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第3章 お供え物を求めて
妲己ちゃん夢幻仙様に捕まる
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「ちょっと、待ってて。あたい、木彫りに火をつけてくる」
妲己ちゃんは、何も知らずに体を弄ばれる娘達の頭上を通り越して、本殿の中の木彫りへと向かった。やはり、妲己ちゃんは本気だった。フワフワと足取りが軽い。
だが、妲己ちゃんが本殿に入った時だった。娘達の体と戯れていた夢幻仙様の霊気が、突然、妲己ちゃんに襲いかかった。
あっ!······
一瞬の出来事だった。娘達の体から離れた霊気が、妲己ちゃんに巻きついた。と同時に、夢幻仙様の霊気と妲己ちゃんの姿が、音もなく消えてしまった。
我輩は狐につままれたようだった。本殿の入口に妲己ちゃんの姿はなく、薄暗い内部には、参拝客を睨む厳つい顔をした、夢幻仙様の木彫り像があるだけだった。
状況から察するに、妲己ちゃんは夢幻仙様に捕まったようだった。どこへ連れて行かれたか分からないが、妲己ちゃんにとっては最低の状況かも知れない。
夢幻仙様は妲己ちゃんを欲しがっていた。それが、ひょんなことから計らずも実現してしまった。正反対だろう夢幻仙様と妲己ちゃんの心中がなんとなく想像ついた。
夢幻仙様の喜びはいかほどだろう。妲己ちゃんの嫌悪感はどれ程だろう。早くも妲己ちゃんは夢幻仙様の慰み物にされて、屈辱と嫌悪に焼き焦がされているのかもしれない。
女子大生達が本殿を後にした。娘達の体中に、霊気の余韻がこびりついている。良くない徴だ。あの娘達、これからどこへ行くか知らないが、性的不幸に会うだろう。
散々、体を遊ばれ、おまけに性的不幸の徴まで貰ったのも知らずに、娘達はおしゃべりを楽しみながら、来た道を戻っていった。
ワンッ、ワンッ、ワンッ!!······
我輩は吠えた。何度も吠えた。しかし、妲己ちゃんの返事はなかった。吠えた時、口を開けたので、加えていたお供え物を地面に落としてしまった。風が葉をざわめかせながらさらっていく。
フワリと舞い上がったショーツは、慌てふためく我輩を嘲笑うかのように、宙に吹かれていった。我輩は必死になって追った。やがて、本殿の裏手に根を張った、大きな桃の木の枝に引っ掛かった。
ワンッ、ワンッ!
ショーツの引っ掛かった枝は、我輩のはるか頭上にあり、跳び跳ねてもどうやっても取り返すことは出来そうになかった。
ジャリ······
背後で砂利を踏む音が聞こえた。ハッとして、我輩は振り返った。そこには、宿敵の情魔、いや、情魔と顔つきがそっくりな少年が立っていた。
「何してるんだい、わん公?」
我輩は、間抜けにも口を開けたまま、その場で呆けてしまった。情魔と瓜二つなのに、淫らで卑猥な雰囲気が、微塵も感じられなかった。
その表情も、酷薄どころか今日の秋空のように爽やかである。
少年は我輩の目線の先に目をやって、少し顔を赤らめた。
「お前、あれが欲しいのかい? どう見ても、女性用の下着じゃないか」
ワンッ、ワンッ。ワオーン!
我輩は樹の幹に前肢をかけて立ち上がり、ガリガリと幹を引っ掻いた。いかにも、樹に登りたがっているように見えた。
「分かったよ、わん公。俺が取ってやるよ」
少年は手を真っ直ぐ上に伸ばして爪先立ちになり、我輩の大切なお供え物を樹の枝から取ってくれた。我輩はまるでご馳走を貰ったように、ショーツにかぶりついた。そして、少年に向けて尻尾を振り立てて感謝を示した。
「全く、変なわん公だな。まるでスケベ犬だ」
少年は我輩に苦笑いを向けると、境内の入口にある鳥居の方へ歩いていった。
1時はどうなるかと思ったが、少年のお蔭で無事お供え物が戻ってきた。我輩は、喜び勇んでこの先にある奥の殿へかけていった······
妲己ちゃんは、何も知らずに体を弄ばれる娘達の頭上を通り越して、本殿の中の木彫りへと向かった。やはり、妲己ちゃんは本気だった。フワフワと足取りが軽い。
だが、妲己ちゃんが本殿に入った時だった。娘達の体と戯れていた夢幻仙様の霊気が、突然、妲己ちゃんに襲いかかった。
あっ!······
一瞬の出来事だった。娘達の体から離れた霊気が、妲己ちゃんに巻きついた。と同時に、夢幻仙様の霊気と妲己ちゃんの姿が、音もなく消えてしまった。
我輩は狐につままれたようだった。本殿の入口に妲己ちゃんの姿はなく、薄暗い内部には、参拝客を睨む厳つい顔をした、夢幻仙様の木彫り像があるだけだった。
状況から察するに、妲己ちゃんは夢幻仙様に捕まったようだった。どこへ連れて行かれたか分からないが、妲己ちゃんにとっては最低の状況かも知れない。
夢幻仙様は妲己ちゃんを欲しがっていた。それが、ひょんなことから計らずも実現してしまった。正反対だろう夢幻仙様と妲己ちゃんの心中がなんとなく想像ついた。
夢幻仙様の喜びはいかほどだろう。妲己ちゃんの嫌悪感はどれ程だろう。早くも妲己ちゃんは夢幻仙様の慰み物にされて、屈辱と嫌悪に焼き焦がされているのかもしれない。
女子大生達が本殿を後にした。娘達の体中に、霊気の余韻がこびりついている。良くない徴だ。あの娘達、これからどこへ行くか知らないが、性的不幸に会うだろう。
散々、体を遊ばれ、おまけに性的不幸の徴まで貰ったのも知らずに、娘達はおしゃべりを楽しみながら、来た道を戻っていった。
ワンッ、ワンッ、ワンッ!!······
我輩は吠えた。何度も吠えた。しかし、妲己ちゃんの返事はなかった。吠えた時、口を開けたので、加えていたお供え物を地面に落としてしまった。風が葉をざわめかせながらさらっていく。
フワリと舞い上がったショーツは、慌てふためく我輩を嘲笑うかのように、宙に吹かれていった。我輩は必死になって追った。やがて、本殿の裏手に根を張った、大きな桃の木の枝に引っ掛かった。
ワンッ、ワンッ!
ショーツの引っ掛かった枝は、我輩のはるか頭上にあり、跳び跳ねてもどうやっても取り返すことは出来そうになかった。
ジャリ······
背後で砂利を踏む音が聞こえた。ハッとして、我輩は振り返った。そこには、宿敵の情魔、いや、情魔と顔つきがそっくりな少年が立っていた。
「何してるんだい、わん公?」
我輩は、間抜けにも口を開けたまま、その場で呆けてしまった。情魔と瓜二つなのに、淫らで卑猥な雰囲気が、微塵も感じられなかった。
その表情も、酷薄どころか今日の秋空のように爽やかである。
少年は我輩の目線の先に目をやって、少し顔を赤らめた。
「お前、あれが欲しいのかい? どう見ても、女性用の下着じゃないか」
ワンッ、ワンッ。ワオーン!
我輩は樹の幹に前肢をかけて立ち上がり、ガリガリと幹を引っ掻いた。いかにも、樹に登りたがっているように見えた。
「分かったよ、わん公。俺が取ってやるよ」
少年は手を真っ直ぐ上に伸ばして爪先立ちになり、我輩の大切なお供え物を樹の枝から取ってくれた。我輩はまるでご馳走を貰ったように、ショーツにかぶりついた。そして、少年に向けて尻尾を振り立てて感謝を示した。
「全く、変なわん公だな。まるでスケベ犬だ」
少年は我輩に苦笑いを向けると、境内の入口にある鳥居の方へ歩いていった。
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