81 / 123
81. 心にしみる失敗作
しおりを挟む
エリナは復讐のために剣の修行ばかりしてきた。
ミーシャは孤児院で料理当番はあったが、言葉巧みに男の子たちにやらせてばかりだった。
ルナは魔法学院で寮暮らし。
シエルに至っては公爵令嬢で、料理など習ったことがない。
それでも――。
「レオンのために、ちゃんと作らなきゃ」
ルナが、真剣な表情で言った。
いつものツンデレ少女の面影はなく、ただ純粋に、大切な人を想う少女の顔がそこにあった。
「……そうね」
エリナが頷く。
その黒曜石の瞳には、ただ誰かを想う温かさが揺れる。
「レオンは、私たちのために命を懸けてくれた。今度は、私たちがレオンを支える番よ」
ミーシャの言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ……も、盛り付けだけでも頑張りましょ?」
シエルが不安げな顔で、作り笑いを浮かべる。
四人の少女たちは、不器用ながらも、精一杯の愛情を込めて――料理に向き合った。
◇
コンコン。
昼過ぎ――扉をノックする音が響いた。
「レオン……入るわよ」
エリナの声だった。
返事をする気力もないレオンを気にせず、扉がゆっくりと開く。
そこには、少女たち四人が立っていた。
皆、どこか不安そうな、それでいて決意に満ちた表情をしている。
「あの……お昼、作ったの」
シエルが、遠慮がちに言う。
その手には、木のお盆。その上には、簡単な料理が乗っていた。
目を引いたのは――焦げた肉だった。
真っ黒に焦げた、もはや炭に近い何か。
そして、不器用にガタガタに切られた野菜の煮物。大きさがバラバラで、煮込み時間も怪しい微妙な見た目をしている。
お世辞にも、美味しそうとは言えなかった。
「あ、あの……私たち、料理とか、あんまり得意じゃなくて……」
ルナが、真っ赤な顔で言い訳する。
いつもの勝ち気な表情はどこへやら、今は恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいの顔をしている。
「ごめんなさいね。もっと美味しく作れればよかったんだけど」
ミーシャも、珍しく申し訳なさそうにうつむく。
いつもの余裕ある笑みはなく、純粋に落ち込んでいるようだった。
「……食べなきゃ体に悪いわ。食べてよ?」
エリナが、ぶっきらぼうに言った。
その顔は、少し赤い。彼女なりに、精一杯の優しさを込めているのだろう。
レオンは、ゆっくりと体を起こした。
四人の少女たちを見る。
皆、心配そうな、それでいて温かい眼差しを向けている。
レオンの胸に、温かいものが込み上げてきた。
ああ――。
この子たちは僕のために不器用に、必死に。
誰も料理なんてできないのに、それでも僕のために。
「……ありがとう」
声が、震えた。
お盆を受け取り、震える手でフォークを握る。
焦げた肉を、口に運ぶ。
硬い。
そして、苦い。
正直、料理としては失敗作だろう。
だけど――。
「美味い……」
涙が、こぼれた。
こめられた気持ちが、嬉しくて。
自分のことを想ってくれる人がいることが、嬉しくて。
自分は一人じゃない。こんなにも、自分のことを想ってくれる仲間がいる。
スキルを失っても、力を失っても――この絆だけは、失われていない。
「レオン……!」
少女たちが、ベッドの周りに集まってくる。
「泣かないで……」
シエルが、そっとレオンの手を握る。
その手は温かくて、優しかった。
「私たちがいるから……」
ルナが、涙目で言う。
いつものツンデレはどこへやら、今は純粋に心配する少女の顔だった。
「レオンは一人じゃないんだから……」
ミーシャが、優しく微笑む。
それは計算された聖女の笑みではなく、心からの笑顔だった。
「……私たちを、信じて」
エリナが、静かに言った。
その黒曜石の瞳には、強い決意が宿っている。
優しい言葉が、レオンを包み込む。
温かさが、胸に満ちていく。
レオンは涙を拭いながら、焦げた肉を――そして、ガタガタに切られた野菜を、一つ残らず食べた。
こんなに心にしみる料理は、今まで食べたことがない。
どんな高級料理よりも、どんな名店の味よりも――この不格好な料理が、何よりも美味しかった。
温かい。
心が、温かい。
カインは「役立たずは追放」と言った。
でも、この子たちは違う。
力があろうとなかろうと、スキルがあろうとなかろうと――ただ、自分という存在を大切にしてくれる。
それが、どれほど尊いことか。
それで、どれほど救われることか。
未来を視る力を失っても――この絆があれば、きっと道は開けるはずだ。
自分にだって、できることがきっとある。
今は道が見えないけど、絆があればきっと道は開けるのだ。
ミーシャは孤児院で料理当番はあったが、言葉巧みに男の子たちにやらせてばかりだった。
ルナは魔法学院で寮暮らし。
シエルに至っては公爵令嬢で、料理など習ったことがない。
それでも――。
「レオンのために、ちゃんと作らなきゃ」
ルナが、真剣な表情で言った。
いつものツンデレ少女の面影はなく、ただ純粋に、大切な人を想う少女の顔がそこにあった。
「……そうね」
エリナが頷く。
その黒曜石の瞳には、ただ誰かを想う温かさが揺れる。
「レオンは、私たちのために命を懸けてくれた。今度は、私たちがレオンを支える番よ」
ミーシャの言葉に、全員が頷いた。
「じゃあ……も、盛り付けだけでも頑張りましょ?」
シエルが不安げな顔で、作り笑いを浮かべる。
四人の少女たちは、不器用ながらも、精一杯の愛情を込めて――料理に向き合った。
◇
コンコン。
昼過ぎ――扉をノックする音が響いた。
「レオン……入るわよ」
エリナの声だった。
返事をする気力もないレオンを気にせず、扉がゆっくりと開く。
そこには、少女たち四人が立っていた。
皆、どこか不安そうな、それでいて決意に満ちた表情をしている。
「あの……お昼、作ったの」
シエルが、遠慮がちに言う。
その手には、木のお盆。その上には、簡単な料理が乗っていた。
目を引いたのは――焦げた肉だった。
真っ黒に焦げた、もはや炭に近い何か。
そして、不器用にガタガタに切られた野菜の煮物。大きさがバラバラで、煮込み時間も怪しい微妙な見た目をしている。
お世辞にも、美味しそうとは言えなかった。
「あ、あの……私たち、料理とか、あんまり得意じゃなくて……」
ルナが、真っ赤な顔で言い訳する。
いつもの勝ち気な表情はどこへやら、今は恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいの顔をしている。
「ごめんなさいね。もっと美味しく作れればよかったんだけど」
ミーシャも、珍しく申し訳なさそうにうつむく。
いつもの余裕ある笑みはなく、純粋に落ち込んでいるようだった。
「……食べなきゃ体に悪いわ。食べてよ?」
エリナが、ぶっきらぼうに言った。
その顔は、少し赤い。彼女なりに、精一杯の優しさを込めているのだろう。
レオンは、ゆっくりと体を起こした。
四人の少女たちを見る。
皆、心配そうな、それでいて温かい眼差しを向けている。
レオンの胸に、温かいものが込み上げてきた。
ああ――。
この子たちは僕のために不器用に、必死に。
誰も料理なんてできないのに、それでも僕のために。
「……ありがとう」
声が、震えた。
お盆を受け取り、震える手でフォークを握る。
焦げた肉を、口に運ぶ。
硬い。
そして、苦い。
正直、料理としては失敗作だろう。
だけど――。
「美味い……」
涙が、こぼれた。
こめられた気持ちが、嬉しくて。
自分のことを想ってくれる人がいることが、嬉しくて。
自分は一人じゃない。こんなにも、自分のことを想ってくれる仲間がいる。
スキルを失っても、力を失っても――この絆だけは、失われていない。
「レオン……!」
少女たちが、ベッドの周りに集まってくる。
「泣かないで……」
シエルが、そっとレオンの手を握る。
その手は温かくて、優しかった。
「私たちがいるから……」
ルナが、涙目で言う。
いつものツンデレはどこへやら、今は純粋に心配する少女の顔だった。
「レオンは一人じゃないんだから……」
ミーシャが、優しく微笑む。
それは計算された聖女の笑みではなく、心からの笑顔だった。
「……私たちを、信じて」
エリナが、静かに言った。
その黒曜石の瞳には、強い決意が宿っている。
優しい言葉が、レオンを包み込む。
温かさが、胸に満ちていく。
レオンは涙を拭いながら、焦げた肉を――そして、ガタガタに切られた野菜を、一つ残らず食べた。
こんなに心にしみる料理は、今まで食べたことがない。
どんな高級料理よりも、どんな名店の味よりも――この不格好な料理が、何よりも美味しかった。
温かい。
心が、温かい。
カインは「役立たずは追放」と言った。
でも、この子たちは違う。
力があろうとなかろうと、スキルがあろうとなかろうと――ただ、自分という存在を大切にしてくれる。
それが、どれほど尊いことか。
それで、どれほど救われることか。
未来を視る力を失っても――この絆があれば、きっと道は開けるはずだ。
自分にだって、できることがきっとある。
今は道が見えないけど、絆があればきっと道は開けるのだ。
39
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった
仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる