仲の良い幼馴染の兄弟が姉妹だった話

山外大河

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一章 男だと思っていた親友が女の子だった話

9 これからの一歩一歩の為にやるべき事について

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「しかし都合が良かったらって言うけど、お前の方の都合は大丈夫そうなのかよ」

 図らずとも割と自然な流れで本題に戻る事にする。

「というと?」

「いくら進学して環境が変わるとはいえ、中学の連中で進学先同じ奴何人もいるだろ。それこそマコっちゃんとか橋本とか。なんならお前の事を知ってる先輩だっている。何事も無く帰れるか?」

「まあどうだろうね。極力自然に受け入れて貰いたいけど」

 渚の反応を見る限り、やはり俺以外には自分の秘密を明かしていないようだ。
 今日解禁されて、最初に顔を合わせた知人が俺という事になるのだろう。
 渚に対して比較的理解のあるつもりでいる俺ですらこの有り様なのだから、他の人の前に姿を現すという事は普通に大事件だ。
 だからこの辺は知っておかなければならない。

「何か考えとかあったりすんのか?」

 想定される面倒な事にどう対処するつもりなのか。
 この先の事を一体どういう風に渚自身が捉えているのか。
 それを知っておかなければならない。
 渚の事をいざという時フォローしてやる為にも。

 ……そう考えると真っ先に聞いたのが胸の隠し方ってのは、普通にごめんって感じだ。
 マジでごめんって感じ。

 その位には、大切な話。
 そして渚は俺の問いに笑って答える。

「いやー無い無い。有るわけないじゃんそんなの。なるようになるしかないよ。当たって砕けろって感じで」

「いやいや砕けちゃまずいだろ。つーか無いってお前……なんかあるだろ。こう、今までの人達のノウハウとかさ」

 確かに俺が受けたような衝撃を他の人には与えない、なんて分かりやすい問題の回避方法は思い付かないけれど。
 それこそ秋瀬家でそういうルールが敷かれているのだとすれば、これまでの人達もそういうレールの上を歩いてきた筈だ。
 だとしたらノウハウが蓄積していてもおかしくないと思う。
 そう思いはしたが、渚は小さく首を振って言う。

「ウチの家系さ、長い間女の子が生まれてこなかったみたいなんだよね。何代も何代も」

「……」

「そしたら最後に女の子が生まれてたのってずうううううっと昔の話だったよ。流石に無理じゃない? 100年、200年前のご先祖様が残してくれたノウハウを令和の現代人が使うの。申し訳ないけどさ」

「……確かにそれなら無理がある」

 昭和平成の時代を生きた人達ならともかく、そこまで離れると何もかもが違っているのは明白で。
 だからこそ今の時代を生きる渚独自のやり方を見付けて行かなければならない。

「ちなみにお前が男装してた時に使ってたっていう魔法みたいな力でどうにかできないの?」

「無理無理、そんなの出来たら今頃私異能バトル物の住民だって。私なんて精々ラブコメとかの住民だよ。丁度良い感じに良くも悪くも変な属性持ってる訳だしさ」

「まあとんでもねえ個性持ちだよお前」

「ヒロインとしてそれっぽいでしょ」

「それっぽいそれっぽい」

 それっぽいし、ヒロインとしては最強だ。
 色々と渚の場合、本当に最強だって思うんだよな、俺としては。
 俺がその隣に立てるかも、なんてのはそれこそモテない男子特有の勘違いなのだろうけど。
 隣に立つかもしれない奴が羨ましいよほんと。

 ……そう、勘違いだから目を覚ませ。

 俺は一体いつまで親友の事をそういう眼で見続けるつもりだよ。
 余計な事を考えず、ちゃんと親友としてコイツの事を考えてやれ。

「まあその個性の所為で大変な高校生活のスタートな訳だけども。さて、どうしたもんか……」

「どうしたら良いか考えてくれるんだ。流石だね」

「あんまり時間無いけど、やれるだけの事はやっておいた方が良いからな。お前のピンチだ。待ってろ、なんかいい案出すから」

 頭を捻る。
 頭を捻る。
 頭を捻る。

 ……が、そう簡単に答えは出て来ない。
 きっとこれまでずっと考えてきたであろう渚や秋瀬家の皆さんが思い付いていないのだから、こんな事情を知ったばかりの奴が急ピッチで案を考えられる訳が無いと言われればそれはそう。

「出ないでしょ」

「出すから」

「流石に無理ゲーなんだってこれは。受け入れて前に進んで行くしかない」

 そう言った渚は複雑な表情を浮かべて言う。

「高校入学の初日なんて丁度良いタイミングだっただけマシな訳だからさ。私の場合考えられる限り一番イージーモードだよ」

「……まあ、それはそうだけど」

 例えばそれ以外のタイミングだった場合、既に男としてコミュニティに参加していた中、突然性別が変わるみたいな事になる訳で。
 そういう意味では比較的イージーモードだ。
 だから良いという訳ではないと思う訳だけど。

「明人」

「……?」

「その辺の事は無理に考えなくて良いよ。ずっと考えてきた事だから、覚悟みたいなのは決まっている」

「渚……」

「なんなら学生時代の友人と縁が切れるまで男装し続けるって選択肢もあった中で、ちゃんと自分を出す選択をしたんだから。それで生じる面倒事には真正面からぶつかるよ」

 だけど、と渚は言う。

「でも多分愚痴とか、そういうのは一杯零したくなると思う。ごめんだけどさ、それ聞いてくれたら嬉しいかな。楽しくは無いと思うけど」
「それは別に良い。好きなだけ聞いてやるよ」

 言われなくても、それはそのつもりだ。

「深夜の二時とか三時に突然電話しても?」

「それは遠慮しろよ馬鹿……まあどうして持っていうなら聞くけど」

「流石に冗談だよ。愚痴を言う私の愚痴を誰かに愚痴られたら嫌だからね」

「しねえって。俺を誰だと思ってんだ」

「それは失礼しました」

 笑みを浮かべてそう言う渚を見て思う。
 ちゃんと考えよう。
 親友の新しい門出が少しでも良い物であるように。
 誕生日の今日一日が少しでも良い日であるように。

 ……秋瀬渚の親友として。やれる事をやるんだ。
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