クラス転移で俺だけ勇者じゃないのだが!?~召喚した配下で国を建国~

かめ

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第一章〜エルガレフト神国〜

閑話 リアン

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「ハァ……ハァハァ……」

 私は今森の中を1人で必死に走っている。込み上げてくる涙を拭いながら。

  ねぇ……なんでこんなのことになっているの??
 私の幸せな毎日はどこに行ったの?
 誰よりも私を愛してくれたお父様とお母様はどこにいるの?

 ねぇ!誰か教えてよ!なんでこんな目に合わないと行けないの………。

 ああ、自分でも分かってるなんでこんな目に合っているかって……自分はこの状況を呑み込めないだけ。

 あの日、あの時から私の人生は狂った時計のように変わってしまった。
 私の父はそれなりに大きな貴族で町を治めていた。

 貴族だから裕福な家庭で大した苦労もせず、自分の好きなことをやって暮らすことが出来た。魔術や薬草などの本を見るのが好きで、屋敷にいる執事のジェームズや、護衛のガイゼルに聞いてたりしたっけ……。

 そんな幸せだった日々もあの日、突然終わりを告げられた。
 そう、父をよく思わない他の貴族が父を陥れたのだ。
 先の戦争で父は指揮官の1人として従事していた。そこで他の貴族が意図的に軍の情報を、相手に流していた。
 それにより父の指揮していた軍は大打撃を受け、それが原因で父が治めている町でクーデターが起きた。
 現在はクーデターの首謀者がそこを治める貴族となって収まっている。上辺だけ見ると、自分でミスをした貴族の失脚しただけだが、裏では色々画策されて起こった結果だ。
 首謀者が貴族となり丸く収まっていることからも事前に手回しされていたことが分かるだろう。

 私達は、なんとか命からがら町から逃げ出し、生き延びることが出来た。
 そうは言っても付き人が6人と、母上と小さい弟しかいない。
 これからどうしようかと、路頭に迷っていた。
 それでもこの国からは出ないと命を狙われる可能性があるのでエルガレフト神国でひとまず息を潜めることにしようと言うことになった。

 付き人はみんな10年以上私の家に仕えていて、ただの単なる主人と使用人という関係ではないくらい信頼出来る人達ばっかだった。
 誰もが大切な人を無くすことはとても辛いことだと思う。 
 私達の家に仕えていたその中の1人が目の前でクマに頭を食いちぎられる様子は何にも変え難い恐怖で私の心を染めた。
 しかも、目の前でだ。私を庇った彼は腹がさけ、臓物と血が滴っていた。

「お嬢様! 逃げて下さい!!」

 ああ、今も私の目の前で勇敢なる私達の護衛が戦っている。
 もうこの世の終わりのような現実を突き付けられ、私は絶望した。

「ハァハァ……ハァ」

 それから私は必死に走った。
 後ろを振り返らずに必死に走った。

 そして……。
 気づいたら周りには、誰も居なくてただ1人、私だけが闇に染まった森に佇んでいた。
それでも、私を助けてくれた人の命は無駄にすまいと、残り僅かな食料で空腹を紛らわし、なにも考えず無心で走った。
 今、私が走っている方向にエルガレフト神国があるのかも分からない。
 もう何も考えれなかった。
 世界から色が抜けて、もうなにもかもを投げ出したくなった。

「ガァァァァ!」

 もうお終いだろう。私の目の前にはジャイアントベアがいる。必死に逃げたのだが木に足を引っ掛けて私は転んでしまった。
 もうダメだ……。
 なんでこんな目に合わないと行けないの? どうしてこうなったの? 私は絶望とともに、この世界に問いかけた。

 もう私は死ぬんだろう……そう思っていた時。

「ズシャ…」

 目の前には剣を持った女の子が立っていた。私を襲おうとしていたジャイアントベアの手からは血が吹きでて、地面にはジャイアントベアの手であろうものが落ちていた。私は……助かったのだろうか……?

「もう大丈夫だぞ」

 ああ、久しぶりに人の声を聞いた気がする。私と同じ年ぐらいの男の子が声をかけてくれた。安心する。

「……ありが……とう」

 私は通りすがりの彼らに助けられ、そのまま私は彼に背負われ、冒険者ギルドで治療を受け、ここまで回復ことができた。

 もう、あれから2日……。彼らはちょっと色々と規格外だけれど、良い人達だ。これも運命の出会いなのかしら。彼の笑顔を見る度にこう……心がこそばゆくなる。この気持ちがなにかは分からないが、前向きに生きようと思えるようになってきた。このままではなにも変わらない。変わらなければ、未来はない。そう自分にいい聞かせた。

 どうやら彼らはこの国を出てフューズ王国に行くようだ。私もついて行こうと思う……。今の私には頼れる物も人もない。それに彼らといると楽しいと思えるし、色々なことに驚かされる。

 これから先、どう転ぶか分からない人生ではあるけれど、必死に、精一杯この世界を生き抜いてやろうと思った。もうあんな思いをするのは嫌だ。

 まず、私はその第1歩を踏み出そうと決意した。
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