仲の良い幼馴染の兄弟が姉妹だった話

山外大河

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一章 男だと思っていた親友が女の子だった話

8 知っている事、知らない事 下

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 ……確信を持って言える事として、友人として悪くは思われていないのは間違いないだろう。
 そこは卑下せずそうだと思いたい。

 例えこれまでの言動に自分の意思を偽ったものが多く混ざっていたとしても、それでも親友と呼べる程に良好に築き上げた関係性は本物だと思う。
 でなければきっと今朝からの一連の出来事は起きなかっただろうから。
 親友と呼び合えるような間柄で、信頼してくれているからこその事だ。

 とはいえこれがそれ以上の何か……いや、それ以外の何かの場合として考えた時の答えはまるで分からない。
 友情とは違う形で異性を見る目について。
 ……良くない事だとは思いながらも、この短い時間を一緒に過ごせば過ごす程、言い訳できない程に俺は友情とは違う形で、渚の事を異性として意識している事を実感する。
 この距離間で接してくる女の子について、時間が経てば経つ程そういう思いは増していく。

 多分これから先もどんどんそうなると思う。
 長年ずっとこの距離間だった筈なのに、今更。

 だけど……逆はどうだろうか。
 渚からすれば昨日も今日も、俺の見え方は変わらない。 
 秋瀬渚にとっての楠明人は、たった一日で激変したりはしない。

 ……だとすれば向けてくれている感情も、良くも悪くも変わらない筈だ。
 つまり元々どういう眼で自分を見ていたのかが、今の渚から向けられている感情に直結する。

 渚はこれまで俺の事を異性の親友として見てくれていたのか。
 それとも親友と呼べるだけのこの距離感は、所謂恋愛感情を向けていてくれたからなのか。
 もしくはそのどちらもなのか。

 ……多分、後ろ二つは俺の自意識過剰だと思う。
 今日の事で確信したがやっぱり俺は単純な人間な訳だ。
 これまでだって少し女子と会話が弾むような事があればこう思ってきた訳だ。
 もしかして俺に気が有るんじゃないかと。
 だけどそれで俺が無謀な行動を起こす前に、中学時代の渚が止めてくれた。

「俺結構人から恋愛相談みたいなの受けるから分かるけどさ、早まらない方が良いよ明人。こういうのは女子と話すのに慣れてない男子が変に意識してるだけで、女の子側はただクラスメイトだからとか友達だからって認識で話してるだけのパターンが多いよ」

「……そんなもんか?」

「そんなもんだよ。端から見てた感じだと今回のは特にそれだね。だから妙な事する前に止めてるんだけど。危なかったね変に告ったりしてたらこの先気まずかったよ」

「あ、危ねぇ……流石モテる奴は違うな」

「違うでしょ」

「そのドヤ顔腹立つわぁ……」

 そして、そんな渚のアドバイスが此処にも当てはまる。
 俺が女子からこの距離感で接して貰って変に意識しているだけで、渚からすればただ親友としての距離感で接しているだけだと。 
 つまり俺がただ自意識過剰になってしまっているだけだと。
 その可能性が大きく当てはまる。
 ……だから早まった真似はするな。

「明人の都合が良かったら、今日帰りにお弁当の食材の買い出し行かない? 聞いちゃうよリクエスト。ああ、後ついでにどっか遊びに行こうよ」

「いいぜ、暇だし付き合うよ」

 渚が異性として俺の事を好きかもしれない、なんて考えるのはあまりに軽率だ。
 事情が変わっても。もう男として男の輪の中に入っていく必要が無くなったとしても、今まで通り親友としての距離感を保ってくれているだけの可能性が高いのだ。
 ただ男女の友情を成立させてくれているだけの可能性が高いのだ。

 ……きっとそうだろう。

 ありがとう、中学時代の渚。
 おかげで俺は軽率な行動で、親友との仲を拗らせずに済んだ。
 親友だって思うような相手な訳だからさ。
 悪い方向に関係が拗れるのだけは絶対に嫌な訳だし。
 親友なんて呼べる相手とこの先の人生で出会えるかどうかなんて分からないのだから。
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