侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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とっても褒められました

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「なんて美しいんだ!」




 目を見開き驚く殿下。

 驚きすぎでしょう……


「ありがとうございます。殿下もとても素敵ですよ」

 普段より大人っぽく見えるし、衣装も黒でビシッと決まっている。前髪があるのとないのでは印象が全く違う。

 カッコいいかも……ちょっと照れてしまうわね。

「そう? リリにそう言われるととても嬉しい。今日のリリは美しすぎて眩しいよ。侯爵家のデビューの時とはまた違った美しさだね」

 そう言って手を取られてキスを落とされた。……嫌じゃないとか思ってしまった。


「殿下も……かっこいい、ですよ」


 下を向きにやけるフレデリック

「……嬉しいものだね、照れるよ」

 2人で照れあっているとメイド長が笑顔で

「とてもお似合いのお2人ですよ! でもそろそろ会場に向かいませんと、始まるものも始まりません! 殿下はその調子でリリアン様から離れぬようになさってくださいね。今日のリリアン様はとてもお美しいですからね。リリアン様も殿下から離れてはなりませんよ。仲の良いところをアピールして来てくださいませね」


 離れてはダメ、絶対! 頷いて答える。

「よし、行こう」

 腕を組んで出発だ!

「お嬢様頑張ってくださいね。おかえりをお待ちしていますからね」

 侯爵家のメイドや侍女のマリーに見送られた。



******


「緊張しているね」

「はい。でも殿下の、リックが隣に居てくれたら頑張れそうな気がする……」


 恥ずかしいけれど本心だ。感謝の気持ちでいっぱいだから……たまには良いよね?


「……リリ? リリだよね? どうしたんだ。私にこんなご褒美のような言葉をくれるなんて……夢ではないだろうか」

「……酷いですね」



「そうか……驚いたよ。ありがとう。リリが私の婚約者になった事を後悔しないように頑張るよ。他の男にリリを取られないようにしなきゃ……リリは外見も内面も可愛すぎるからね」

「こんな私を貰ってくれる物好きはリックしかいないでしょう? トラブルメーカーだもの。でもリックがいたらトラブルも回避できると思うのよね」


「成程……それは便利だね。とても良い考えだと思うよ。悪役令嬢はもう卒業だね」

「え!」

「リリの言う悪役令嬢とは何なのか気になって、カサール嬢から勧めてもらった本を読んだよ」


「マデリーンが!」



「悪役令嬢はたしかに自分を持っていてかっこいいよね。それに対して相手が愚かすぎて悪役令嬢に釣り合わないな。勿体ないとさえ思ったよ」


「ですよね!」



「私はそんな愚かな男にはなりたくない……いや、ならない」



「……ん?」




「リリは悪役令嬢ではなくてヒロインなんじゃないの?」

「え!?」

「みんなを虜にするのはヒロインだし攫われるのもヒロインだし……ヒロインはトラブルメーカー気質だよね」


「え!?」


「敢えて複数の男を手玉に取るのは無理だろうけど、勝手に男達がリリに好意を持ってしまうんだよ……色んな本を読んで私なりに出した答えなんだけど、謂わばヒロインは魔性だと言う結果になった」


「……はい?」


「よってリリはヒロインである。ヒロインは王子様と結婚して幸せに暮らしました。ってところかな」


「ん? ……ヒロイン」


「そ。この物語には悪役令嬢は存在しない。ヒロインがヒロインによるヒロインのための(自称)悪役って事」


「そんな! 酷い。頑張ったのに!」


「誰のために?」


「……私の為?」


「それで他のキャストが幸せになれるんなら身を粉にして頑張った甲斐があったね。新しいストーリーは王子に囚われた姫とか?」

「……あ! バカにしてる」


「実に興味深い本が多くてつい読み漁ってしまった。リリにも貸してあげようか?」


「……結構です」


「リリ、愛してるよ。もう一生離さないから覚悟しといて」



 そう言ってフレデリックは婚約発表のパーティー中ずっとリリアンから離れることはなかった。


 またリリアンもフレデリックから離れることはなかった。

 男性恐怖症になりつつある? リリアンはフレデリックが隣にいると安心することができるようで、自らフレデリックの腕から手を離すことはなかった。


 それを見て仲睦まじい2人だと言われた。
























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