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その9(ちょうどいい距離感)
しおりを挟む私はお父様のお膝の上に居ます。
「さてと、どうして熱があるのに部屋から出たのかな?大人しくしている約束だったよね」
お父様が真顔でこちらを向く。
イケメンの真顔って綺麗すぎて怖いわ。
吸い込まれそう……イケメンは三日で飽きるって迷信、あれ嘘ね。心臓が持たないわ。
「マリー返事は?」
「フランと遊びたかったの」
グスン。お父様に嫌われたらどうしよう悲しくなって涙が出る……
「あぁ。泣かなくても良いんだよ怒っているわけではないよ」
「本当?」
「マリーは殿下が来ると言う事は分かっていたんだよね?会いたかったの?」
会いたかった?いいえ。寧ろ会いたくなかった。忘れていたの。本当よ。すっかりきれいに忘れてた!
「ううん。」
「じゃあなんで出てきたの?」
不可抗力です。フランの可愛さにフラフラしたのです。ジュ◯アにハマるお姉さま達の気持ちが理解できました……。
あどけなさ?日々の癒し?って言うの?何かを与えたくなるような………
「殿下が来ているの忘れてて、フランと追いかけっこしちゃったの」
「フランもダメだよね。マリーは熱があるんだよ」
鋭い目つきでフランを見るお父様
「ゴメンなさい父上。ねぇ様の事が心配でお部屋に行ったら夢中で遊んでしまいました」
「パパ!フランは悪くないの。私が遊ぼうって言ったの。ずっとベッドに居てお兄様も遊んでくれないんだもん。ご飯もみんなで食べたいのに……」
もう、涙腺が決壊しそう。
「………そっか。寂しい思いをさせてしまってたんだね。ゴメンねマリー」
お父様は抱きしめてくれた。お父様のお洋服に涙とか鼻水がついちゃう。離れなきゃ。
「なんで離れちゃうの?マリーパパの事嫌いになった?」
「だってお洋服に鼻水ついちゃうもん」
泣きながら訴える。
「パパはマリーから貰えるものはなんだって嬉しいって言ったよね?」
ハンカチを出して鼻を拭いてくれる。
「汚れちゃうもん、お洗濯大変だよ」
そうなのだ。この世界は洗濯機など存在しないのだ。手洗いだよ?大変だよ。手が荒れちゃうよ。お仕事増やしちゃうじゃない。ダメブラック企業!
よしよしと頭を撫でてくれるパパ。
「マリーは優しいねぇ」
お父様の顔を見上げるとさっきまでの顔とは違い優しいお顔に安心した。
「えへへ」
「どうしたのマリー?急に笑って?マリーは笑ってる方がずっと良いよね。……ところでさっきからマリーが手に持ってる物は何かな?」
殿下から貰った髪飾りだ。
「マリーへの見舞いの品だと先程殿下から渡されていました」
お兄様が冷えた声で言う。
さ、寒いわ。この世界に四季があるのかわからないけど恐らく今は春よ!お外は日差しが気持ち良かったもの。はーるよ来い。はーやく来い。じゃないと寒くて風邪ひいちゃう。あっ!ひいてるのよ。
「マリー。知らない人から物をもらっちゃダメだよ。髪飾りが欲しかったの?パパに言ってくれたら買ってあげるのに!」
殿下って知らない人扱いなの?確かに親しくは無いわね。この世界のルールがよく分かんないから、ルール違反をしたのかしら?
「お返しした方が良いのかしら?」
「うーん。それは難しいね。一度いただいたのだからお返しする事は出来ないね」
「そうなんだ……知らなかったの。」
えーん。やっぱりルール違反だ。お父様を困らせたかったわけじゃ無いの。しゅんと落ち込む。
「貰っておけば良いよ。でも絶対に外で付けちゃダメだからね」
「……うん。パパの言う通りにする」
お利口さんだ!とキラキラフェイスで頭にキスを落とされた。
推しからのキス……何回されても慣れないの
ーーそれにしても距離が近すぎて困っちゃう。推しの膝の上よ?
この距離に慣れると離れられなくなるもの。
アリーナA席一列ど真ん中よ。
汗でも・鼻水でもなんでも飛ばして下さいな。受け止める覚悟は出来てます!
夢心地ってこのことを指してるのね。初体験よ。もうこのまま逝ってしまっても……ってダメ悪い癖が出たわ。
「ねぇマリーは殿下の事どう思ってるの?」
お兄様が不穏な顔で尋ねてくる
どう思うって言われてもねぇ。
私の推しはお父様だってば!
「意地悪ばかり言ってくるし、怖いから近づきたくないもん、だから分からない」
ってこんな事他の人に聞かれたら不敬罪じゃない?ヤバイわ。自ら破滅へと向かっているわ。
もしかして王族に対しての不敬罪で死刑とか?ありえるわーーーーーーーー。
お兄様変な質問して来ないでよ!
ダメ!絶対!近づかない!
王子様との距離はホール位がいいわ肉眼で観たいもの。
ドームだと王子様を鑑賞するには遠すぎるわね。望遠鏡がいるもの!
アリーナ席でラッキー!!なんて思ったら埋もれて後ろを向いてモニターで鑑賞よ?
アンラッキーよ。王子様に背を向けるなんて!一階席でも望遠鏡越しに目が合うことなんてあり得ませんから!こっち見てーーーー。あれ?何の話だっけーーーーーーーー?
そうだ殿下の話よ。
…………いつもより優しかった……ような?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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