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6話
しおりを挟むだから一沙は神木の手を握り返し、「よろしくお願いします」と告げる。その瞬間神木に抱き締められた。あまりの力強さに少し苦しくなる。そして彼は良い匂いがした。香水か、それとも洗剤か判断が付かない。彼の匂いそのものなのか。
元彼にも前の彼氏にもこんなことを思ったことはないのに。無意識にすーっと顔を押し付けられたシャツの上から匂いを嗅いでしまう。多分神木には気づかれていない。
「…ちょっと苦しい」
「…すみません、嬉しくて」
力を緩めてくれたが、解放してくれる気はないらしい。本人は一沙の肩にグリグリと頭を押し付けている。大型犬が戯れているみたいだ、とぼんやりと思った。
「大事にします、早くあなたに好きになってもらえるよう努力しますね」
「は、はい」
「下の名前で呼んでも良いですか、一沙と」
「良いですよ」
付き合ってるのだから名前くらい許可を得ずとも読んで構わないのだが、神木は律儀だ。
「俺のことも宗一郎と、あとキスしても良いですか」
「良いで…キス?…んぅ!」
神木の腕から解放されたと思ったら、唇を奪われてきた。キスされると同時にまたも抱きしめられている。が、さっきより苦しくないので手加減はしてくれてるようだ。
「んっ…ぅ…あ…」
触れるだけのキスのわけがなく、直ぐに彼の舌が口腔内に入り込む。引っ込む一沙の舌を捉え、絡ませて吸ってくる。自分が飲んでいたものと同じワインの味がして、クラクラと酔ったような感覚に陥った。散々飲んでも酔ったとは言い難かったのに、キスだけで酩酊状態である。
良いと言ったのは神木を名前で呼ぶことに関してでキスに関しては承諾したつもりはなかったのだが、もう遅い。後頭部を押さえられ、逃れることも出来ないまま口の中を蹂躙され力が抜けていく。背中に回っていた片方の手がすーっと背骨をなぞると、ゾクゾクとした感覚が生まれお腹の奥が疼く。途轍もなくいやらしいことをされている気分になってしまう。戸惑う一沙は容赦なく口の中を犯す神木に翻弄され、必死にしがみつく。
そのまま下がっていく手が一沙の尻に到達し、今度こそいやらしい手つきで尻を撫でる。ピクっと肩が跳ねるが神木は辞めない。少し大きいことがコンプレックスな尻を容赦なく揉みしだき、唾液が混ざり合う音と共に喘ぎながら一沙は身悶える。尻を揉まれて気持ちいいと感じている自分が信じられない。
尻を撫で回していた神木の指が割れ目にグッと食い込む。
「あっ…」
明確な快感に思わず唇を解いてしまった一沙は、やっと神木と視線を合わせた。彼は欲情しきった雄の目で一沙を捉えながら、食い込ませた指でグリグリと秘所を刺激する。目元が薄らと赤く、息も荒い。興奮しているのは明らかだ。
(気持ち、良い…)
スカートと下着越しで分かるくらい硬くなった快楽の蕾を指で押しつぶされると鋭い快楽が身体を駆け抜けた。一沙は熱い吐息を溢しながら神木の首に手を回し甘い声で鳴いている。気のせいではなくクチ、という水音が聞こえてきて一気に顔に熱が集まる。キスと触られただけでこんなことになるなんて。
(元彼には、濡れづらいって文句言われてたのに…)
相手が上手いのか一沙が…神木に抱かれたいと望んでいるからか。
布越しではもどかしい、直接触って欲しい。が、強請ったことのない一沙には酔っていてもハードルが高い。そんな一沙の気持ちを察したのかずっと黙っていた神木が口を開く。
「一沙…抱きたい…抱かせて?」
名前呼び、そして敬語じゃない。一沙の胸がキュンとした。単純である。そして彼は徐に一沙を抱きしめるとゴリ、と昂ったものを押し付けてきた。スラックス越しでも分かる熱さと硬さ。それだけで一沙の身体も更に熱を持ち始める。神木も興奮してくれているようで、嬉しい。
「勿論、嫌なら無理強いはしないから…」
こんな時でも一沙の意思を尊重してくれている神木。一沙は熱に浮かされた頭で悩んだ。
(気持ちが定まってないしそもそも付き合って直ぐなんて早すぎる、けど…)
返事は直ぐに決まった。一沙は目を潤ませながら唇を押し付けた後、こう答えた。
「抱いてください…嫌なこと全部忘れたい…」
元彼も妹も、何もかも忘れさせて欲しいと訴える。神木はゴクリ、と喉を鳴らすと一沙を横抱きにしてリビングから続くドアへと向かった。
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