【完】婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

さこの

文字の大きさ
14 / 30

ジュリアナの思惑

しおりを挟む

「お父様、教会への寄付へ行ってまいりましたわ」

 お父様の営なむフロス商会へ顔を出しました。


「おぉ、ご苦労様。お茶を用意するから一緒にどうだ?」

「はい。お相手しますわ」


 下働きのメイドがお茶を準備する。かちゃかちゃと音を立てて……はぁ。ジェフェリー様の側近の方とは大違いね。
 
 優雅さに欠けるわ。もっとマシな給仕はいないのかしら。

 うーん。少し煮出しすぎ? 茶葉のせいかしら……殿下のサロンで飲むお茶は美味しかったわ。この茶器は豪華で良いけどね。



「学園はどうだ? 平民と言って嫌がらせされていないか? うちは爵位はないが平民としては上級だ、そんじょそこらの家とは格が違う。だから優秀なお前が王立学園に行けたんだ」

「学園では殿下が世話役をしてくださっています。とっても良くしてくださるんですよ」


「おぉ! 殿下が! さすが我が娘!」


「とても良い方ですのよジェフェリー様。サロンへも特別に呼んでくださって、それも二度もよ?」


「なんと! いや……しかし殿下には婚約者がおられたではないか! まずいのではないか? 確か侯爵家のお姫様だったな」


「あら? だって殿下と婚約者は愛がありませんもの。家同士の繋がりですよ。だから私の世話役もしてくださるのでしょう? 必要以上に。ふふっ」


「そうなのか! 愛妾でも良い。お手付きになるだけでも……」


「お父様最低ですわね。愛妾でもだなんて! ジェフェリー様は婚約を解消しようとなさっておいでるのよ?」


「そうか! 名前呼びを許されているんだもんな! でかしたぞジュリアナ」


「私の存在が原因なら婚約解消の慰謝料も請求されるかも知れません」


「あぁ。任せておけ! そのくらいなんとかしようではないか」


「さすがお父様。頼りになります」



******


「おはようございます、セリーナ様」


「おはようございます、ジュリアナ様」

 近くで見ても本当に美しい方……! でもね、美しいだけなの!


「セリーナ様は昨日教会のバザーへ行かれましたの?」


「お邪魔になるかと思って、バザーの前に帰ってきましたの。サムさんとダニエルさんにお願いしてお菓子の販売をしてもらいました。少しでも寄付に繋がればと思いまして」


「あらぁー。そうでしたの。私が教会に寄付にいった時にサムとダニエルがお菓子を売っていたのはセリーナ様のお菓子でしたのね」


「ジュリアナ様も、寄付をされにいかれたのですね。素晴らしいですわ」

「えぇ。うちは現金で寄付していますのよ」

「まぁ! そうでしたのね。お金の方が良かったのかしら…」

「余裕のあるうちは現金が基本ですわね」


「そうでしたの。知りませんでしたわ。バザーに協力することが良いのかと思っていましたもの。浅はかでしたわ。教えてくださってありがとうございます。ジュリアナ様」


 頭を下げて礼をしてくるセリーナ様。ふふっなにかしら? この高揚する感じ……侯爵家の令嬢が平民に頭を下げるだなんて。


「おはようございます。セリーナ様!! どうかされましたの! 頭を上げてくださいな。ジュリアナ様何があって?!」

 またいつもの令嬢ね。邪魔する気?


「おはようございますシーラ様。ジュリアナ様に私の至らないところを教えていただいたのです」

 まぁ、その通りよね。教えてあげたの。世間知らずなお嬢様に。


「そんなことがあったのですね。でも頭を軽々しく下げるのはジュリアナ様のためにも良く無いと思いますわ」


「そう……ね。ここは公の場ではなく学園ですから咎める人はいないでしょう。これからは気をつけますわね」


「はい。セリーナ様、私も差し出がましい真似をして申し訳ございませんでした」



 なんの話かしら? 貴族のそういうところって嫌! 謝るときは頭を下げるのは基本でしょうに……。それにジェフェリー様の婚約者でいられるのもいつまでかしらねぇ。


 それにしてもこのシーラって令嬢は以前私に謝ってきたじゃないの! 何が違うのかしらね








しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

私の婚約者はちょろいのか、バカなのか、やさしいのか

れもんぴーる
恋愛
エミリアの婚約者ヨハンは、最近幼馴染の令嬢との逢瀬が忙しい。 婚約者との顔合わせよりも幼馴染とのデートを優先するヨハン。それなら婚約を解消してほしいのだけれど、応じてくれない。 両親に相談しても分かってもらえず、家を出てエミリアは自分の夢に向かって進み始める。 バカなのか、優しいのかわからない婚約者を見放して新たな生活を始める令嬢のお話です。 *今回感想欄を閉じます(*´▽`*)。感想への返信でぺろって言いたくて仕方が無くなるので・・・。初めて魔法も竜も転生も出てこないお話を書きました。寛大な心でお読みください!m(__)m

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。 傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。 そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。 自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。 絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。 次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…

貴方の知る私はもういない

藍田ひびき
恋愛
「ローゼマリー。婚約を解消して欲しい」 ファインベルグ公爵令嬢ローゼマリーは、婚約者のヘンリック王子から婚約解消を言い渡される。 表向きはエルヴィラ・ボーデ子爵令嬢を愛してしまったからという理由だが、彼には別の目的があった。 ローゼマリーが承諾したことで速やかに婚約は解消されたが、事態はヘンリック王子の想定しない方向へと進んでいく――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

旦那様、政略結婚ですので離婚しましょう

おてんば松尾
恋愛
王命により政略結婚したアイリス。 本来ならば皆に祝福され幸せの絶頂を味わっているはずなのにそうはならなかった。 初夜の場で夫の公爵であるスノウに「今日は疲れただろう。もう少し互いの事を知って、納得した上で夫婦として閨を共にするべきだ」と言われ寝室に一人残されてしまった。 翌日から夫は仕事で屋敷には帰ってこなくなり使用人たちには冷たく扱われてしまうアイリス…… (※この物語はフィクションです。実在の人物や事件とは関係ありません。)

処理中です...