記憶を持ったままどこかの国の令嬢になった

さこの

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二年生になった

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 二年生になった! 相変わらず友人はコリンナさんだけだけど、表面上の友人が5人いるくらいなら信頼できる友人が1人いればいい。この間までは友人どころか話し相手すらいなかったのだから贅沢なくらい。今日は入学式だけで私たちは特に何もすることはない。

 入学式が終わりテストがあった。私は5位だった。首位を取りたいわけではないし上位にいられれば満足。後期テストで好成績を取った時、カンニングをしたのではないか。と疑いをかけられた。そんな事実は一切なく、証拠もないのに人を疑うのはどうかと思います。と強く抗議をした。だって斜め横の子息の回答を見ていた! と疑いをかけられたけれど、私の方が成績が良かったのだから。先生は呆れていたし、カンニングをしたと訴えた令嬢の被害妄想ということで終わったのだ。令嬢は病院に行って視力と脳検査を受け、結果異常なしだった。コリンナさんから聞いた話によるとフェルマン様のファンだったらしく、仲良くしているのが気に食わないからぎゃふんといわせてやろうと思ったのだとか。くだらなすぎて話にならない。


 入学式の数日後、相変わらず私はクラスに友人などいなく移動教室のために廊下を歩いていたら。一年前、ちょうどここの廊下で落ちていたハンカチを拾ったんだったわ……って! ハンカチを落とす新入生! やめてよね。あぁフラッシュバックする記憶“淫乱菌がうつるわ”

 そのままにしておけない。ハンカチを拾い恐る恐る声を掛けた。

「失礼、このハンカチはあなたのものかしら?」

 はぁ。ドキドキする。ハンカチを渡してすぐに立ち去ろう。

「はい、わたしので、きゃぁぁっ」

 顔を真っ赤にして高い声を出された。こんなことならハンカチなんか拾わない方が良かった。

「これあなたの物で間違いないですか? ない? そう。それなら受け取ってくださる? はいどうぞ」

 目をうるうると潤ませ私を見てくる。え、顔が怖いの? 強張っているのかも。

「ありがとうございますっ! モンフォール様からハンカチを拾っていただけるなんて思ってもいなくて! 私モンフォール様に憧れていて、是非お礼をさせてください!」

 な、なに? これ。なんで私の名前……?

「ただ落ちていたハンカチを拾っただけですからお気になさらずに」
「いえいえ! それでは気がおさまりません! モンフォール様のお手を煩わせてしまったのですもの。きゃぁぁっ、近くで見てもお美しいです!」

 な、なに、これ。あ、もしかしてエルマンとお近づきになりたい新たな手口とか? それともフェルマン様? 騙されないわよ!

「お気になさらずに、私移動教室があるので急いでいて、ここで失礼しますね」

 とにかくこの場から逃げよう! ハンカチをぎゅっと握りしめる令嬢を見て少しだけホッとした。汚い物にでも触れるような仕草はなかった。

 次の日午前中の授業を終えエルマンを廊下で待っていた。今日は食堂ではなく中庭でランチをする。エルマンが準備をしてくれると言っていた。

「モンフォール様!」
「あ、あら、あなた方は昨日の?」

 ハンカチを拾ってあげた子達だった。

「覚えてくださっていたんですね!」
「えぇ、それは、昨日の事ですから」

 昨日の今日だから忘れるわけない。この子たちの態度を見ると悪意はないように思えるのだけど警戒中。

「嬉しいです! 私たちモンフォール様に憧れているのです」
「憧れ? 私に? 何かの間違いではなくて?」

 憧れって……人や物事に対して、強く心引かれ、その存在や状態を自分自身に求める心情を表す言葉? 私に? なんで?

「間違いではありません! モンフォール様とデルクール様が一緒にいるところを見るだけでこう胸がキュンと高鳴るのです!」

「それはエルマンの隣にご自分が立ちたいとか、」
「は? エマ何言ってんだ? 俺の隣は永遠にエマが立つと決まっているだろ!」

 なんでこうタイミング悪く? エルマンが来るのか……

「エルマン」

「「「きゃぁぁっ!!!」」」

 令嬢たちから黄色い声が上がる。なによ、いったい何があったの? こういうのに慣れていないんだから! キョロキョロと周りを見渡す。目立ってしまったわ……

「エマ、待たせたな。ところでこの子達は? それとさっきの発言の意味は?」

 昨日ハンカチ日拾ってあげた子達でお礼を言いにきてくれたのよ。と説明した。

「そうなんです! モンフォール様にハンカチを拾っていただいてお礼にきましたの。これを受け取ってください」

 綺麗に包装されリボンが付いていた。わざわざわ用意をして持ってきてくれたのだろう。

「ハンカチを拾っただけで頂けないわ」
「いえ、そういうわけにはいけません。モンフォール様を屈ませてしまったのですから!」

 真剣な眼差しで見てくるけれど屈んだくらい大したことではないしよくあること。それにこんなに綺麗に包まれているけれど、何が仕込まれているか分からない。
 もしかしてリボンが凶器でリボンを解くと首にリボンが巻き付いて締め殺されるとか、プレゼントといいながら中身は小動物の死骸だったとか……実際机の中に小動物の死骸が入っていたことがあり恐怖のあまり声にならなくて、気持ちが悪くなり教室に戻れなくなることがあった。あの時のエルマンは思い出しただけでも怖かった……犯人はどうなったんだったけ? 記憶にない。

「そこまでいうのなら分かった。これは預かっておこう。礼は以上かな? そろそろエマを解放してくれる? ランチの時間が減ってしまう」

「申し訳ございません! つい長話を。モンフォール様よろしければまたお話しさせてくださいませ。失礼致しました」

 令嬢たちはエルマンの言葉に素直に従った。悪い子達じゃないのかもしれない。







 
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