53 / 74
二年生になった
しおりを挟む二年生になった! 相変わらず友人はコリンナさんだけだけど、表面上の友人が5人いるくらいなら信頼できる友人が1人いればいい。この間までは友人どころか話し相手すらいなかったのだから贅沢なくらい。今日は入学式だけで私たちは特に何もすることはない。
入学式が終わりテストがあった。私は5位だった。首位を取りたいわけではないし上位にいられれば満足。後期テストで好成績を取った時、カンニングをしたのではないか。と疑いをかけられた。そんな事実は一切なく、証拠もないのに人を疑うのはどうかと思います。と強く抗議をした。だって斜め横の子息の回答を見ていた! と疑いをかけられたけれど、私の方が成績が良かったのだから。先生は呆れていたし、カンニングをしたと訴えた令嬢の被害妄想ということで終わったのだ。令嬢は病院に行って視力と脳検査を受け、結果異常なしだった。コリンナさんから聞いた話によるとフェルマン様のファンだったらしく、仲良くしているのが気に食わないからぎゃふんといわせてやろうと思ったのだとか。くだらなすぎて話にならない。
入学式の数日後、相変わらず私はクラスに友人などいなく移動教室のために廊下を歩いていたら。一年前、ちょうどここの廊下で落ちていたハンカチを拾ったんだったわ……って! ハンカチを落とす新入生! やめてよね。あぁフラッシュバックする記憶“淫乱菌がうつるわ”
そのままにしておけない。ハンカチを拾い恐る恐る声を掛けた。
「失礼、このハンカチはあなたのものかしら?」
はぁ。ドキドキする。ハンカチを渡してすぐに立ち去ろう。
「はい、わたしので、きゃぁぁっ」
顔を真っ赤にして高い声を出された。こんなことならハンカチなんか拾わない方が良かった。
「これあなたの物で間違いないですか? ない? そう。それなら受け取ってくださる? はいどうぞ」
目をうるうると潤ませ私を見てくる。え、顔が怖いの? 強張っているのかも。
「ありがとうございますっ! モンフォール様からハンカチを拾っていただけるなんて思ってもいなくて! 私モンフォール様に憧れていて、是非お礼をさせてください!」
な、なに? これ。なんで私の名前……?
「ただ落ちていたハンカチを拾っただけですからお気になさらずに」
「いえいえ! それでは気がおさまりません! モンフォール様のお手を煩わせてしまったのですもの。きゃぁぁっ、近くで見てもお美しいです!」
な、なに、これ。あ、もしかしてエルマンとお近づきになりたい新たな手口とか? それともフェルマン様? 騙されないわよ!
「お気になさらずに、私移動教室があるので急いでいて、ここで失礼しますね」
とにかくこの場から逃げよう! ハンカチをぎゅっと握りしめる令嬢を見て少しだけホッとした。汚い物にでも触れるような仕草はなかった。
次の日午前中の授業を終えエルマンを廊下で待っていた。今日は食堂ではなく中庭でランチをする。エルマンが準備をしてくれると言っていた。
「モンフォール様!」
「あ、あら、あなた方は昨日の?」
ハンカチを拾ってあげた子達だった。
「覚えてくださっていたんですね!」
「えぇ、それは、昨日の事ですから」
昨日の今日だから忘れるわけない。この子たちの態度を見ると悪意はないように思えるのだけど警戒中。
「嬉しいです! 私たちモンフォール様に憧れているのです」
「憧れ? 私に? 何かの間違いではなくて?」
憧れって……人や物事に対して、強く心引かれ、その存在や状態を自分自身に求める心情を表す言葉? 私に? なんで?
「間違いではありません! モンフォール様とデルクール様が一緒にいるところを見るだけでこう胸がキュンと高鳴るのです!」
「それはエルマンの隣にご自分が立ちたいとか、」
「は? エマ何言ってんだ? 俺の隣は永遠にエマが立つと決まっているだろ!」
なんでこうタイミング悪く? エルマンが来るのか……
「エルマン」
「「「きゃぁぁっ!!!」」」
令嬢たちから黄色い声が上がる。なによ、いったい何があったの? こういうのに慣れていないんだから! キョロキョロと周りを見渡す。目立ってしまったわ……
「エマ、待たせたな。ところでこの子達は? それとさっきの発言の意味は?」
昨日ハンカチ日拾ってあげた子達でお礼を言いにきてくれたのよ。と説明した。
「そうなんです! モンフォール様にハンカチを拾っていただいてお礼にきましたの。これを受け取ってください」
綺麗に包装されリボンが付いていた。わざわざわ用意をして持ってきてくれたのだろう。
「ハンカチを拾っただけで頂けないわ」
「いえ、そういうわけにはいけません。モンフォール様を屈ませてしまったのですから!」
真剣な眼差しで見てくるけれど屈んだくらい大したことではないしよくあること。それにこんなに綺麗に包まれているけれど、何が仕込まれているか分からない。
もしかしてリボンが凶器でリボンを解くと首にリボンが巻き付いて締め殺されるとか、プレゼントといいながら中身は小動物の死骸だったとか……実際机の中に小動物の死骸が入っていたことがあり恐怖のあまり声にならなくて、気持ちが悪くなり教室に戻れなくなることがあった。あの時のエルマンは思い出しただけでも怖かった……犯人はどうなったんだったけ? 記憶にない。
「そこまでいうのなら分かった。これは預かっておこう。礼は以上かな? そろそろエマを解放してくれる? ランチの時間が減ってしまう」
「申し訳ございません! つい長話を。モンフォール様よろしければまたお話しさせてくださいませ。失礼致しました」
令嬢たちはエルマンの言葉に素直に従った。悪い子達じゃないのかもしれない。
54
あなたにおすすめの小説
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
【完結】気味が悪い子、と呼ばれた私が嫁ぐ事になりまして
まりぃべる
恋愛
フレイチェ=ボーハールツは両親から気味悪い子、と言われ住まいも別々だ。
それは世間一般の方々とは違う、畏怖なる力を持っているから。だが両親はそんなフレイチェを避け、会えば酷い言葉を浴びせる。
そんなフレイチェが、結婚してお相手の方の侯爵家のゴタゴタを収めるお手伝いをし、幸せを掴むそんなお話です。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界とは似ていますが違う場合が多々あります。その辺りよろしくお願い致します。
☆現実世界にも似たような名前、場所、などがありますが全く関係ありません。
☆現実にはない言葉(単語)を何となく意味の分かる感じで作り出している場合もあります。
☆楽しんでいただけると幸いです。
☆すみません、ショートショートになっていたので、短編に直しました。
☆すみません読者様よりご指摘頂きまして少し変更した箇所があります。
話がややこしかったかと思います。教えて下さった方本当にありがとうございました!
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
サフィリーン・ル・オルペウスである私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた既定路線。
クロード・レイ・インフェリア、大国インフェリア皇国の第一皇子といずれ婚約が結ばれること。
皇妃で将来の皇后でなんて、めっちゃくちゃ荷が重い。
こういう幼い頃に結ばれた物語にありがちなトラブル……ありそう。
私のこと気に入らないとか……ありそう?
ところが、完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
絆されていたのに。
ミイラ取りはミイラなの? 気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
いろいろ探ってましたけど、どうなったのでしょう。
――考えることに、何だか疲れちゃったサフィリーン。
第一皇子とその方が相思相愛なら、魅了でも何でもいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
不定期更新です。
他サイトさまでも投稿しています。
10/09 あらすじを書き直し、付け足し?しました。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀のラブファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる