侯爵令嬢リリアンは(自称)悪役令嬢である事に気付いていないw

さこの

文字の大きさ
51 / 65

その後……

しおりを挟む

「殿下そろそろ送り返しましょうか」

「そうですね。もう不要だ」


 とは……

「シバ王国とは話がついていますから、このまま送り返しましょう」


******


「マテス伯爵、釈放する。裏に止めてある馬車に乗り即刻出て行かれるように」


 リリアンを攫って1ヶ月が経った頃だろう。国へ戻るとまたマテス伯爵と呼ばれる

 ……王太子の婚約者をさらい、暴力まで振るったというのに。


 ……はっはっは。

 バカな国だ! あれから大人しく反省したフリをしていたら結果これか!


 国へ戻ったら他国での罪は無かった事になる。貴族様万歳だ。


 国へ帰るまで馬車のカーテンを開けることは許されなかった。暗いまま半月をかけてシバ王国へと入った。

 馬車の中でも反省を促すというのか! チッ。大人しく言うことを聞いておくしかない。

 今はまだ体力が戻っていない。

 ここは大人しく一度シバ王国へ帰り、金を積めばなんでもしてくれる裏組織に依頼してリリアンを連れてこれば良い。


 あのバカな王女を信頼したのは間違いだったな。容姿だけは良いけれどおつむの方はさっぱりだ! おつむの弱さがバレる前にとっととあのフレデリック殿下と契っておけば良かったものの!

 媚薬まで渡したのに、本当に使えない女だ!


******

 扉をノックをすると返事が返ってきて入室を促された。

「リリアン嬢居たのか」

 ここはフレデリックの執務室。リリアンは学園を休んでいるので久しぶりに姿を見た。

「キリアン様、お久しぶりです。色々とお世話になったのにお礼が遅れてしまって申し訳ございませんでした」


 トビアスに酷い目にあわされたようで、学園を休んでいるとシルヴァン殿から聞いていた。傍目から見ても儚げである。

「いや、私は大した事をしていない。もっと早く知っていたのなら捜索隊に加われたのにな」


「リリが、キリアンに礼を言いたいと言ったから、おまえに来てもらったんだ」


 フレデリックが、リリアンを自分の隣に座らせた。大人しくフレデリックの隣に座るリリアン。あぁ……婚約者だもんな。

「別に何もしてない。あちらの国に少し圧をかけたくらいだ。礼を言われる事はしてないさ……それにしても随分と君たちの仲が深まったようだけど……」


 フレデリックはリリアンの肩を抱きリリアンも嫌そうではない。


「ん? あぁ……これか。リリは知らぬ間に人を魅了してしまうだろ? だから私だけを魅了すれば人に迷惑をかけないと思って、側に居るんだ」


 それが本心ならフレデリックは相当ないかれ野郎だが、俺自身も惹かれてしまったのだから何にも言えない。

「リリアン嬢が元気そうで安心したよ。披露パーティー以来姿を見ていなかったから心配していたんだ」


「……キリアン様には心配と迷惑しかかけていませんね。本当に申し訳ございません」

 しゅんと落ち込むリリアン。

「いや、それは全く構わないんだけど、学園にはもう来ないのか?」

 困った顔をするリリアンが助けを求めるようにぎゅっとフレデリックの袖を掴んでいた。


「……もう少し落ち着いてからの方が良いと思う。学力的には問題ないし、妃教育をしながら勉強をしているんだ。リリ来週のテストは受けに行こうか?」

「うん、行かなきゃ」

「行きはシルヴァン殿にお願いしよう。帰りは私が迎えに行くよ」

「うん。約束ね」


 何か変だ。元々儚げではあるけれど、見た目とは違い元気なリリアンだったのにな。まだ全快ではないのだろう。

「リリアン嬢の顔が見られてよかった。フレデリック用事とはこの事だったのか? 長居するのもアレだな……そろそろ失礼するよ」

 立ち上がろうとした所、フレデリックに止められた。

「リリ、私はキリアンと少し話がしたいんだ。先に部屋に帰って待っていてくれる?」

「うん。キリアン様本日はお忙しい中、お時間を作ってくださりありがとうございました。それでは失礼致します」

 リリアンは相変わらず美しい所作だと思った。それに前とは違う高貴なオーラ? も漂っていた。気軽に近くに寄ってはいけない雰囲気だ。







「キリアン、リリを見てどう思った?」


「何かに怯えているようなそんな感じか?」


「あんなことがあったからリリは一人でいるのが不安なんだよ」


「そうか、可哀想に。王族に嫁ぐと言う事は、これから先も狙われることもあるだろうな」


「……否定できない。護衛も付けたし特別な指輪もつけているから何かあってもすぐ対応はできるようにはなっている」


「リリアン嬢、いつもあんな感じなのか?」


「いや。いつもは侍女やメイド達と楽しく過ごしているよ。勉強も捗っているんだが、医師が言うには男性恐怖症? って言うものらしい」


「男性恐怖症? ……もしかして俺にも?」


「100%ではないけれど、少し緊張していたみたいだな。男でリリが受け入れているのは父の侯爵殿、兄のシルヴァン殿、護衛達と私と私の執事くらいかなぁ、あとジェローム」


「ショックだが……それだけ怖い思いをしたのだろう……」


「戻ってきた時はそんな事はなかったんだが、日に日に怯えるようになっていった。おまえには久しぶりに会うわけだし、感謝をしているから自分から会いたいと思ったんだろうよ」


「そうか……それなら怖がられないように距離を取りながら接する事にするよ」


「頼むよ。学園に行かないのは学園には同世代の子息達がうじゃうじゃいるだろう。私の婚約者となったから声をかける事は今まで以上に出来ないだろうが、見られる事は増えるだろう? 熱のこもった視線は今のリリには耐えられないだろう。私が隣に居られれば良いのだけど24時間ついている事は出来ない」




「……添い寝までしているのにか?」

「あれ? 知ってるの?」

「何かの拍子にシルヴァン殿から聞いた」


「仕方がないだろう。一度家に帰った時にリリは眠れなくてシルヴァン殿に一緒に寝てほしいと言ったんだ! 妹可愛さに頷こうとしたらしいが、冷静になりそれはダメだと一晩中ベッドの横の椅子に座り手を繋いで居たらしい……」

「そんなに酷いのか……」


「起きた時に知らない天井だったり知らない男がいたんだからトラウマになっているんだよ。朝起きた時に私の顔を見て安心しているリリの顔がまた可愛くてな……」

「そうかよ! 聞きたくないねそんな話! よくメイド長が許したな」


「メイド長はリリの虜になっている。そして私はそのメイド長に【手を出しません】と一筆書かされた……本題に入るぞ」


 遠い目をしていたフレデリックが真剣な目つきに変わった。

「あるのかよ! 本題が……」








 



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!

山田 バルス
恋愛
 王都の中央にそびえる黄金の魔塔――その頂には、選ばれし者のみが入ることを許された「王都学院」が存在する。魔法と剣の才を持つ貴族の子弟たちが集い、王国の未来を担う人材が育つこの学院に、一人の少女が通っていた。  名はベアトリス=ローデリア。金糸を編んだような髪と、透き通るような青い瞳を持つ、美しき伯爵令嬢。気品と誇りを備えた彼女は、その立ち居振る舞いひとつで周囲の目を奪う、まさに「王都の金の薔薇」と謳われる存在であった。 だが、彼女には胸に秘めた切ない想いがあった。 ――婚約者、シャルル=フォンティーヌ。  同じ伯爵家の息子であり、王都学院でも才気あふれる青年として知られる彼は、ベアトリスの幼馴染であり、未来を誓い合った相手でもある。だが、学院に入ってからというもの、シャルルは王女殿下と共に生徒会での活動に没頭するようになり、ベアトリスの前に姿を見せることすら稀になっていった。  そんなある日、ベアトリスは前世を思い出した。この世界はかつて病院に入院していた時の乙女ゲームの世界だと。  そして、自分は悪役令嬢だと。ゲームのシナリオをぶち壊すために、ベアトリスは立ち上がった。  レベルを上げに励み、頂点を極めた。これでゲームシナリオはぶち壊せる。  そう思ったベアトリスに真の目的が見つかった。前世では病院食ばかりだった。好きなものを食べられずに死んでしまった。だから、この世界では美味しいものを食べたい。ベアトリスの食への欲求を満たす旅が始まろうとしていた。

【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?

鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。 楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。  皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!  ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。  聖女はあちらでしてよ!皆様!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

所詮私は他人でしたね でも対価をくれるなら家族の役割を演じてあげます

れもんぴーる
恋愛
シャリエ子爵家には昔、行方不明になった娘アナベルがいた。十三年ぶりに戻って来たアナベルに、セシルは姉が出来たと喜んだ。だが―――アナベルはセシルを陥れようと画策する。婚約者はアナベルと婚約を結びなおし、両親や兄にも虐げられたセシルだったが、この世界はゲームの世界であることを思い出す。セシルの冤罪は証明され、家を出ようとするが父と兄から必死で引き留められる。それならばと、セシルは家を出て行かない代わりに、「娘」を演じる報酬を要求するのだった。数年後、資金が溜まり家を出て自らの手で幸せを掴もうとしているセシルと新しくできた婚約者マルクの前に再びアナベルは現れる。マルクはアナベルの魔の手から逃れられるのか? セシルはアナベルの悪意から逃げきれ幸せになれるのか?(なります (≧▽≦)) *ゲームを題材にしたの初めてですが、あんまりその要素は強くないかも(;'∀')。あと、少しですが不自然にコメディタッチが出てきます。作者がシリアスだけだと耐えれないので、精神安定の為に放り込む場合がありますm(__)m。 *他サイトにも投稿していく予定です。(カクヨム、なろう)

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

死に戻りの元王妃なので婚約破棄して穏やかな生活を――って、なぜか帝国の第二王子に求愛されています!?

神崎 ルナ
恋愛
アレクシアはこの一国の王妃である。だが伴侶であるはずの王には執務を全て押し付けられ、王妃としてのパーティ参加もほとんど側妃のオリビアに任されていた。 (私って一体何なの) 朝から食事を摂っていないアレクシアが厨房へ向かおうとした昼下がり、その日の内に起きた革命に巻き込まれ、『王政を傾けた怠け者の王妃』として処刑されてしまう。 そして―― 「ここにいたのか」 目の前には記憶より若い伴侶の姿。 (……もしかして巻き戻った?) 今度こそ間違えません!! 私は王妃にはなりませんからっ!! だが二度目の生では不可思議なことばかりが起きる。 学生時代に戻ったが、そこにはまだ会うはずのないオリビアが生徒として在籍していた。 そして居るはずのない人物がもう一人。 ……帝国の第二王子殿下? 彼とは外交で数回顔を会わせたくらいなのになぜか親し気に話しかけて来る。 一体何が起こっているの!?

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

処理中です...