2 / 56
第1章 夢幻神社の可愛い娘
ここは夢幻神社
しおりを挟む
我輩の視界いっぱいに、薄暗くて埃っぽい板張りの部屋が広がった。正面には、外へと出入りする木の扉がある。
一体、ここはどこだろう? どう見ても夢幻洞ではないようだが······
我輩は鼻をひくつかせた。なんて汚れた空気だろう。夢幻洞の香気が全く感じられない。朱雀や鳳凰などの霊鳥がどこにも見当たらない。その霊鳴も聞こえなければ、気配も感じられなかった。
我輩は慌てて今来た後ろを振り返った。
······!!
無かった······ 通って来たはずの渾沌門が無かった。影も形も無かった。そこには、人間らしき木彫りの像と背後の板壁があるだけだった。
我輩は、どうしたら良いか解らず、途方に暮れてしまった。
渾沌門は仙界と裟婆を繋ぐ門であった。裟婆は、仙界には存在しない疫病から争いまで、ありとあらゆる苦悩が存在する穢れた世界だと仙人様がおっしゃっていたのを思い出した。すると、ここは裟婆か?
我輩は部屋に漂う気を嗅いだ。
クンクン······
空気には大量の穢れが混ざっていた。どうやら、我輩は情欲を嗅ぎ分けられるらしく、痴情に狂った穢れが1番強く臭ってくる。それらは、扉の隙間を通って外から流れてくるようだった。
獣じみた渇望、淫靡な恥辱、そして、卑猥な妄念などが気の中で乱れ狂っていた。様々なスケベ臭を嗅ぎ分けるところから、夢幻仙様は我輩のことをエロと呼ぶようになったのだ。その証拠に、我輩の首輪には仙語で「エロ」と書かれた仙宝のプレートが付いている。
我輩は、1度にたくさんのスケベ臭を嗅いで気持ち悪くなってしまった。その場で、床の上に力なくうずくまった。劣情に当てられて、我輩の霊気が弱まってしまったらしい。
しばらく、そうやって耐えていると、少しずつ淫気に慣れてきた。失った霊気は取り戻せなかったが、とりあえず再び立ち上がれるようになった。
ここでこうしていても始まらないので、我輩は扉を押して部屋の外へと出た。
外は雲1つない真っ青な秋晴れの午後だった。傾き始めた陽光が、我輩の体を黄色く染めていく。
我輩の前には石畳の道が、1本真っ直ぐに伸びていた。その先には、鳥居が立っている。石畳は参道のようだった。道の左右には、白玉の砂利が敷き詰められている。更にその両奥では、木陰を作っているたくさんの神木が、吹き抜ける秋風に葉をさざめかせていた。
どうも風がスケベな穢れを運んでくるようだった。四方八方から淫気を吹き集めてくる。ここは、夢幻洞とは比べるべくもないが、霊気が満ちている。だが、ここの周囲があまりにも穢れているので、この場所も穢れてしまっているだけだった。
我輩のいた部屋は、この霊的空間の中心だった。御神体と思われる木彫りの像は、よく見ると我輩の主である夢幻仙様とそっくりだった。扉の上には、
《神仙夢幻明神》
と彫られた額がかかっている。
《神仙夢幻明神》て夢幻仙様のことではないか?
参道に降りて、神像と額を交互に見やっていると、鳥居の方から1人の娘がやって来た······
一体、ここはどこだろう? どう見ても夢幻洞ではないようだが······
我輩は鼻をひくつかせた。なんて汚れた空気だろう。夢幻洞の香気が全く感じられない。朱雀や鳳凰などの霊鳥がどこにも見当たらない。その霊鳴も聞こえなければ、気配も感じられなかった。
我輩は慌てて今来た後ろを振り返った。
······!!
無かった······ 通って来たはずの渾沌門が無かった。影も形も無かった。そこには、人間らしき木彫りの像と背後の板壁があるだけだった。
我輩は、どうしたら良いか解らず、途方に暮れてしまった。
渾沌門は仙界と裟婆を繋ぐ門であった。裟婆は、仙界には存在しない疫病から争いまで、ありとあらゆる苦悩が存在する穢れた世界だと仙人様がおっしゃっていたのを思い出した。すると、ここは裟婆か?
我輩は部屋に漂う気を嗅いだ。
クンクン······
空気には大量の穢れが混ざっていた。どうやら、我輩は情欲を嗅ぎ分けられるらしく、痴情に狂った穢れが1番強く臭ってくる。それらは、扉の隙間を通って外から流れてくるようだった。
獣じみた渇望、淫靡な恥辱、そして、卑猥な妄念などが気の中で乱れ狂っていた。様々なスケベ臭を嗅ぎ分けるところから、夢幻仙様は我輩のことをエロと呼ぶようになったのだ。その証拠に、我輩の首輪には仙語で「エロ」と書かれた仙宝のプレートが付いている。
我輩は、1度にたくさんのスケベ臭を嗅いで気持ち悪くなってしまった。その場で、床の上に力なくうずくまった。劣情に当てられて、我輩の霊気が弱まってしまったらしい。
しばらく、そうやって耐えていると、少しずつ淫気に慣れてきた。失った霊気は取り戻せなかったが、とりあえず再び立ち上がれるようになった。
ここでこうしていても始まらないので、我輩は扉を押して部屋の外へと出た。
外は雲1つない真っ青な秋晴れの午後だった。傾き始めた陽光が、我輩の体を黄色く染めていく。
我輩の前には石畳の道が、1本真っ直ぐに伸びていた。その先には、鳥居が立っている。石畳は参道のようだった。道の左右には、白玉の砂利が敷き詰められている。更にその両奥では、木陰を作っているたくさんの神木が、吹き抜ける秋風に葉をさざめかせていた。
どうも風がスケベな穢れを運んでくるようだった。四方八方から淫気を吹き集めてくる。ここは、夢幻洞とは比べるべくもないが、霊気が満ちている。だが、ここの周囲があまりにも穢れているので、この場所も穢れてしまっているだけだった。
我輩のいた部屋は、この霊的空間の中心だった。御神体と思われる木彫りの像は、よく見ると我輩の主である夢幻仙様とそっくりだった。扉の上には、
《神仙夢幻明神》
と彫られた額がかかっている。
《神仙夢幻明神》て夢幻仙様のことではないか?
参道に降りて、神像と額を交互に見やっていると、鳥居の方から1人の娘がやって来た······
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/10:『うでどけい』の章を追加。2025/12/17の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/9:『ひかるかお』の章を追加。2025/12/16の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/8:『そうちょう』の章を追加。2025/12/15の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる