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悪役令嬢に私はなる!
しおりを挟む「それで秘策はあるの?」
少し揶揄う様に聞いてくるマデリーン
「来月婚約者候補が順番にフレデリック殿下に会うことになるでしょう?」
「そうね。確か私はトップバッターだったわ。くじで決めたらしいわよ」
どんな決め方よ! 王宮の方もそれで良いのかしら? 第一王子の婚約者候補の顔合わせにくじ引きって……
「ふふっ。お父様に言われてドレスを注文したの」
「リリーのドレスはいつも可愛いわよね! 今度お店を紹介してくれる?」
「それはもちろん! じゃなくていつものドレスとは違うドレスを注文したの。パステルカラーからの卒業よ! 顔がキツく見えるように大人のドレスを注文したの」
ふふん! どう?
「まず見た目から変えようと言うことね」
「大正解!」
「……ドレスだけじゃ無理でしょ」
「あと何をすれば良い?」
「しなくても良かったんじゃなくて?」
「え! どう言うこと?」
「リリーは見た目が儚げでしょう? 性格は置いといて」
「……はぁ」
「見た目がおとなしい子がキツいことを言う方がより悪く見えると思うわよ。私がキツいことを言ってもスルーされるかもしれないけれど、リリーが言うとぐさっと刺さると思うのよねぇ」
「……そう? それなら髪型を縦ロールのドリルにするのはやめておくわ。真っ赤なルージュと長く引いたアイライナーもやめた方が良い?」
「ぷっ。くっくっくっ……どこで習ってきたのよ。いつの時代の、」
「マデリーン、あなたから借りた悪役令嬢が出てくる本よ。事実とは異なるのね……」
しゅんと肩を落とすリリアン
「まぁ良いんじゃない? やってみると良いわ。でも縦ロールのドリルは似合わないし髪が痛むからおススメ出来ないわ!」
「うん。アドバイスありがとう」
「そろそろ戻りましょうか?」
教室へ戻る二人
******
「行ったか……おかしすぎて腹が捩れるかと思った……」
人気のいないところを探して横になろうと芝生の上で寝転がっていた所にある令嬢たちがランチを始めてしまった。
悪いと思い起き上がったが、二人の横を通らなければいけない為に、この場に留まってしまった。会話を盗み聞きするつもりはなかったんだが……悪いことをした。
リリアン・サレット侯爵令嬢とマデリーン・カサール侯爵令嬢。
この学園のマドンナとか言われているのに会話は普通の女子学生の様だった。
二人とも女性しかいないクラスにいるので知り合う機会などない。この学園は貴族の学園で、平等と言っても知り合いではない限り話しかけることはできない。もし話したいのならば友人を介して紹介してもらうか、家同士の付き合いがあればなお良いとされている。
二人とも第一王子の婚約者候補に挙がっているのに、二人とも嫌がっているとはな。それにしてもサレット侯爵令嬢は面白い子だった。儚げな印象とは違いハキハキと話し少しズレている所は、会話を聞いただけでも愛らしいと思った。
直接話をしてみたいと思うが、サレット侯爵令嬢と知り合いなんて俺の友人には居ないよな……。
そう思いながら午後の授業に出るために教室へ戻ろうと思ったのだが……
「ハンカチ?」
拾い上げるとLilyと刺繍されたアルファベットと百合の花が刺繍されたハンカチが落ちていた。
サレット侯爵令嬢はリリーと呼ばれていたな。だから百合か。
拾って胸ポケットにひとまず入れる。
話しかけるきっかけが見つかったが、急にこれを渡して君のだよね。なんて気持ち悪いよな。せめてフルネールが刺繍されていれば届けやすかったのにな!
もしかしたら探しにくるかもしれないから、念のため放課後戻ってこよう。と思った。
放課後になりすぐにハンカチを拾った場所に戻ってきた。ベンチに座り本を読む。
すると待っていた少女が一人でやってきた。そして俺に気づいたようで
「あっ……」
と声を上げた。そして気まずそうに視線を逸らした。
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