ヒロインに転生したけど、親友が大事なので王子は諦めます! + 悪役令嬢に転生したようですが、親友の恋を応援します

木村 真理

文字の大きさ
24 / 29

わたくしの親友が素敵ですが、心臓バクバクしています-1(ロゼッタ)

しおりを挟む
「危ない……っ」

 頭上から射られた漆黒の矢。
それは、クレイン王子とリィリィのほうへまっすぐに飛んできた。

 ロゼッタは息を飲んで、ただそれを見ていることしかできなかった。

 とっさに動けたのは、クレイン王子だけだった。
王子は矢の音に反応して上を見上げ、自分たちに向かって矢が落ちていることに気づいた。
瞬間、隣に立っていたリィリィを抱きしめて、自らのからだでリィリィを矢から守ろうとする。

「おうじ……っ」

 リィリィは、矢が飛んできていることにも気づいていなかった。
とつぜん抱きしめられたことに驚いて、王子を呼ぼうとする。
 けれどリィリィの頬をかすめるように、矢が飛んできて、王子の足元に刺さった。

「きゃぁあああああああああああああああああああっ」

 自分の足元すぐに刺さった矢を見て、リィリィの口から悲鳴があがる。
その声につられてリィリィへ目を向けた人々も、矢を見て、つぎつぎに悲鳴をあげた。

「落ち着いて……、落ち着いてください……!」

 この国は平和で、王宮のパーティでこんな事件が起こったことは、長い間なかった。
パーティで警備の兵たちがすることといえば、酔っ払い同士のけんかの仲裁や、女性にしつこく絡む男性をいなしたりすることくらいだった。
 そのため、警備の兵たちは、出入り口と壁際に配置されているのみだ。
彼らはリィリィの悲鳴と足元の矢を見て、なにが起こったのか察し、王子を守るために動こうとした。
だが騒然となる人々に詰め寄られて、王子たちのほうへ近づけないようだった。

 ロゼッタは、王子たちに射られた矢が、誰にも当たらなかったことも見えていた。
ひとまず安堵したが、次の攻撃の可能性は高い。
射手を捕らえない限り、安心はできない。
 ロゼッタは、矢が飛んできたほうへ視線を動かした。

 そこには、誰もいなかった。
クリスタルのようなガラスの天井が輝いているばかりだ。

「射手は、どこ……っ」

 矢が飛んできたのだ。
射者がいないはずがない。

 矢が放たれてからロゼッタが天井に目をうつすまでの数秒で、逃げた?
けれどこのホールの天井は、中心が吹き抜けの半円のガラスでおおわれている。
 今宵の月は、明るい。
あのガラス部分に射手がいれば、かなり目立つ。
数秒で逃げられたとは思えない。

 射手は、あのあたりにいるはずだ。
前世では、ときおり矢をうちこまれることもあった。
とっさにどこから飛んできたのか判断できるように、教師には徹底的にその判断を教え込まれた。
それは前世のロゼッタの命を何度も救ってくれた技術だった。
判断を誤ったとは思えない。

 ロゼッタは目を凝らし、射手を探した。

(ぜったいに、あそこにいるはずだ。逃がさない……!)

 窓の外の暗闇、月、星。
そしてきらめくシャンデリアに照らされたガラスの天井。
ロゼッタは、美しいガラスの天井を、よごれひとつ見逃さないように、すばやく、ていねいに探す。

(見えた……!)

 夜の闇に潜んで、天井の窓ガラスに張り付いている男がいた。
小柄で細身の体を、ガラス天井を支える支柱と同じ色の服で覆っていたので、見落としかけたのだ。
だが、いるとわかって見て見れば、男の存在は明らかだった。

 ロゼッタは、警備兵に男の居場所を知らせよう口を開いた。
 けれどその時ちょうど、月にかかっていた叢雲が途切れた。
明るい月明かりが、はっきりと男の姿をうかびあがらせる。
その男は、まさに次の射を放とうしていた。

「伏せて……っ」

 ロゼッタが叫ぶのと、男が第二の矢を射かけるのは同時だった。
ロゼッタは声を上げたが、パーティの会場は悲鳴が飛び交っていて、その声はかき消された。
 けれど唯一、ロゼッタの悲鳴を聞き逃さない少女がいた。
 
 聞きなれた、大切な親友の声でなされた「伏せて」という指示。
リィリィはとっさに自分をかばう王子の腕を振り払い、突き飛ばした。

 そして自分の身を投げだし、王子の上に覆いかぶさった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

薔薇の令嬢はやっぱり婚約破棄したい!

蔵崎とら
恋愛
本編完結済み、現在番外編更新中です。 家庭環境の都合で根暗のコミュ障に育ちましたし私に悪役令嬢は無理無理の無理です勘弁してください婚約破棄ならご自由にどうぞ私ちゃんと手に職あるんで大丈夫ですから……! ふとした瞬間に前世を思い出し、己が悪役令嬢に転生していることに気が付いたクレアだったが、時すでに遅し。 己の性格上悪役令嬢のような立ち回りは不可能なので、悪足掻きはせず捨てられる未来を受け入れることにした。 なぜなら今度こそ好きなことをして穏やかに生きていきたいから。 三度の飯より薔薇の品種改良が大好きな令嬢は、無事穏便な婚約破棄が出来るのか――?

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

処理中です...