた訳だが、やはり思い返される思い出の一つ一つが既に原型を留めていない。
当然と言えば当然だ。
「……当たり前だけど、ずっと女だったんだよな」
同性の親友との過去が、実は異性だった親友との思い出となる訳で。
そこに対する見え方が今までの全く同じかと言われたら、そんな風にはできない。
「俺、ずっと女の子と一緒に居たって事なんだよな……」
……そこにこれまでとは違う、実はそうだったという後付けのような華やかさが加わってしまう。
「……良くねえな、これは」
正確に言えばそれを良いと思ってしまう自分の姿勢が良くない。
「良くねえよこれ……」
呟きながら、視線を右手の掌へと落とす。
さっきの感覚が、まだ手に残っている。
……言い訳のできない高揚感と一緒に。
「……渚に会う前に落ち着けよ、俺」
自分に言い聞かせる。
「どうであれ……渚は渚なんだから」
何故これまで女だと気付けなかったのかなんて疑問は一旦置いておくとして、あくまで気付けなかっただけで昨日以前と今日で別人に変わってしまった訳じゃない。
渚は渚なのだ。
秋瀬渚。
幼馴染で俺の親友。
それは変わらない。
変わらない筈なのに、女だって分かった途端にこれまでの過去を含めてそういう対象として認識してしまうのは。
そんな都合の良い掌返しは。
あまりにも人付き合いの在り方として不誠実なように思えた。
高校生活の目標に可愛い彼女を作る事を掲げていた奴が言える話ではないのかもしれないけれど。
否、寧ろそういう事を馬鹿みたいに掲げていたからこそ。
その辺は意識して考えておかなければならないのかもしれない。
そんな事を考えている内に最寄り駅に着いた。
然程広い駅でも無ければ行き先も一緒なので、渚を見付けるのは簡単だった。
「お、やっと来たね。遅かったじゃん」
ベンチに座る渚はこちらに気付いてそう声を掛けてくる。
「そりゃ困惑して固まるってあんなの……お前、絶対他の知り合いとああいう話になっても同じ事するなよ」
「する訳ないじゃん……いや、ほんと勢い余ってやっちゃったって感じだったから……やるとしても明人にしかやらないし」
「いや俺にもやるなよ俺にも」
「……こうやって最後にボソっと小声で喋る奴は聞こえないのが相場じゃないかな」
「そんな漫画みてえな事、そう何種類も一辺に起きるかよ。聞こえるって普通に」
言いながら、なんとかそれらしい事を言いながら……自然と視線が渚の胸元に落ちる。
俺になら良いのか?
そんな考えが、脳内を駆け巡る。
こういうのが良くないと、分かっているのに。
そして渚は少し顔を赤らめて言う。
「しっかし実際どうなのかなって思ってたんだけど……分かるもんだね、そういう視線って」
完全に何を見ていたのかがバレている。
「わ、悪い」
「いいよ謝んなくて。触らせた後なんだから今更でしょ。というか明人的には今までどうやって隠してたんだーとか疑問に思う事も有るだろうから。見るなっていう方が無理があるよ。知的好奇心って奴」
「……まあ、それもあるな」
嘘だ。
今見ていた理由に、そんなもっともらしい理由はない。
有ったのはただの欲だ。
親友に対してあの瞬間、そんな事しか考えていなかった。
そしてそんな俺に対し、渚は自分の隣をポンポンと叩きながら言う。
「とにかく立ち話も何だし座りなよ。まだ電車来るまで時間あるし」
「そうするよ」
そう言って渚の隣に腰掛ける。
渚の隣に。
……こんな事でも意識してしまう辺り、男女の友情という奴は成立しないのかもしれない。
これまで固く成立していた筈なのにな。
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