53 / 93
今後の事
しおりを挟む
「クルー男爵がお見えなの?」
「はい、旦那様がお嬢様はどうされるかと聞いております」
ショーンだった。
「それはお会いするけれど、ショーンは休んでよ。疲れているでしょう? ミリーにも休んでと言ったのに」
チラリと二人を見ると微笑まれるだけだった。屋敷にいた頃のように普段通りすぎるわ。休んで欲しいのに……後でお母様から二人に休暇の話をしてもらわなきゃ、私が言っても聞いてくれないのよね。
「疲れていないので休むわけにはいきません」
「うちはブラック伯爵家だけど仕事内容に関してはホワイトだと思うのよね。旅に付き合わせてしまったから休んで欲しいのに……」
ダメ? 首を傾げてお願いして首を縦に振らなかったのよ。
「好きでしている仕事ですからお気になさらずに」
頑固だわね。
「後で文句を言ってきても聞きませんからね」
「ホワイトな職場なのですから文句の一つや二つ聞いてくださるでしょう。私達は疲れていません」
ミリーもショーンも疲れを一切見せないような笑顔で言ってきた。それなら折れるしかない。
「分かったわ。それじゃあお客様がお待ちですから行きましょう」
ショーンに案内される形で応接室へと行く。クルー男爵か久しぶりよね。
ショーンが声をかけるとすぐに扉が開かれた。
「お久しぶりです」
あ、ら。クルー男爵ってこんなお顔でしたっけ……やつれて悲壮感が漂っている。
「アリスフィア嬢、この度は誠に申し訳ありませんでした!」
え。土下座……って!
「男爵どうかお顔をあげてくださいな。わたくしはクルー男爵のそのような姿を見たいわけではありませんわ」
クルー男爵の近くへ行き頭を上げるように言いソファに腰掛けてもらった。
「娘の言う通りですよ。君のそのような姿を見たいわけではないし、謝罪は受けとる。アリスフィアも同じ気持ちだな?」
お父様を慕ってくださっている遠縁のクルー男爵。共同事業もあるようだし関係を崩すのは良くない。クルー男爵に謝って欲しいわけではないもの。
「はい。クルー男爵、わたくしの事はわたくしでなんとかしますのでお気になさらずに。それよりも男爵ですわ。お疲れでしょうしご自身の体にも気を遣って下さいませね」
「申し訳、ございません。我が家でのレイラの教育が行き届いていないばかりにたくさんの方に迷惑をかけてしまいました」
相当な額の慰謝料を提示してきて、さらに事業譲渡書まで……
「共同事業の方は伯爵様に嬢度します。私はしばらくの間、社交をやめ領地に引っ込みます。今回の件で息子に爵位を渡したいと思っております」
「そこまで……お父様、なんとかなりませんか」
男爵はきちんと仕事をされているしレイラを引き取って然るべく教師をつけていた。(一般貴族)クレマン子息に嫁ぐのなら問題は無かったと思う。ただ王族に嫁ぐとなると話は別というか……教育内容が全く違うし覚えるマナーも何もかも男爵家では担えない。
「娘もこう言っているし、そこまではしなくても良い。君も被害を受けているのだから」
養女のレイラがしでかしたとはいえ、家名に傷がついたのですもの。
「いえ、申し訳が立ちません」
「困ったね……でも何もしないというのは君の立場からしたら落ち着かないだろう。世間体もあるからね」
ここで何もしなくていい。許すというわけには行かないのが貴族社会。そうしないとこれからもし同じことをしでかした家があったとしたら、ブラック伯爵家は咎めなかった。
と言われると悪い影響が多方面に出てしまう可能性があるから。
「それなら……いただきましょうお父様」
「何を? 慰謝料かい?」
「はい。今回の件で男爵は子爵家や多大な金額を動かすことになりましたよね? ご子息に爵位を渡すといってもまだ学園を卒業したばかりではないですか。今爵位を渡されても悪い評判が残っている現状で渡されても可哀想ですわよ」
「まぁそうだね。今回のことで子息の結婚も延期となったようだし」
そんなことになっているのですね。男爵家の方々はレイラの頑張る姿を見て家族の一員としていましたのにショックでしょうね。本当に第五王子にレイラったら多方面に迷惑をかけてしょうがない人達ね……
「慰謝料は形だけにして孤児の育成をお願いしてもよろしいですか? レイラは頑張っていましたが欲が出て自分本意な形になってしまったけれど、小さい時はそうではなかったではないですか。男爵に恩を返そうと学んでいた姿は嘘ではありませんから。お父様はたくさんの孤児を社会に出し立派に勤めている元孤児達もたくさんいます。孤児を屋敷に引き取り使用人をしている家もたくさんいますが、孤児というだけで何かあったら疑われることもあり地位が低いのです。ですから孤児の育成を頼みたいのですわ。レイラで失敗したかも知れませんが孤児に心をよせることで男爵に向けられた悪意が少しでも減ると思うのです。レイラという元孤児に裏切られても寄付だけではなく育成に力を入れるとなると周りの目も変わってきます。机上論ではありますが」
私が関わってきた孤児院出身の子は期待に答えてくれている。もともとは素直でいい子達が多いのだから。
「はい、旦那様がお嬢様はどうされるかと聞いております」
ショーンだった。
「それはお会いするけれど、ショーンは休んでよ。疲れているでしょう? ミリーにも休んでと言ったのに」
チラリと二人を見ると微笑まれるだけだった。屋敷にいた頃のように普段通りすぎるわ。休んで欲しいのに……後でお母様から二人に休暇の話をしてもらわなきゃ、私が言っても聞いてくれないのよね。
「疲れていないので休むわけにはいきません」
「うちはブラック伯爵家だけど仕事内容に関してはホワイトだと思うのよね。旅に付き合わせてしまったから休んで欲しいのに……」
ダメ? 首を傾げてお願いして首を縦に振らなかったのよ。
「好きでしている仕事ですからお気になさらずに」
頑固だわね。
「後で文句を言ってきても聞きませんからね」
「ホワイトな職場なのですから文句の一つや二つ聞いてくださるでしょう。私達は疲れていません」
ミリーもショーンも疲れを一切見せないような笑顔で言ってきた。それなら折れるしかない。
「分かったわ。それじゃあお客様がお待ちですから行きましょう」
ショーンに案内される形で応接室へと行く。クルー男爵か久しぶりよね。
ショーンが声をかけるとすぐに扉が開かれた。
「お久しぶりです」
あ、ら。クルー男爵ってこんなお顔でしたっけ……やつれて悲壮感が漂っている。
「アリスフィア嬢、この度は誠に申し訳ありませんでした!」
え。土下座……って!
「男爵どうかお顔をあげてくださいな。わたくしはクルー男爵のそのような姿を見たいわけではありませんわ」
クルー男爵の近くへ行き頭を上げるように言いソファに腰掛けてもらった。
「娘の言う通りですよ。君のそのような姿を見たいわけではないし、謝罪は受けとる。アリスフィアも同じ気持ちだな?」
お父様を慕ってくださっている遠縁のクルー男爵。共同事業もあるようだし関係を崩すのは良くない。クルー男爵に謝って欲しいわけではないもの。
「はい。クルー男爵、わたくしの事はわたくしでなんとかしますのでお気になさらずに。それよりも男爵ですわ。お疲れでしょうしご自身の体にも気を遣って下さいませね」
「申し訳、ございません。我が家でのレイラの教育が行き届いていないばかりにたくさんの方に迷惑をかけてしまいました」
相当な額の慰謝料を提示してきて、さらに事業譲渡書まで……
「共同事業の方は伯爵様に嬢度します。私はしばらくの間、社交をやめ領地に引っ込みます。今回の件で息子に爵位を渡したいと思っております」
「そこまで……お父様、なんとかなりませんか」
男爵はきちんと仕事をされているしレイラを引き取って然るべく教師をつけていた。(一般貴族)クレマン子息に嫁ぐのなら問題は無かったと思う。ただ王族に嫁ぐとなると話は別というか……教育内容が全く違うし覚えるマナーも何もかも男爵家では担えない。
「娘もこう言っているし、そこまではしなくても良い。君も被害を受けているのだから」
養女のレイラがしでかしたとはいえ、家名に傷がついたのですもの。
「いえ、申し訳が立ちません」
「困ったね……でも何もしないというのは君の立場からしたら落ち着かないだろう。世間体もあるからね」
ここで何もしなくていい。許すというわけには行かないのが貴族社会。そうしないとこれからもし同じことをしでかした家があったとしたら、ブラック伯爵家は咎めなかった。
と言われると悪い影響が多方面に出てしまう可能性があるから。
「それなら……いただきましょうお父様」
「何を? 慰謝料かい?」
「はい。今回の件で男爵は子爵家や多大な金額を動かすことになりましたよね? ご子息に爵位を渡すといってもまだ学園を卒業したばかりではないですか。今爵位を渡されても悪い評判が残っている現状で渡されても可哀想ですわよ」
「まぁそうだね。今回のことで子息の結婚も延期となったようだし」
そんなことになっているのですね。男爵家の方々はレイラの頑張る姿を見て家族の一員としていましたのにショックでしょうね。本当に第五王子にレイラったら多方面に迷惑をかけてしょうがない人達ね……
「慰謝料は形だけにして孤児の育成をお願いしてもよろしいですか? レイラは頑張っていましたが欲が出て自分本意な形になってしまったけれど、小さい時はそうではなかったではないですか。男爵に恩を返そうと学んでいた姿は嘘ではありませんから。お父様はたくさんの孤児を社会に出し立派に勤めている元孤児達もたくさんいます。孤児を屋敷に引き取り使用人をしている家もたくさんいますが、孤児というだけで何かあったら疑われることもあり地位が低いのです。ですから孤児の育成を頼みたいのですわ。レイラで失敗したかも知れませんが孤児に心をよせることで男爵に向けられた悪意が少しでも減ると思うのです。レイラという元孤児に裏切られても寄付だけではなく育成に力を入れるとなると周りの目も変わってきます。机上論ではありますが」
私が関わってきた孤児院出身の子は期待に答えてくれている。もともとは素直でいい子達が多いのだから。
138
あなたにおすすめの小説
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます
珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。
そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。
そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。
ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。
【完結】聖女を愛する婚約者に婚約破棄を突きつけられましたが、愛する人と幸せになります!
ユウ
恋愛
「君には失望した!聖女を虐げるとは!」
侯爵令嬢のオンディーヌは宮廷楽団に所属する歌姫だった。
しかしある日聖女を虐げたという瞬間が流れてしまい、断罪されてしまう。
全ては仕組まれた冤罪だった。
聖女を愛する婚約者や私を邪魔だと思う者達の。
幼い頃からの幼馴染も、友人も目の敵で睨みつけ私は公衆の面前で婚約破棄を突きつけられ家からも勘当されてしまったオンディーヌだったが…
「やっと自由になれたぞ!」
実に前向きなオンディーヌは転生者で何時か追い出された時の為に準備をしていたのだ。
貴族の生活に憔悴してので追放万々歳と思う最中、老婆の森に身を寄せることになるのだった。
一方王都では王女の逆鱗に触れ冤罪だった事が明らかになる。
すぐに連れ戻すように命を受けるも、既に王都にはおらず偽りの断罪をした者達はさらなる報いを受けることになるのだった。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
聖女でなくなったので婚約破棄されましたが、幸せになります。
ユウ
恋愛
四人の聖女が守る大国にて北の聖女として祈りを捧げるジュリエット。
他の聖女の筆頭聖女だったが、若い聖女が修行を怠け祈らなくななった事から一人で結界を敷くことになったが、一人では維持できなくなった。
その所為で西の地方に瘴気が流れ出す。
聖女としての役目を怠った責任を他の聖女に責められ王太子殿下から責任を取るように命じられる。
「お前には聖女の資格はない!聖女を名乗るな」
「承知しました。すべての責任を取り、王宮を去ります」
「は…何を」
「祈り力が弱まった私の所為です」
貴族令嬢としても聖女としても完璧だったジュリエットだが完璧すぎるジュリエットを面白くおもわなかった王太子殿下はしおらしくなると思ったが。
「皆の聖女でなくなったのなら私だけの聖女になってください」
「なっ…」
「王太子殿下と婚約破棄されたのなら私と婚約してください」
大胆にも元聖女に婚約を申し込む貴族が現れた。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる