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第3章 お供え物を求めて
妲己ちゃんと1緒に夢幻神社
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湿度の低い良く乾燥した過ごしやすい陽気だった。毛をくすぐる風が心地いい。そよ風に吹き流される狐火も気持ち良さそうにしている。さっきまで、あんなに怒っていたのに、今では炎から鼻歌が聞こえてきそうなほど、軽い足取りになっている。
「妲己ちゃん、何だかご機嫌だね」
「夢幻神社に行くからね❤️」
「えっ、妲己ちゃん、夢幻神社が好きなの?」
突然、炎が激しく乱れた。柔らかかった炎の揺らめきが、ウニのように刺々しくなった。まるで、炎に刺されそうだ。
「そんな訳ないだろ! あんたって、どこまでバカなの?」
「そ、それじゃ、な、何で、喜んでるの?」
「あの神社、ジジイの木彫りがご神体でしょ。フフフ、行ったら火を着けてやろうと思ってるの❤️」
「えっ! 火をつける?」
「そうだよ。あのジジイ、あたいに挑発しやがったから、そのお返しよ。アッハッハッ!」
妲己ちゃんは、楽しそうに空間を飛び回った。ジェット機のアクロバット飛行のように乱舞している。それを見ていると、妲己ちゃんなら本当にやりかねないと思った。
さすがに、妲己ちゃんが火をつけるのを見て見ぬ振りはできない。しかし、あんなに楽しそうにしている妲己ちゃんを、止められる自信はなかった。怒らせるのは必定だし、下手をすれば、我輩まで火をつけられて、真っ黒焦げにされてしまいかねない。
不安に戦きながら考えごとをしていると、我輩達の前方に、夢幻神社の境内が見えてきた。参道の両脇に、ソメイヨシノの並木が見える。あと1月も経てば、葉を落として参道は落ち葉の海になるだろう。
この時期は神事がないので、参道には1軒の露店もでていない。参拝者も疎らであった。すれ違い様、ショーツを咥える我輩を見て苦笑したり、若い婦人などは顔を赤らめたりした。
「相変わらずしけたところだけど、なんで参拝客なんているわけ? あんなスケベの何がいいのかな。ご利益なんて性犯罪くらいしかないわよ。」
境内に入ると、やはり数は少ないが、ちらほらと参拝客の姿が認められた。
「ほら、あそこ······」
妲己ちゃんは、本殿の御神体に参拝する、2人の若い娘を指した。服装や雰囲気からすると、おそらく女子大生だろう。発育のいい体に、夢幻仙様の霊気が絡み付いている。
手の形をした霊気が、小高い胸を揉んだり、撫で回したりしている。また、スカートの中に手を突っ込んで尻を触ったり、股間を弄ったりしていた。
「あの娘達、ジジイにスケベなことをされたくてここに来てるわけ? 人間って本当にバカだよね」
我輩は何も言えなかった。何も知らない娘達に、絡みついている夢幻仙様を見ていると、同様に、何も知らない京香と絡み合っていた情魔の姿と、何も変わらないように思えてきた。
なぜ夢幻仙様は良くて、情魔は悪いのだろう?我輩には分からなかった。
「あんたも見たろ。こんな詐欺神社は、燃やしてしまった方が良いんだよ」
「······」
「あんた気づいてないでしょう。お供え物を奥の殿に奉納するということは、詐欺の片棒を担ぐことになるの」
「詐欺······わ、我輩はどうすれば······」
「もう悪い犬に片足突っ込んでるんだから、そのままでいくしかないよ」
妲己ちゃんの口調は冷ややかだった。疑うことも知らずに、悪の手先となりかけている我輩を、軽蔑している風があった。いや、これは憐憫の情だろうか。
いずれにしても、良い印象は持たれていないようだ。女の子の前で、我輩は情けなかった。
妲己ちゃんに好かれたかったが、今の我輩では無理そうだった······
「妲己ちゃん、何だかご機嫌だね」
「夢幻神社に行くからね❤️」
「えっ、妲己ちゃん、夢幻神社が好きなの?」
突然、炎が激しく乱れた。柔らかかった炎の揺らめきが、ウニのように刺々しくなった。まるで、炎に刺されそうだ。
「そんな訳ないだろ! あんたって、どこまでバカなの?」
「そ、それじゃ、な、何で、喜んでるの?」
「あの神社、ジジイの木彫りがご神体でしょ。フフフ、行ったら火を着けてやろうと思ってるの❤️」
「えっ! 火をつける?」
「そうだよ。あのジジイ、あたいに挑発しやがったから、そのお返しよ。アッハッハッ!」
妲己ちゃんは、楽しそうに空間を飛び回った。ジェット機のアクロバット飛行のように乱舞している。それを見ていると、妲己ちゃんなら本当にやりかねないと思った。
さすがに、妲己ちゃんが火をつけるのを見て見ぬ振りはできない。しかし、あんなに楽しそうにしている妲己ちゃんを、止められる自信はなかった。怒らせるのは必定だし、下手をすれば、我輩まで火をつけられて、真っ黒焦げにされてしまいかねない。
不安に戦きながら考えごとをしていると、我輩達の前方に、夢幻神社の境内が見えてきた。参道の両脇に、ソメイヨシノの並木が見える。あと1月も経てば、葉を落として参道は落ち葉の海になるだろう。
この時期は神事がないので、参道には1軒の露店もでていない。参拝者も疎らであった。すれ違い様、ショーツを咥える我輩を見て苦笑したり、若い婦人などは顔を赤らめたりした。
「相変わらずしけたところだけど、なんで参拝客なんているわけ? あんなスケベの何がいいのかな。ご利益なんて性犯罪くらいしかないわよ。」
境内に入ると、やはり数は少ないが、ちらほらと参拝客の姿が認められた。
「ほら、あそこ······」
妲己ちゃんは、本殿の御神体に参拝する、2人の若い娘を指した。服装や雰囲気からすると、おそらく女子大生だろう。発育のいい体に、夢幻仙様の霊気が絡み付いている。
手の形をした霊気が、小高い胸を揉んだり、撫で回したりしている。また、スカートの中に手を突っ込んで尻を触ったり、股間を弄ったりしていた。
「あの娘達、ジジイにスケベなことをされたくてここに来てるわけ? 人間って本当にバカだよね」
我輩は何も言えなかった。何も知らない娘達に、絡みついている夢幻仙様を見ていると、同様に、何も知らない京香と絡み合っていた情魔の姿と、何も変わらないように思えてきた。
なぜ夢幻仙様は良くて、情魔は悪いのだろう?我輩には分からなかった。
「あんたも見たろ。こんな詐欺神社は、燃やしてしまった方が良いんだよ」
「······」
「あんた気づいてないでしょう。お供え物を奥の殿に奉納するということは、詐欺の片棒を担ぐことになるの」
「詐欺······わ、我輩はどうすれば······」
「もう悪い犬に片足突っ込んでるんだから、そのままでいくしかないよ」
妲己ちゃんの口調は冷ややかだった。疑うことも知らずに、悪の手先となりかけている我輩を、軽蔑している風があった。いや、これは憐憫の情だろうか。
いずれにしても、良い印象は持たれていないようだ。女の子の前で、我輩は情けなかった。
妲己ちゃんに好かれたかったが、今の我輩では無理そうだった······
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