ヒロインに転生したけど、親友が大事なので王子は諦めます! + 悪役令嬢に転生したようですが、親友の恋を応援します

木村 真理

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わたくしの親友が素敵ですが、心臓バクバクしています-1(ロゼッタ)

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「危ない……っ」

 頭上から射られた漆黒の矢。
それは、クレイン王子とリィリィのほうへまっすぐに飛んできた。

 ロゼッタは息を飲んで、ただそれを見ていることしかできなかった。

 とっさに動けたのは、クレイン王子だけだった。
王子は矢の音に反応して上を見上げ、自分たちに向かって矢が落ちていることに気づいた。
瞬間、隣に立っていたリィリィを抱きしめて、自らのからだでリィリィを矢から守ろうとする。

「おうじ……っ」

 リィリィは、矢が飛んできていることにも気づいていなかった。
とつぜん抱きしめられたことに驚いて、王子を呼ぼうとする。
 けれどリィリィの頬をかすめるように、矢が飛んできて、王子の足元に刺さった。

「きゃぁあああああああああああああああああああっ」

 自分の足元すぐに刺さった矢を見て、リィリィの口から悲鳴があがる。
その声につられてリィリィへ目を向けた人々も、矢を見て、つぎつぎに悲鳴をあげた。

「落ち着いて……、落ち着いてください……!」

 この国は平和で、王宮のパーティでこんな事件が起こったことは、長い間なかった。
パーティで警備の兵たちがすることといえば、酔っ払い同士のけんかの仲裁や、女性にしつこく絡む男性をいなしたりすることくらいだった。
 そのため、警備の兵たちは、出入り口と壁際に配置されているのみだ。
彼らはリィリィの悲鳴と足元の矢を見て、なにが起こったのか察し、王子を守るために動こうとした。
だが騒然となる人々に詰め寄られて、王子たちのほうへ近づけないようだった。

 ロゼッタは、王子たちに射られた矢が、誰にも当たらなかったことも見えていた。
ひとまず安堵したが、次の攻撃の可能性は高い。
射手を捕らえない限り、安心はできない。
 ロゼッタは、矢が飛んできたほうへ視線を動かした。

 そこには、誰もいなかった。
クリスタルのようなガラスの天井が輝いているばかりだ。

「射手は、どこ……っ」

 矢が飛んできたのだ。
射者がいないはずがない。

 矢が放たれてからロゼッタが天井に目をうつすまでの数秒で、逃げた?
けれどこのホールの天井は、中心が吹き抜けの半円のガラスでおおわれている。
 今宵の月は、明るい。
あのガラス部分に射手がいれば、かなり目立つ。
数秒で逃げられたとは思えない。

 射手は、あのあたりにいるはずだ。
前世では、ときおり矢をうちこまれることもあった。
とっさにどこから飛んできたのか判断できるように、教師には徹底的にその判断を教え込まれた。
それは前世のロゼッタの命を何度も救ってくれた技術だった。
判断を誤ったとは思えない。

 ロゼッタは目を凝らし、射手を探した。

(ぜったいに、あそこにいるはずだ。逃がさない……!)

 窓の外の暗闇、月、星。
そしてきらめくシャンデリアに照らされたガラスの天井。
ロゼッタは、美しいガラスの天井を、よごれひとつ見逃さないように、すばやく、ていねいに探す。

(見えた……!)

 夜の闇に潜んで、天井の窓ガラスに張り付いている男がいた。
小柄で細身の体を、ガラス天井を支える支柱と同じ色の服で覆っていたので、見落としかけたのだ。
だが、いるとわかって見て見れば、男の存在は明らかだった。

 ロゼッタは、警備兵に男の居場所を知らせよう口を開いた。
 けれどその時ちょうど、月にかかっていた叢雲が途切れた。
明るい月明かりが、はっきりと男の姿をうかびあがらせる。
その男は、まさに次の射を放とうしていた。

「伏せて……っ」

 ロゼッタが叫ぶのと、男が第二の矢を射かけるのは同時だった。
ロゼッタは声を上げたが、パーティの会場は悲鳴が飛び交っていて、その声はかき消された。
 けれど唯一、ロゼッタの悲鳴を聞き逃さない少女がいた。
 
 聞きなれた、大切な親友の声でなされた「伏せて」という指示。
リィリィはとっさに自分をかばう王子の腕を振り払い、突き飛ばした。

 そして自分の身を投げだし、王子の上に覆いかぶさった。
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