花屋の娘は、王妃の夢を見る【真実の愛は罪か否か 外伝】

KAORU

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プロローグ ”或る愛の輝き”

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 その少女は、幼い頃からある話を聞かされて育った。

 祖母の語る話は、まだ無垢のままの少女の心に深く残る。
 
 煌びやかな貴族社会。
 素敵なドレスに、豪華な食事。
 多くの人に傅かれ、贅を尽くした生活。
 そして、隣には国民の憧れである王子様。
 見目麗しい男性に愛される幸せ。

 そうして、物語の主人公は、女性の最高位である王妃にまで昇り詰める。
 見下ろせば、自身を称え、歓喜する人々の笑顔。
 最高の幸せを手にした瞬間の喜び。


 なんて素敵なお話だろう。
 きっと祖母も、この話が大好きなのだろう。こうして何度も孫に聞かせるのだから。

 夢見がちな少女は、その話をもとに想像を膨らませた。
 現実の自分には、到底起こりえない奇跡。
 話の中の王妃に憧れ、もし自分がそうなったら、と想像すれば、不思議と気分は高揚する。

 大人になっても、そんな空想好きは変わらず、高じて彼女は一冊の本を書いた。

 祖母の話を基にした創作物。
 少女の頃の空想を、娯楽用に形にした大衆文学。

 【或る愛の輝き】、物語にはそう名付けた。
 誰もが夢を見ることは自由だと伝えたい、そんな心の宝物のような空想をたくさんの人と分かち合いたい、そう願って。

 ただ、子供の頃の憧れを、誰かと共有したかった。
 それだけだった。

 ―― 自身の処女作が、世間を大きく騒がせ、発売禁止措置を受けるなど、その時は想像だにしていなかった。



 彼女は朧気な記憶の奥底に、祖母が寝物語の最後に必ず言っていた言葉を思い出す。
 
 
『身の丈に合わない幸せは、夢を見るくらいがちょうどいいの。決して、その手に望んではいけないのよ』


 以後、その作家が書いた新しい物語は、発表されていない。

 


___________________________________________

このお話は、【真実の愛は罪か否か】の外伝となっております。
前シリーズを読んでいなくても大丈夫なように構成するつもりです。

すでに読んでいただいている方には。
シリーズの中で結構重要な【或る愛の輝き】という小説は、いったいどんなものだったのか、また、作られた経緯はなんだったのか。
そんなお話になる予定です。

未読の方も。既読の方も。
よろしければ前作もチラリと覗いていただけると大変うれしいです。


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