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第一章:追放編
005:嫌悪(受付嬢視点)
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(……やってやりました)
去っていく〈呪術士〉の男の背中を見送り、消えたのを確認してから、女―――冒険者組合依頼斡旋窓口の新人受付嬢であるエリカ・マクガレンは小さくほくそ笑んだ。
(あの不気味な男が消えてくれました。神に仇なす穢らわしい〝異能〟持ちの男を追い出せたのです。ああ…! 神よ、あなたの加護に感謝します……)
ラグナ・エヴァンス。
〈呪術士〉という不気味な〝天職〟を授かり、何の貢献もせぬまま一年もの間組合に居座り続けた厄介者。
組んでいる班の面々とも不仲で、機会さえあればいつでも追い出したいと全員が愚痴をこぼすほどに嫌われている男。
〝天職〟が役立たずなのかどうかは知らないが、仲間のために尽力する事もなく、ただそこに突っ立っているだけの邪魔者だという噂を何度も耳にし、冒険者や組合の職員達の一部でも毛嫌いされていた。
エリカも例に違う事なく、顔を見る前からその男を嫌悪し、一方的に憎んでいた。
何か問題を起こし次第絶対に追い出してやる、と心に決めていたのだ。
そして今日、エリカはついに行動を起こした。
普段例の男の担当をしている先輩受付嬢が不在であるのをいい事に、自分が代わりを買って出て通告してみせたのである。それも、周到に用意をして。
本来の短刀が不在の日を調べ、代わりの担当が誰になるのかを調べ、その代わりも誰になるのかも調べ。
グナがいつ来るのかを計算し、担当する者が誰もいなくなるように調節―――具体的には少し手を加えた差し入れをしたり、嘘の情報を与えて席を外させたり。
他の冒険者達の迷惑にならないよう知恵を絞り、努力に努力を重ねてついに計画を成就させたのである。
(もっと渋るものだと思っていましたが、思いの外あっさり引き下がりましたね。まぁその方が好都合ですが……気が変わって戻ってくる前に上層部に向けた報告書でも作成しておきましょうか。あの男が二度と戻ってこれないようにしておきましょう)
自分の主観と印象を書き留めた報告書を提出しておけば、組合上層部もあの男に対する悪印象を持ってくれるだろう。
後からあの男が文句を言ってきても、相手にされないくらい罪状に塗れた状態にしてやればいい。元班の仲間から聞いた話に加えて、自分が多少脚色すれば問題はない。
(ふふふ…! ありがとうございます、エヴァンスさん。あなたのおかげで私は少し幸せになれます。あなたがいなくて気分は爽快。組合は厄介者がいなくなって私に感謝をする。そして上層部の覚えも良くなる……少し訂正しましょう。私は今とても幸せな気分です)
そして自分は悪党を排除した優秀な職員として記憶され、昇進が約束されるに違いない。頭の固い現組合長も左遷させられるかもしれない。
普段から口うるさく、何かにつけて小言をぶつけてくる禿頭の上司への悪態を内心でこぼしつつ、エリカはふっと笑みを滲ませる。
心なしか、周りの職員達も自分に感謝の視線を送ってきている気がする。それもそうだ、組合の敵を排除した英雄にも等しき人間になったのだから。
……感謝の念ではなく、戸惑い。何事か、と訝しんでいる視線である事に、彼女は気付いていなかった。
(こんな事なら、もっと重い罪をかぶせてもよかったかもしれませんね。そうすれば死罪になって、二度と顔を見る事もなくなったかもしれませんし……いえ、今からでもそうしましょうか? 後から発覚したことにすればいいのですしね)
本人がいない今、好き勝手に考えるエリカ。
涼しい顔で他者を貶める策略を巡らせる彼女の元に、不意に大きな人影が近づいてきた。
「―――おう、何だ? 妙に騒ついているが、何かあったのか?」
―――――――――――――――――――――――――――
20023/1/10 新人受付嬢の狂気をマシマシにしてみました。
去っていく〈呪術士〉の男の背中を見送り、消えたのを確認してから、女―――冒険者組合依頼斡旋窓口の新人受付嬢であるエリカ・マクガレンは小さくほくそ笑んだ。
(あの不気味な男が消えてくれました。神に仇なす穢らわしい〝異能〟持ちの男を追い出せたのです。ああ…! 神よ、あなたの加護に感謝します……)
ラグナ・エヴァンス。
〈呪術士〉という不気味な〝天職〟を授かり、何の貢献もせぬまま一年もの間組合に居座り続けた厄介者。
組んでいる班の面々とも不仲で、機会さえあればいつでも追い出したいと全員が愚痴をこぼすほどに嫌われている男。
〝天職〟が役立たずなのかどうかは知らないが、仲間のために尽力する事もなく、ただそこに突っ立っているだけの邪魔者だという噂を何度も耳にし、冒険者や組合の職員達の一部でも毛嫌いされていた。
エリカも例に違う事なく、顔を見る前からその男を嫌悪し、一方的に憎んでいた。
何か問題を起こし次第絶対に追い出してやる、と心に決めていたのだ。
そして今日、エリカはついに行動を起こした。
普段例の男の担当をしている先輩受付嬢が不在であるのをいい事に、自分が代わりを買って出て通告してみせたのである。それも、周到に用意をして。
本来の短刀が不在の日を調べ、代わりの担当が誰になるのかを調べ、その代わりも誰になるのかも調べ。
グナがいつ来るのかを計算し、担当する者が誰もいなくなるように調節―――具体的には少し手を加えた差し入れをしたり、嘘の情報を与えて席を外させたり。
他の冒険者達の迷惑にならないよう知恵を絞り、努力に努力を重ねてついに計画を成就させたのである。
(もっと渋るものだと思っていましたが、思いの外あっさり引き下がりましたね。まぁその方が好都合ですが……気が変わって戻ってくる前に上層部に向けた報告書でも作成しておきましょうか。あの男が二度と戻ってこれないようにしておきましょう)
自分の主観と印象を書き留めた報告書を提出しておけば、組合上層部もあの男に対する悪印象を持ってくれるだろう。
後からあの男が文句を言ってきても、相手にされないくらい罪状に塗れた状態にしてやればいい。元班の仲間から聞いた話に加えて、自分が多少脚色すれば問題はない。
(ふふふ…! ありがとうございます、エヴァンスさん。あなたのおかげで私は少し幸せになれます。あなたがいなくて気分は爽快。組合は厄介者がいなくなって私に感謝をする。そして上層部の覚えも良くなる……少し訂正しましょう。私は今とても幸せな気分です)
そして自分は悪党を排除した優秀な職員として記憶され、昇進が約束されるに違いない。頭の固い現組合長も左遷させられるかもしれない。
普段から口うるさく、何かにつけて小言をぶつけてくる禿頭の上司への悪態を内心でこぼしつつ、エリカはふっと笑みを滲ませる。
心なしか、周りの職員達も自分に感謝の視線を送ってきている気がする。それもそうだ、組合の敵を排除した英雄にも等しき人間になったのだから。
……感謝の念ではなく、戸惑い。何事か、と訝しんでいる視線である事に、彼女は気付いていなかった。
(こんな事なら、もっと重い罪をかぶせてもよかったかもしれませんね。そうすれば死罪になって、二度と顔を見る事もなくなったかもしれませんし……いえ、今からでもそうしましょうか? 後から発覚したことにすればいいのですしね)
本人がいない今、好き勝手に考えるエリカ。
涼しい顔で他者を貶める策略を巡らせる彼女の元に、不意に大きな人影が近づいてきた。
「―――おう、何だ? 妙に騒ついているが、何かあったのか?」
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20023/1/10 新人受付嬢の狂気をマシマシにしてみました。
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