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ハリーの実情

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 ~ハリー視点~

 はぁ。疲れるな……俺の顔を見て昔の父を思い出す。などと声をかけてくる夫人達。お茶会の招待もよく貰うし、爵位が高くそれでいて美しい令嬢と出会い結婚したいと思っていた。

 とある夫人に声を掛けられ茶会に参加すると夫人の夫が挨拶にやってきた。夫人は俺を紹介し、グレイヴス子爵の若い頃にそっくりでステキよね! と言う。すると夫人の夫は“そうだったな、君は子爵のファンだったね”と言う。夫人は“うちの娘をハリー様と結婚させるのはどう? きっと美男子が産まれるわ”と嬉しそうに言った。それから夫人と会うことはなくなった。

 とある夫人は俺に良くプレゼントをくれた。お金持ちのマダムだからありがたく受け取っていたのだが、夫と別れて結婚しよう。と言ってきた。そんなつもりはない。と言うと付き纏われるようになった。これがまた姑息で誰もいない時に現れるものだから怖くなった。夫人の行為が夫にバレたようで“もう妻が君の前に現れることはない。今まで妻が君にプレゼントをした物は迷惑料だと思ってくれ”と言われた。

 それを機に茶会の招待も減った。どこで失敗したんだろうか……母にも注意をされる。誰に対しても良い顔をするからこうなるの。本当に大事な人が出来た時に苦労するわよ! 見た目ではなく中身をみてくれる子はいないの?

 ……考えたことなかったな。父に似て整った顔を武器にして高位貴族の美しい令嬢と結婚しようと思っていた。俺自身も中身なんて見てなかったんだ。
 夫人達に良い顔をして、時にはプレゼントをもらい、体の関係を求められる事もあった……優しい言葉をかけて、話を聞いてあげるだけで……ってこれでは接待サービスをする怪しい職業の男と同じじゃないか!

 良かれと思ってやっていたことが裏目に出るとは……

 うちの家は貧しいわけでもないし、金が有り余っているわけでもない。父と母が仲良く家を回している。山あり谷ありのようなスリルな人生より、安定して暮らしたいと言っていた。母の学園時代の同級生が伯爵家に嫁ぎ娘が俺の一つ下だということで、家族ぐるみで仲良くしていた。カルメル伯爵家の娘オフィーリアはブラウンの大きな瞳をした可愛らしい女の子だった。その子の後ろにはいつも体の弱いアンドリューという名の弟がくっついていた。

 両親から、仲が良いのなら婚約したらどう? と提案された。オフィーリアと婚約か……オフィーリアは素直で可愛いけれど妹にしか見えないんだよな。まだ十歳だし婚約を決めるのは早い。高位貴族同士ならアレだが僕は子爵家オフィーリアの家は伯爵家だから急がなくとも問題ない。

 それにオフィーリアは友達が少ないし学園に入ってお互い自由に過ごしてから考えても良いだろう。なんてのんびり構えていた。学園に入ってから目立つ生徒はすぐに噂になる。もちろん俺も噂になりよく声を掛けられていた。学園内は平等といえど、やはり平等ではない。俺は単なる顔がいいだけの子爵家の子息だ。

 顔の出来が良くなくても侯爵家の子息は人気がある。それに伯爵家の婚約者がいない子息は凄い人気だった。オフィーリアの家も伯爵家だったけれど親同士が仲良かったからここまで差があるとは知らなかった……

 出会いを求めて色んな場所へ行ったが色々とあり疲れている。そんな中オフィーリアが入学をしてきた。可愛い伯爵家令嬢で胸も大きく癒し系令嬢と噂される令嬢がいるそうだ。へぇ。そりゃぁいいな。疲れた心と体を癒してもらいたい。是非お近づきにって! オフィーリア?!

 母がオフィーリアは可愛くなっていた。と言っていたけれど……確かに。新入生が入ってきて茶会に誘われる事もまた増えたのだが、オフィーリアの事が気になる。
 お茶会で聞いた話だと、とても人気があるようだがオフィーリアの応援隊とかいう組織があり? 今は見守っているのだとか? なんだそれ。

 オフィーリアが俺に声を掛けてくるまで待つか……と思っていても一向に声どころか顔を合わせる事もない。
 そんな中オフィーリアを見かけた友人がオフィーリアを見かけて俺が幼馴染だと言うと紹介しろ。とうるさい。しょうがないから声を掛けてやることにしたのだが……

 つれない態度を取られて驚いた。昔は俺の顔を見て尻尾を振っていたよな?

 とにかく、オフィーリアは俺の事が好きなのだからもう少し待ってやることにしたら、今度は公爵家の令嬢やその婚約者で学年一位の侯爵家の子息と仲良くしているではないか! オフィーリアと結婚して子爵家を継いでも上手く行きそうだな。公爵家と親しくしているとなるとって王太子まで!


 オフィーリア……どうなってるんだ。とにかく、オフィーリアと交流を持たなければいけない。お茶に誘うも断られるし、隣には侯爵子息のフンが付いているし、なんなんだよ、この男は。
 もうすぐオフィーリアの誕生日、招待状は届いているからその時に将来について話をするか。
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