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選別と和合
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トゥルースの提示した三つの選択肢を、療養所で働く苦役刑囚達は時間を掛けながらも選び終えた。日々訪うトゥルースにあれやこれやと相談するうちに、苦役刑囚達の表情はそれまでのどこか甘えたような顔付きから、思慮深さを増した物に変わっていった。
「俺の身の上をここまで心配してくれたのは、旦那が初めてだよ」
と、やや大袈裟な感涙に咽ぶ苦役刑囚の言葉通り、彼等はトゥルースに強い親愛と感謝の念を抱いているようだ。周囲から粗雑に扱われることに慣れていた苦役刑囚達は、自身より上位の立場であるトゥルースから尊重されることで、今後の人生について真剣に向き合う心持ちを持つことができたのかもしれない。
「いくら金で雇われたからって、あんたを殺そうとしたなんて……俺ぁ、大馬鹿だぜ」
また、トゥルースへの親愛の情と比例するように襲撃への罪悪感が日に日に募ることも、彼等の意識を変えたようだ。これまでは巡った土地で罰金や鞭打ちなどの刑を受けても、下手を打ったという意識しかなかった彼等に自身が犯した罪を悔いさせたのは、トゥルースを殺めることに成功していれば、現在の処遇は受けられなかったという独善的な理由だ。
しかし、これらのトゥルースから与えられた外的要因と自らの意思で人生を選択し直すという機会は、彼等の意識を大きく改変させた。
「俺は生まれ変わったつもりで旦那の役に立つぜ。見ててくれよな」
そうトゥルースへ告げてきた苦役刑囚は、農夫となることを選択した者だ。安定した第二の人生を望んだ者のみならず、トゥルースへの親を慕う子にも似た帰属意識を持つ者も、ここバハルクーヴ島の民として生きることを選んだらしい。当初の予想を超えて、半数近くの苦役刑囚が農場での労働を望んだことは、トゥルースとしても嬉しい誤算であった。
(……人たらし)
苦役刑囚達に囲まれたトゥルースの後ろ頭に、カメリオは心の中で憎まれ口を叩く。自身の命を狙った者達をすっかりと信奉者に作り替え、グラートの望むとおりに労働力を確保したトゥルースの手腕は感心すべきものだ。苦役刑囚達の肩に腕を回し、親しげに語るトゥルースの横顔に面白くなさを感じるのも、やきもちの類いであることは認めたくないながらもカメリオは自覚している。だが、面白くないものは面白くないのだ。
カメリオは、先日にトゥルースから預けられた懐中時計を見つめる。不機嫌が心を覆った彼にとっては幸いに、そろそろ療養所を離れる時間だ。
「番頭さん、時間です」
努めて冷静な声色を心掛けたカメリオだが、腹に据えた感情のためか少々上擦ってしまった声に、トゥルースは振り返って頷いた。
「そうだな。そろそろ行こうか」
不満たらたらの顔で名残惜しむ苦役刑囚達を宥め、トゥルースはカメリオと共に療養所を後にする。この仕事も、いよいよ大詰めだ。
(俺……かっこわるいや)
トゥルースに付き従い歩みを進めるカメリオは、歩むにつれ段々と頬が熱くなるのを自覚していた。何かにつけてカメリオをからかってはくるものの、トゥルースが仕事に真剣なのはカメリオも彼に付き従う中で理解している。子供じみたやきもちを仕事に持ち込んだ自分が、カメリオは恥ずかしかったのだ。
何か言うべきか、カメリオが迷っているところで、トゥルースは不意にカメリオに訊ねた。
「マリウス、彼等は俺に惚れていると思うか?」
「…………多分、そうだと思います」
カメリオは、表情をすん、とさせてトゥルースの問い掛けに応えた。心の中で毒づいた気持ちが、再び胸によぎりそうになったのだ。そんなカメリオに、トゥルースはにこやかに言葉を継ぐ。
「ならば、惚れ続けてもらえるように力を尽くそう。彼等はこの島にとって、貴重な労働力だ」
「苦役刑囚たちに好かれたら、きつい仕事も任せやすいですもんね」
少し拗ねたような語尾で言い返すカメリオは、トゥルースが彼等を扱き使うつもりで親身になっていることを理解していた。懐柔、という概念はトゥルースが何時かの夜の講義で、カメリオに教えたものだ。自身も懐柔されているのかもしれない、とカメリオも頭の隅では思っている。
「ああ。それに――刑期で縛るだけでは、彼等は直ぐに元の生活を恋しがることだろうからな」
「農場で働くのを選んだ人たちがですか?」
「彼等が新たな環境に馴染むには、時を要することだろう。俺を慕う心が彼等を繋ぎ止めているうちに、共に働く者達と心を通わせることを願うばかりだな」
元は傭兵であった苦役刑囚達が、現在生まれ変わったつもりで新たな環境に臨むことは嘘ではないだろう。だが、俄な情熱は氷菓子よりも足がはやいことをトゥルースは理解している。尽きた情熱を地続きの日常に換えるには、しがらみで雁字搦めにするのが最も有効だ。
「人を働かせるために好きの気持ちを利用するって、ずるいと思います」
だが、カメリオにはトゥルースの遣り方は、苦役刑囚達の感情を弄んだ遣り方に思われた。トゥルースにとって、好意は相手を思うがままに操縦する手段なのだろうか。そう思えば、カメリオの胸の奥に苦い感情が拡がった。
「惚れた相手に尽くすことこそが、人の喜びさ。現に俺の心は、君が居る島の忠実なる僕だからな」
「すぐ、そんな風に誤魔化すの……嫌いです」
「誤魔化してなどいないさ。俺は、君とこの島の為ならどんな手段も厭わない」
カメリオのどこか悲しげな表情に思わず熱が入ってしまったが、トゥルースの言葉は心の底から発したものだ。この島の責任者として、一人の島民に肩入れするのは褒められた行動ではないだろう。だが、躍動する気高い魂と優しく純粋な心の持ち主であるカメリオは、トゥルースにとってこの島そのもののような存在だ。
「本気で言ってるの……ですか?」
「ああ。俺の心臓を賭けたって構わないよ」
トゥルースの眼差しは、嘘をついているようにはカメリオには思えなかった。それを実感したからか、カメリオには自身の鼓動がやけに大きく聞こえている。だが、カメリオは自身の鼓動が大きく聞こえる理由も、頬がやけに熱く感じる理由も認めたくなかった。
「……それなら、急いで農場に向かいましょう。グラートさんも嬉しい知らせは早いほうがいいでしょうし」
「ああ……そうだな」
カメリオは今度こそは平静を装ったつもりだったが、トゥルースの妙にはにかんだような表情に、癪に障るような心地に包まれた。目の前の男から子供扱いされているような、内心の奥深くを見透かされているような、そんな心持ちになったのだ。
一方、トゥルースは自分の言葉に頬を染めて、それでいて気丈に振る舞うカメリオの様子に、胸をときめかせていた。ひょっとしたらカメリオは、自分と同じ気持ちを僅かにも心の中に抱いてくれているのではないだろうか。そんな確信めいた願望が、トゥルースの心を擽る。
足取りも軽く農場に向かい、入り口付近に居た農夫に言付けてグラートを呼び出せば、グラートが彼にしては珍しく小走りでトゥルース達を出迎えてくれた。彼は彼で、余程トゥルース達の訪いを待ち侘びていたらしい。
「立ち話もなんですから、あちらでお話を伺います」
と、グラートに案内された四阿には、休憩中の農夫や農婦の姿があった。農場に苦役刑囚を迎え入れる話は、もうグラートから通達されているのだろう。不安と期待が入り混じった顔でじっとこちらを見つめてくる彼等の様子には、トゥルースも人払いを頼む気が失せた。
「この名簿のうち、印が付いているのは皆、農場で働くことを志願してきた者達だ。確認してくれ」
「なんと……こんなに多くの者達が、自分から農場で働きたいと?」
「ああ。彼等は刑期を終えた後も、この島の民としてお前達と共に農場で働くことを希望している。受け入れてくれるか?」
トゥルースの言葉に、聞き耳を立てている農夫達もざわつく。元傭兵であった苦役刑囚達のことは、農場の仕事に無理解で怠惰な者達であるとの、経験則からの先入観があったのであろう。
グラートは戸惑ったように口をむずつかせて、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべた。
「えぇ、えぇ――もちろんですとも。貴方がこの島に来てくださって、本当に良かった……」
グラートの嬉しそうな声を受けて、農夫達のざわめきも喜びの色を帯びる。喜ぶグラートと農夫達の様子に、トゥルースもまた、胸に熱いものを感じた。
それはバハルクーヴ島民からトゥルースの商いが受けた、初めての賛辞であった。
「俺の身の上をここまで心配してくれたのは、旦那が初めてだよ」
と、やや大袈裟な感涙に咽ぶ苦役刑囚の言葉通り、彼等はトゥルースに強い親愛と感謝の念を抱いているようだ。周囲から粗雑に扱われることに慣れていた苦役刑囚達は、自身より上位の立場であるトゥルースから尊重されることで、今後の人生について真剣に向き合う心持ちを持つことができたのかもしれない。
「いくら金で雇われたからって、あんたを殺そうとしたなんて……俺ぁ、大馬鹿だぜ」
また、トゥルースへの親愛の情と比例するように襲撃への罪悪感が日に日に募ることも、彼等の意識を変えたようだ。これまでは巡った土地で罰金や鞭打ちなどの刑を受けても、下手を打ったという意識しかなかった彼等に自身が犯した罪を悔いさせたのは、トゥルースを殺めることに成功していれば、現在の処遇は受けられなかったという独善的な理由だ。
しかし、これらのトゥルースから与えられた外的要因と自らの意思で人生を選択し直すという機会は、彼等の意識を大きく改変させた。
「俺は生まれ変わったつもりで旦那の役に立つぜ。見ててくれよな」
そうトゥルースへ告げてきた苦役刑囚は、農夫となることを選択した者だ。安定した第二の人生を望んだ者のみならず、トゥルースへの親を慕う子にも似た帰属意識を持つ者も、ここバハルクーヴ島の民として生きることを選んだらしい。当初の予想を超えて、半数近くの苦役刑囚が農場での労働を望んだことは、トゥルースとしても嬉しい誤算であった。
(……人たらし)
苦役刑囚達に囲まれたトゥルースの後ろ頭に、カメリオは心の中で憎まれ口を叩く。自身の命を狙った者達をすっかりと信奉者に作り替え、グラートの望むとおりに労働力を確保したトゥルースの手腕は感心すべきものだ。苦役刑囚達の肩に腕を回し、親しげに語るトゥルースの横顔に面白くなさを感じるのも、やきもちの類いであることは認めたくないながらもカメリオは自覚している。だが、面白くないものは面白くないのだ。
カメリオは、先日にトゥルースから預けられた懐中時計を見つめる。不機嫌が心を覆った彼にとっては幸いに、そろそろ療養所を離れる時間だ。
「番頭さん、時間です」
努めて冷静な声色を心掛けたカメリオだが、腹に据えた感情のためか少々上擦ってしまった声に、トゥルースは振り返って頷いた。
「そうだな。そろそろ行こうか」
不満たらたらの顔で名残惜しむ苦役刑囚達を宥め、トゥルースはカメリオと共に療養所を後にする。この仕事も、いよいよ大詰めだ。
(俺……かっこわるいや)
トゥルースに付き従い歩みを進めるカメリオは、歩むにつれ段々と頬が熱くなるのを自覚していた。何かにつけてカメリオをからかってはくるものの、トゥルースが仕事に真剣なのはカメリオも彼に付き従う中で理解している。子供じみたやきもちを仕事に持ち込んだ自分が、カメリオは恥ずかしかったのだ。
何か言うべきか、カメリオが迷っているところで、トゥルースは不意にカメリオに訊ねた。
「マリウス、彼等は俺に惚れていると思うか?」
「…………多分、そうだと思います」
カメリオは、表情をすん、とさせてトゥルースの問い掛けに応えた。心の中で毒づいた気持ちが、再び胸によぎりそうになったのだ。そんなカメリオに、トゥルースはにこやかに言葉を継ぐ。
「ならば、惚れ続けてもらえるように力を尽くそう。彼等はこの島にとって、貴重な労働力だ」
「苦役刑囚たちに好かれたら、きつい仕事も任せやすいですもんね」
少し拗ねたような語尾で言い返すカメリオは、トゥルースが彼等を扱き使うつもりで親身になっていることを理解していた。懐柔、という概念はトゥルースが何時かの夜の講義で、カメリオに教えたものだ。自身も懐柔されているのかもしれない、とカメリオも頭の隅では思っている。
「ああ。それに――刑期で縛るだけでは、彼等は直ぐに元の生活を恋しがることだろうからな」
「農場で働くのを選んだ人たちがですか?」
「彼等が新たな環境に馴染むには、時を要することだろう。俺を慕う心が彼等を繋ぎ止めているうちに、共に働く者達と心を通わせることを願うばかりだな」
元は傭兵であった苦役刑囚達が、現在生まれ変わったつもりで新たな環境に臨むことは嘘ではないだろう。だが、俄な情熱は氷菓子よりも足がはやいことをトゥルースは理解している。尽きた情熱を地続きの日常に換えるには、しがらみで雁字搦めにするのが最も有効だ。
「人を働かせるために好きの気持ちを利用するって、ずるいと思います」
だが、カメリオにはトゥルースの遣り方は、苦役刑囚達の感情を弄んだ遣り方に思われた。トゥルースにとって、好意は相手を思うがままに操縦する手段なのだろうか。そう思えば、カメリオの胸の奥に苦い感情が拡がった。
「惚れた相手に尽くすことこそが、人の喜びさ。現に俺の心は、君が居る島の忠実なる僕だからな」
「すぐ、そんな風に誤魔化すの……嫌いです」
「誤魔化してなどいないさ。俺は、君とこの島の為ならどんな手段も厭わない」
カメリオのどこか悲しげな表情に思わず熱が入ってしまったが、トゥルースの言葉は心の底から発したものだ。この島の責任者として、一人の島民に肩入れするのは褒められた行動ではないだろう。だが、躍動する気高い魂と優しく純粋な心の持ち主であるカメリオは、トゥルースにとってこの島そのもののような存在だ。
「本気で言ってるの……ですか?」
「ああ。俺の心臓を賭けたって構わないよ」
トゥルースの眼差しは、嘘をついているようにはカメリオには思えなかった。それを実感したからか、カメリオには自身の鼓動がやけに大きく聞こえている。だが、カメリオは自身の鼓動が大きく聞こえる理由も、頬がやけに熱く感じる理由も認めたくなかった。
「……それなら、急いで農場に向かいましょう。グラートさんも嬉しい知らせは早いほうがいいでしょうし」
「ああ……そうだな」
カメリオは今度こそは平静を装ったつもりだったが、トゥルースの妙にはにかんだような表情に、癪に障るような心地に包まれた。目の前の男から子供扱いされているような、内心の奥深くを見透かされているような、そんな心持ちになったのだ。
一方、トゥルースは自分の言葉に頬を染めて、それでいて気丈に振る舞うカメリオの様子に、胸をときめかせていた。ひょっとしたらカメリオは、自分と同じ気持ちを僅かにも心の中に抱いてくれているのではないだろうか。そんな確信めいた願望が、トゥルースの心を擽る。
足取りも軽く農場に向かい、入り口付近に居た農夫に言付けてグラートを呼び出せば、グラートが彼にしては珍しく小走りでトゥルース達を出迎えてくれた。彼は彼で、余程トゥルース達の訪いを待ち侘びていたらしい。
「立ち話もなんですから、あちらでお話を伺います」
と、グラートに案内された四阿には、休憩中の農夫や農婦の姿があった。農場に苦役刑囚を迎え入れる話は、もうグラートから通達されているのだろう。不安と期待が入り混じった顔でじっとこちらを見つめてくる彼等の様子には、トゥルースも人払いを頼む気が失せた。
「この名簿のうち、印が付いているのは皆、農場で働くことを志願してきた者達だ。確認してくれ」
「なんと……こんなに多くの者達が、自分から農場で働きたいと?」
「ああ。彼等は刑期を終えた後も、この島の民としてお前達と共に農場で働くことを希望している。受け入れてくれるか?」
トゥルースの言葉に、聞き耳を立てている農夫達もざわつく。元傭兵であった苦役刑囚達のことは、農場の仕事に無理解で怠惰な者達であるとの、経験則からの先入観があったのであろう。
グラートは戸惑ったように口をむずつかせて、今にも泣き出しそうな笑みを浮かべた。
「えぇ、えぇ――もちろんですとも。貴方がこの島に来てくださって、本当に良かった……」
グラートの嬉しそうな声を受けて、農夫達のざわめきも喜びの色を帯びる。喜ぶグラートと農夫達の様子に、トゥルースもまた、胸に熱いものを感じた。
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