侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

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その後……

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「殿下そろそろ送り返しましょうか」

「そうですね。もう不要だ」


 とは……

「シバ王国とは話がついていますから、このまま送り返しましょう」


******


「マテス伯爵、釈放する。裏に止めてある馬車に乗り即刻出て行かれるように」


 リリアンを攫って1ヶ月が経った頃だろう。国へ戻るとまたマテス伯爵と呼ばれる

 ……王太子の婚約者をさらい、暴力まで振るったというのに。


 ……はっはっは。

 バカな国だ! あれから大人しく反省したフリをしていたら結果これか!


 国へ戻ったら他国での罪は無かった事になる。貴族様万歳だ。


 国へ帰るまで馬車のカーテンを開けることは許されなかった。暗いまま半月をかけてシバ王国へと入った。

 馬車の中でも反省を促すというのか! チッ。大人しく言うことを聞いておくしかない。

 今はまだ体力が戻っていない。

 ここは大人しく一度シバ王国へ帰り、金を積めばなんでもしてくれる裏組織に依頼してリリアンを連れてこれば良い。


 あのバカな王女を信頼したのは間違いだったな。容姿だけは良いけれどおつむの方はさっぱりだ! おつむの弱さがバレる前にとっととあのフレデリック殿下と契っておけば良かったものの!

 媚薬まで渡したのに、本当に使えない女だ!


******

 扉をノックをすると返事が返ってきて入室を促された。

「リリアン嬢居たのか」

 ここはフレデリックの執務室。リリアンは学園を休んでいるので久しぶりに姿を見た。

「キリアン様、お久しぶりです。色々とお世話になったのにお礼が遅れてしまって申し訳ございませんでした」


 トビアスに酷い目にあわされたようで、学園を休んでいるとシルヴァン殿から聞いていた。傍目から見ても儚げである。

「いや、私は大した事をしていない。もっと早く知っていたのなら捜索隊に加われたのにな」


「リリが、キリアンに礼を言いたいと言ったから、おまえに来てもらったんだ」


 フレデリックが、リリアンを自分の隣に座らせた。大人しくフレデリックの隣に座るリリアン。あぁ……婚約者だもんな。

「別に何もしてない。あちらの国に少し圧をかけたくらいだ。礼を言われる事はしてないさ……それにしても随分と君たちの仲が深まったようだけど……」


 フレデリックはリリアンの肩を抱きリリアンも嫌そうではない。


「ん? あぁ……これか。リリは知らぬ間に人を魅了してしまうだろ? だから私だけを魅了すれば人に迷惑をかけないと思って、側に居るんだ」


 それが本心ならフレデリックは相当ないかれ野郎だが、俺自身も惹かれてしまったのだから何にも言えない。

「リリアン嬢が元気そうで安心したよ。披露パーティー以来姿を見ていなかったから心配していたんだ」


「……キリアン様には心配と迷惑しかかけていませんね。本当に申し訳ございません」

 しゅんと落ち込むリリアン。

「いや、それは全く構わないんだけど、学園にはもう来ないのか?」

 困った顔をするリリアンが助けを求めるようにぎゅっとフレデリックの袖を掴んでいた。


「……もう少し落ち着いてからの方が良いと思う。学力的には問題ないし、妃教育をしながら勉強をしているんだ。リリ来週のテストは受けに行こうか?」

「うん、行かなきゃ」

「行きはシルヴァン殿にお願いしよう。帰りは私が迎えに行くよ」

「うん。約束ね」


 何か変だ。元々儚げではあるけれど、見た目とは違い元気なリリアンだったのにな。まだ全快ではないのだろう。

「リリアン嬢の顔が見られてよかった。フレデリック用事とはこの事だったのか? 長居するのもアレだな……そろそろ失礼するよ」

 立ち上がろうとした所、フレデリックに止められた。

「リリ、私はキリアンと少し話がしたいんだ。先に部屋に帰って待っていてくれる?」

「うん。キリアン様本日はお忙しい中、お時間を作ってくださりありがとうございました。それでは失礼致します」

 リリアンは相変わらず美しい所作だと思った。それに前とは違う高貴なオーラ? も漂っていた。気軽に近くに寄ってはいけない雰囲気だ。







「キリアン、リリを見てどう思った?」


「何かに怯えているようなそんな感じか?」


「あんなことがあったからリリは一人でいるのが不安なんだよ」


「そうか、可哀想に。王族に嫁ぐと言う事は、これから先も狙われることもあるだろうな」


「……否定できない。護衛も付けたし特別な指輪もつけているから何かあってもすぐ対応はできるようにはなっている」


「リリアン嬢、いつもあんな感じなのか?」


「いや。いつもは侍女やメイド達と楽しく過ごしているよ。勉強も捗っているんだが、医師が言うには男性恐怖症? って言うものらしい」


「男性恐怖症? ……もしかして俺にも?」


「100%ではないけれど、少し緊張していたみたいだな。男でリリが受け入れているのは父の侯爵殿、兄のシルヴァン殿、護衛達と私と私の執事くらいかなぁ、あとジェローム」


「ショックだが……それだけ怖い思いをしたのだろう……」


「戻ってきた時はそんな事はなかったんだが、日に日に怯えるようになっていった。おまえには久しぶりに会うわけだし、感謝をしているから自分から会いたいと思ったんだろうよ」


「そうか……それなら怖がられないように距離を取りながら接する事にするよ」


「頼むよ。学園に行かないのは学園には同世代の子息達がうじゃうじゃいるだろう。私の婚約者となったから声をかける事は今まで以上に出来ないだろうが、見られる事は増えるだろう? 熱のこもった視線は今のリリには耐えられないだろう。私が隣に居られれば良いのだけど24時間ついている事は出来ない」




「……添い寝までしているのにか?」

「あれ? 知ってるの?」

「何かの拍子にシルヴァン殿から聞いた」


「仕方がないだろう。一度家に帰った時にリリは眠れなくてシルヴァン殿に一緒に寝てほしいと言ったんだ! 妹可愛さに頷こうとしたらしいが、冷静になりそれはダメだと一晩中ベッドの横の椅子に座り手を繋いで居たらしい……」

「そんなに酷いのか……」


「起きた時に知らない天井だったり知らない男がいたんだからトラウマになっているんだよ。朝起きた時に私の顔を見て安心しているリリの顔がまた可愛くてな……」

「そうかよ! 聞きたくないねそんな話! よくメイド長が許したな」


「メイド長はリリの虜になっている。そして私はそのメイド長に【手を出しません】と一筆書かされた……本題に入るぞ」


 遠い目をしていたフレデリックが真剣な目つきに変わった。

「あるのかよ! 本題が……」








 



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