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序章(プロローグ)
第40話 パワハラ上司は地獄に堕ちろ
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■ワッツローブ伯爵
「す、すまなかった! 謝る!」
猫人「お前が命じたと認めるんだにゃ?」
「……違う!」
猫人「…違う?」
「間違い……誤解だったんだ! 俺は、部下の報告を鵜呑みにしてしまっただけなんだ」
猫人「つまり、部下が間違った報告をしたと?」
「そ、そうなんだ、部下たちはお前…いえ、あなたを獣人だと勘違いしたようだ」
猫人「部下がミスしただけ、部下が勝手な事をしただけ?」
「そう! そうなんだ!」
猫人「自分は部下に騙されただけ?」
「そうなんだよ、いつもマヌケな部下に困らされているのだよ…」
猫人「無能な部下だと?」
「そう。まったく、無能な部下を持つと苦労する…」
だが、急に猫人は『シャー』と牙を剥いて怒りの表情をした。
なんだ? もしかして無能な部下に腹が立ったのか? 獣人、いや妖精族かもしれんが、もしかして簡単に騙せそう?
「ちっ、ちなみに、この国では獣人に人権は与えられていないが、あなた様は獣人ではない。だからこの国の法律は適用されない」
「むしろ希少種族として国王に報告し、最重要待遇するよう進言しよう」
俺は必死で言葉を繋ぐ。これまで蔑んでいた獣人に対し、急に卑屈な態度になった俺を見て息子のガストが目を丸くしているが、後で説明すれば納得するだろう。今は時間を稼ぐ事が必要だ。
猫人「国王に報告とか、余計な事はしなくていいにゃ」
「なっ、なんなら爵位を授けるよう掛け合ってもいい! 貴族になれますよ! 妖精族初の貴族だ!」
猫人「そんなモノなりたくないにゃ。それより…」
「ひっ…!」
猫人から殺気が放たれるのを感じた。
「ま、待って下さい! 間違いがあった件については、賠償を払います!」
猫人「…当然にゃ」
乗ってきた! よし!
「き、金貨五千枚…」
猫人「金貨?」
「1万枚! 1万枚を賠償金としてお支払い致しましょう!」
猫人「金などいらないにゃ。俺が商業ギルドに魔物を売っていくら稼いでると思ってるにゃ?」
「で、では何を……もちろん、街の中ではあなたは最重要人物として丁重に取り計らうよう命じておきます!」
猫人「いらんにゃ。賠償はお前の命で払ってもらうにゃ」
「そっ! 何故ですか? 多少の行き違いはあったが、誤解だったのです。誤解は訂正し、謝罪いたします! 部下たちにもきっちり言い聞かせ、罰を与えます! 賠償金も支払います!」
だが、猫人の毛は逆だったまま、殺気は収まらない。
「は反省して謝罪し罪も償うと言っている相手を許さないなんて、何故ですか?!」
猫人「それは、お前が気に入らにゃいからにゃ! 部下の勘違い? 報告が間違ってた? ヒショが勝手にやった? 自分で命じておきながら、部下にミスの責任を押し付ける上司が俺は一番嫌いにゃんだよ!」
猫人の殺気が強まる。その迫力に気を失いそうになるがなんとか堪えた。
猫人「命じたのはお前、いや、責任者はお前でFAだにゃ?」
「えふえ…?」
猫人「…間違いないにゃ?」
「…がうんです、誤解です、そんなつもりじゃなかったんです…!」
猫人「どんなつもりにせよ、たくさんの部下がお前の命令で死んだにゃ。部下の判断ミスにせよ、報告間違いにせよ、その責任を取るのがお前の立場にゃろ!?」
「しゃ、謝罪と賠償を…」
猫人「お前は、俺を殺せと命じた。誰かを殺そうとする者は、自分が殺される覚悟をするべきにゃ」
「そんなつもりはなかったんだ……そっ、そうだ、私の代わりにそこにいる息子を処刑していい! 本当は私じゃなく息子が命令したんだ! 私は知らなかったんだ!」
ガスト「父上! 何を! 私は関係ないでしょう! 私は昨日この街に帰ってきたばかりなのに!」
猫人「…お前、本当に最低の奴だにゃ…」
「私は領主だ! 私が居なくなったら街の治世がっ、街が混乱するぞ!」
猫人「そんなの俺の知った事ではないにゃ。むしろ、息子に後を継がせればいいにゃろ」
「……くそがっ! ファイラーランス!」
俺はこっそり分割詠唱していた火槍を猫人に向けて放った。グダグダ言い訳をして時間を稼いでいたのはこのためだったのだ。
懐柔などやはりする気にはなれん! ならば殺してしまえ! かつて戦争で獣人共を蹂躙し伯爵の地位を得た、その実力を思い知るがいい!
+ + + +
■カイト
「お前が気に入らにゃいからにゃ!!」
俺は思わず叫んでいた。
十余年の森の中の孤独で穏やかな生活で大分心の傷は癒えたが、それでもやはり、日本でサラリーマン生活をしていた時の、パワハラクズ上司に磨り潰されるように生活していた記憶がなくなったわけではない。思い出せばとても不愉快になる。
だいたい、出世するのは『手柄は自分のモノ、ミスは部下のせい、上に取り入り下にモラハラパワハラを行う』そんな人物なのだ。この伯爵を見ているとそれを思い出してしまう。そして、この伯爵は事実その通りの人物であった。鑑定結果にそのように出ていたのである。『パワハラモラハラで成り上がった者』と。伯爵は失敗はすべて部下に押し付け切り捨て、手柄は部下のものであっても自分のモノだと上に報告し、伯爵の地位までのし上がってきたのだ。
まぁ多かれ少なかれ出世している者などというのは、そのような者ばかりなのである。(そういうのは地球でも異世界でもあまり変わらないだろう。)
パワハラクズ上司は全員地獄に堕ちろ! 前世の日本で何度も呟いた呪いの言葉である。
日本でサラリーマンをしていた時は金のためにずっと堪えていたが、異世界に来てまで堪える気はない。
クズにはお仕置きを…地獄へ旅立ってもらうべきだろう。
などと考えていたところ、色々必死な様子で言い訳していた眼前のワッツローヴ伯爵が突然立上がり、こちらに向け魔法を放ってきた。
「す、すまなかった! 謝る!」
猫人「お前が命じたと認めるんだにゃ?」
「……違う!」
猫人「…違う?」
「間違い……誤解だったんだ! 俺は、部下の報告を鵜呑みにしてしまっただけなんだ」
猫人「つまり、部下が間違った報告をしたと?」
「そ、そうなんだ、部下たちはお前…いえ、あなたを獣人だと勘違いしたようだ」
猫人「部下がミスしただけ、部下が勝手な事をしただけ?」
「そう! そうなんだ!」
猫人「自分は部下に騙されただけ?」
「そうなんだよ、いつもマヌケな部下に困らされているのだよ…」
猫人「無能な部下だと?」
「そう。まったく、無能な部下を持つと苦労する…」
だが、急に猫人は『シャー』と牙を剥いて怒りの表情をした。
なんだ? もしかして無能な部下に腹が立ったのか? 獣人、いや妖精族かもしれんが、もしかして簡単に騙せそう?
「ちっ、ちなみに、この国では獣人に人権は与えられていないが、あなた様は獣人ではない。だからこの国の法律は適用されない」
「むしろ希少種族として国王に報告し、最重要待遇するよう進言しよう」
俺は必死で言葉を繋ぐ。これまで蔑んでいた獣人に対し、急に卑屈な態度になった俺を見て息子のガストが目を丸くしているが、後で説明すれば納得するだろう。今は時間を稼ぐ事が必要だ。
猫人「国王に報告とか、余計な事はしなくていいにゃ」
「なっ、なんなら爵位を授けるよう掛け合ってもいい! 貴族になれますよ! 妖精族初の貴族だ!」
猫人「そんなモノなりたくないにゃ。それより…」
「ひっ…!」
猫人から殺気が放たれるのを感じた。
「ま、待って下さい! 間違いがあった件については、賠償を払います!」
猫人「…当然にゃ」
乗ってきた! よし!
「き、金貨五千枚…」
猫人「金貨?」
「1万枚! 1万枚を賠償金としてお支払い致しましょう!」
猫人「金などいらないにゃ。俺が商業ギルドに魔物を売っていくら稼いでると思ってるにゃ?」
「で、では何を……もちろん、街の中ではあなたは最重要人物として丁重に取り計らうよう命じておきます!」
猫人「いらんにゃ。賠償はお前の命で払ってもらうにゃ」
「そっ! 何故ですか? 多少の行き違いはあったが、誤解だったのです。誤解は訂正し、謝罪いたします! 部下たちにもきっちり言い聞かせ、罰を与えます! 賠償金も支払います!」
だが、猫人の毛は逆だったまま、殺気は収まらない。
「は反省して謝罪し罪も償うと言っている相手を許さないなんて、何故ですか?!」
猫人「それは、お前が気に入らにゃいからにゃ! 部下の勘違い? 報告が間違ってた? ヒショが勝手にやった? 自分で命じておきながら、部下にミスの責任を押し付ける上司が俺は一番嫌いにゃんだよ!」
猫人の殺気が強まる。その迫力に気を失いそうになるがなんとか堪えた。
猫人「命じたのはお前、いや、責任者はお前でFAだにゃ?」
「えふえ…?」
猫人「…間違いないにゃ?」
「…がうんです、誤解です、そんなつもりじゃなかったんです…!」
猫人「どんなつもりにせよ、たくさんの部下がお前の命令で死んだにゃ。部下の判断ミスにせよ、報告間違いにせよ、その責任を取るのがお前の立場にゃろ!?」
「しゃ、謝罪と賠償を…」
猫人「お前は、俺を殺せと命じた。誰かを殺そうとする者は、自分が殺される覚悟をするべきにゃ」
「そんなつもりはなかったんだ……そっ、そうだ、私の代わりにそこにいる息子を処刑していい! 本当は私じゃなく息子が命令したんだ! 私は知らなかったんだ!」
ガスト「父上! 何を! 私は関係ないでしょう! 私は昨日この街に帰ってきたばかりなのに!」
猫人「…お前、本当に最低の奴だにゃ…」
「私は領主だ! 私が居なくなったら街の治世がっ、街が混乱するぞ!」
猫人「そんなの俺の知った事ではないにゃ。むしろ、息子に後を継がせればいいにゃろ」
「……くそがっ! ファイラーランス!」
俺はこっそり分割詠唱していた火槍を猫人に向けて放った。グダグダ言い訳をして時間を稼いでいたのはこのためだったのだ。
懐柔などやはりする気にはなれん! ならば殺してしまえ! かつて戦争で獣人共を蹂躙し伯爵の地位を得た、その実力を思い知るがいい!
+ + + +
■カイト
「お前が気に入らにゃいからにゃ!!」
俺は思わず叫んでいた。
十余年の森の中の孤独で穏やかな生活で大分心の傷は癒えたが、それでもやはり、日本でサラリーマン生活をしていた時の、パワハラクズ上司に磨り潰されるように生活していた記憶がなくなったわけではない。思い出せばとても不愉快になる。
だいたい、出世するのは『手柄は自分のモノ、ミスは部下のせい、上に取り入り下にモラハラパワハラを行う』そんな人物なのだ。この伯爵を見ているとそれを思い出してしまう。そして、この伯爵は事実その通りの人物であった。鑑定結果にそのように出ていたのである。『パワハラモラハラで成り上がった者』と。伯爵は失敗はすべて部下に押し付け切り捨て、手柄は部下のものであっても自分のモノだと上に報告し、伯爵の地位までのし上がってきたのだ。
まぁ多かれ少なかれ出世している者などというのは、そのような者ばかりなのである。(そういうのは地球でも異世界でもあまり変わらないだろう。)
パワハラクズ上司は全員地獄に堕ちろ! 前世の日本で何度も呟いた呪いの言葉である。
日本でサラリーマンをしていた時は金のためにずっと堪えていたが、異世界に来てまで堪える気はない。
クズにはお仕置きを…地獄へ旅立ってもらうべきだろう。
などと考えていたところ、色々必死な様子で言い訳していた眼前のワッツローヴ伯爵が突然立上がり、こちらに向け魔法を放ってきた。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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