【完結】婚約破棄された娼婦を隣国の王子が溺愛するなんて聞いたことがありません！

第三章 氷の渓谷編

【番外編】酒豪たるもの・後編▼

「っや、あ……ノア…♡」

嫌がるどころか誘うような声音で自ら腰を振る。これがあのお淑しとやかなリゼッタだというから驚きだ。彼女のこんな姿を見たら、耐性のないウィリアムあたりは鼻血を流して三日間ぐらい寝込むだろう。

「あ、そこいいの…ぐりぐりしてっ、もっと」
「ここ？」
「ん、そう、あ、そこっ……出ちゃうっ」
「やらしいなぁ、リゼッタ」

大きく震えて潮を噴いたリゼッタを抱き抱えてキスをした。ほのかにアルコールの香る吐息に自分まで酔いそうになる。酒の力を借りれば、通常では目にすることの出来ない彼女のおねだりまで見ることが出来るのだから、素晴らしい。

何度も口付けながら、ゆるく胸を揉むと堪らないように、上に乗った腰がまた動き出した。

「もう一回する？」
「したい……ノア、ちょうだい…？」
「うわー…その顔、すごく好き」

グチュっと音を立てて飲み込むとすぐ早く早くと腰を振るので、もったいなくて腰を掴んで止めた。

「っあ…なんで？もっとして♡いっぱいトントンして♡」
「ん、普段もたまにはそう言ってくれたら良いのに」
「え？」
「……こっちの話、」

深く突くとキュッと絞めつける身体が愛おしい。

ピンと立った先端を擦りながら腰を打ち付けると、気持ちが良かったのかまた震えて彼女は達した。バツが悪そうに下唇を噛んで上目遣いに見上げるのは反則級だと思う。彼女が自分の婚約者ではなくて、娼館時代のようにただの金銭で結ばれた関係だったら、それこそ気絶するぐらいには滅茶苦茶にしてしまいたかった。

「ノア…切ないの、キスして良い？」
「いつでも歓迎だよ」

遠慮がちに重ねられた唇に応える。
彼女の精一杯のキスは、幼稚園児の練習のようで可愛らしい。押し付けられる柔らかな唇を舐め上げて、身体ごと押し倒した。

「……っん」

そのまま、胸元から首筋にかけて小さく吸っていけば敏感な彼女の身体はピクリと反応する。この愛らしい生き物を生涯自分だけのものにしたい。そう思う一方で、深まりすぎた愛情は多少の歪曲を経て、彼女が他の男の手に落ちて身を委ねるのを傍観してみたいなんて思ってしまうこともある。もちろん、相手の男はその後消し去ることを前提として。

つまるところ、リゼッタは自分にとって最高の女優のようなもの。永遠に恋焦がれていたいし、届いたと思っても遥か遠くて涼しげに笑っていてほしい。矛盾は承知の上で、そんな夢を抱えていた。


「君には本当に敵わない、」

首を傾げる彼女の将来が天使でも悪魔でもどちらでも良い。愛なんて言葉じゃ足りないから、いつだって全身で伝え続ける。たとえその声が返って来なくなっても、彼女が腕の中に居る限りは自分にとっての天国。

明日になって、脱ぎ散らかした服を拾い上げながら、少しだけ不機嫌そうに眉を顰ひそめるであろうリゼッタの姿を想像する。それすらも幸福な光景に思えた。