リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第10章〜海竜編〜

知った、あの日の真実

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私達へ優しく微笑む美女。
目の前で私達に微笑む美女が、リグラルドセル大陸に生きる者の全ての母。


「・・ニュクス、様?」
「ふふ、えぇ、そうよ?ディアちゃん、そして貴方達も私に会いに良く来てくれたわね?」


慈愛の眼差しで私達の事を歓迎するニュクス様。


「さぁ、まずはお茶にしましょう?お茶とお菓子を用意するから席におかけなさいな。」


ニュクス様から席に座るよう勧められる私達。
気付けばいつの間にか、全員の分の椅子とお茶がテーブルの上に用意されていた。
驚きつつ、椅子に座る私達。


「皆んな、温かい内にお茶を召し上がれ。」


微笑むニュクス様に促され、用意されたお茶が入っているカップに口を付ける。


「・・美味しい。」


美味しさに、少しだけほっとした。


「うふふ、気に入ってくれたなら嬉しいわ。」


上機嫌なニュクス様も自分の目の前にあるカップを優雅な仕草で手に取ると、口を付ける。
目を奪われるような洗礼された仕草と、威厳。
この目の前に座る人は、本当にこの世界の母と崇められる女神なのだ。
人とは違う存在。


「・・あの、ニュクス様?なぜ、ニュクス様は私の事を呼んだのですか?」


まず問いかけたのは私。
そんな私に、ニュクス様は口元を緩める。


「今日は、貴方に伝えなきゃいけない大切な事があったから呼んだの。それに、自分の愛し子に会いたいと思うのは可笑しい事かしら?」
「それも、可笑しいと思います。」


そもそも、なぜ私なの?
この世界の全ての母と呼ばれるニュクス様が、私の事をなぜ愛し子と呼ぶのか。
困惑を浮かべる。


「そんなにも、私がディアちゃんの事を愛し子と呼ぶのが不思議かしら?」
「正直に言えば、そうです。」


こくりと頷く。


「あら、とても正直ね。」


ころころと、楽しげにニュクス様は笑う。


「でも、私がディアちゃんの事を愛し子と呼ぶのは当たり前だと思うの。だって、今のディアちゃんの身体を頼まれて作ったのは私なんだもの。」
「は・・?」


頼まれて、身体を作った?


「ちょ、ちょっと待ってください!」
「うん?」
「頼まれて私の身体を作ったって、一体、どう言う意味ですか!?」


意味が分からない。


「ディアちゃん、いえ、今は弥生ちゃんと言うべきかしら?」


おっとりと、ニュクス様は首を傾げる。


「っっ、」


はっと息を呑む。
・・その名前を、どうして。


「ニュクス様、は、全てを知って・・?」
「えぇ、知っているわ。日本んで生きてきた貴方の事を。」


ニュクス様が頷く。


「弥生ちゃんの身体は、あの日に命が尽きた。その事は、何よりも自分が理解しているわね?」
「・・はい。」


あの日。
私が学校の屋上から飛び降りた日の事だろう。


「弥生ちゃんの身体は、あの日に全ての活動を終えた。その貴方をこちらで新たな肉体を得られたのは、どうしてか疑問はなかった?」
「いえ、特には。」
「そう、弥生ちゃんの命尽きた身体から魂だけを取り出し、あちらの世界の神が私の元へ運んだのよ。リデル、貴方のお母様の願いを聞いた、あちらの世界の神が、ね?」


目を大きく見開く。


「リデルが、お母さん・・?」


口元が戦慄いた。
リデルが私のお母さんとは、どう言う事だ。


「えぇ、間違いなく、リデルは姿を変えていた貴方のお母様よ。」
「ーーーっっ、そんな!?」


愕然とする。
あの時に会ったリデルが私のお母さん?


「本当よ?貴方のお母様が娘の幸せを望み、どうにか出来ないかと日本の神に縋りついたの。」
「そんなの嘘です!!」


嘘だ。
そんなはずがない。
だって、そうでしょう?


「そんなの嘘なんですよね!私の事を憎んでいるお母さんが、そんな事をお願いする訳ないもの!」


強く拳を握る。


「どうして、お母様が弥生ちゃんの事を憎むの?」
「お母さんの命を奪ったのは私ですよ!?私が生まれていなければ、まだお母さんは生きていられたはずだわ!」
「そうね。貴方の言う通り、お母様は出産さえしなければ、その命をもう少し永らえさせていたかも知れないわね?」


カップを置くニュクス様。


「でも、なぜ、それが貴方の事を憎む事になるのかしら?」
「え?」
「ふふ、どこに自分の命が短くなると知っていながら、自らの選択で生んだ我が子を恨む母親がいるの?」


ニュクス様の瞳が細まる。
言葉を失う。
元々、身体が弱かったお母さん。
そんなお母さんの身体で、負担がかかる子供を生む事がそもそも無謀だったのだ。


「貴方の事を命懸けで生むと決めたのは、お母様。そのお母様の選んだ選択の先に、貴方にどんな責任があると言うのかしら?」
「っっ、そ、れは、」


1番、誰が悪かったのだろう?
死ぬかもしれないリスクがありながら、私を生むと選択したお母さん?
愛した妻の死を受けいられなかったお父さん?


「貴方は、お母様に望まれて生まれてきた、愛された子供よ。」


私の目から涙が零れ落ちた。
お母さんを殺してしまった私は、悪くなかったの?


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