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陛下との対面。
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久しぶりのいつものベッドの寝心地はとても良かった。
不思議なくらいこの離れはいつでもわたしが帰って来てもいいように整えられていた。
まさかアクア?
“違うよ、僕は庭だけ”
ーーそうだよね。じゃあここは誰がしたのかしら?
“…………”
ーーアクアはわかってるのね?教えてはくれないの?
“……陛下”
ーーまさか?
“あの人がどうしてそうしたのかなんて知らない。だけどティーナが出て行ってから陛下がここを常に手入れするように使用人達に言ってた”
ーーわからないわ。
“僕だってわからない。庭だって僕が手入れしてるけど、ちゃんと庭師も来てた。だから僕はティーナの野菜を守ることにしてたんだ”
ーーアクアのおかげで美味しい野菜食べられたのね?ありがとう
“どういたしまして”
ーーやっぱり育ったこの場所は落ち着くわ。
朝起きて庭の手入れをしてから離れに戻り、朝食の準備をした。
昨日の残りのスープを温めてパンと一緒に食べた。
陛下に会うにはとりあえず王城へと行かないとどうにもならない。それに離れで暮らす許可も貰わないといけないし、公爵家の両親にももう一度話さないといけない。
ーーアクアわたしとりあえず王宮へ行ってみるわ。会って貰えるか分からないけど。
“うん、ついて行く!”
久しぶりの王宮までの道、誰かに止められたり捕まるのではとドキドキしながら歩いた。
顔見知りの騎士様たちはわたしの顔を見て驚きはしたものの止まって頭を下げてくれた。
誰も止める者はいなかった。内心ホッとしながら歩を進めた。
“着いたね”
ーーうん
陛下に会うのは宰相の件から二月近く経っている。
またあの冷たい瞳でわたしをみるのかしら?
愛を求めることもないし父親だという感情はない。
「クリスティーナ様?」
わたしが王宮に入ろうとしたら流石に近衛騎士に止められた。
「突然来てごめんなさい。陛下にお会いしたいのですが謁見出来る日時を尋ねて来て欲しいの」
さすがにすぐに会えるとは思ってはいない。でも手紙では会ってもらえないかもしれない。だから直接くることで拒まれないで済むと思ったのだった。
待っている間王宮の前にある広い庭園でセリーヌ庭園とは違う花たちを愛でていた。
素人のわたしが手入れしていた庭と専属の庭師が手入れした庭は雲泥の差があった。
一人でゆっくりと楽しんでいると「中にどうぞ」と先ほどの騎士が声をかけてきた。
まさかすぐに中に入れるとは思っていなかった。そのまま案内されて連れてこられたのは陛下の執務室だった。
部屋をノックして中に入った。
目の前の陛下は忙しそうにたくさんの書類の前で執務をこなしている姿だった。いつも怖い冷たい顔しか見ていなかったが、陛下の国王として仕事をしている姿を見て、やはりこの人はこの国のトップなのだと感じた。
そこにいるだけで圧を感じ、部屋の空気もピリピリとしている。孤高の人。
この人には感情すら失くなったのではないかと思えるくらい張り詰めた空気の中にいる。
「……わたしに話があると聞いた」
突然顔を上げて書くのをやめてわたしの顔を見た。
一瞬突き刺す視線が怖くて唾を飲み込んだ。
「あっ…………あの、ですね、その……陛下は……わたしとお母様が死ぬことを望んでいたのですか?」
思わず一番聞きたかったことが口から出てしまった。
まずい、もっと後で聞けばよかったのに……今更元には戻せない。わたしは言った後に顔を引き攣らせて恐々と陛下の顔を見た。
◆ ◆ ◆
今日の夕方もう1話更新予定です
不思議なくらいこの離れはいつでもわたしが帰って来てもいいように整えられていた。
まさかアクア?
“違うよ、僕は庭だけ”
ーーそうだよね。じゃあここは誰がしたのかしら?
“…………”
ーーアクアはわかってるのね?教えてはくれないの?
“……陛下”
ーーまさか?
“あの人がどうしてそうしたのかなんて知らない。だけどティーナが出て行ってから陛下がここを常に手入れするように使用人達に言ってた”
ーーわからないわ。
“僕だってわからない。庭だって僕が手入れしてるけど、ちゃんと庭師も来てた。だから僕はティーナの野菜を守ることにしてたんだ”
ーーアクアのおかげで美味しい野菜食べられたのね?ありがとう
“どういたしまして”
ーーやっぱり育ったこの場所は落ち着くわ。
朝起きて庭の手入れをしてから離れに戻り、朝食の準備をした。
昨日の残りのスープを温めてパンと一緒に食べた。
陛下に会うにはとりあえず王城へと行かないとどうにもならない。それに離れで暮らす許可も貰わないといけないし、公爵家の両親にももう一度話さないといけない。
ーーアクアわたしとりあえず王宮へ行ってみるわ。会って貰えるか分からないけど。
“うん、ついて行く!”
久しぶりの王宮までの道、誰かに止められたり捕まるのではとドキドキしながら歩いた。
顔見知りの騎士様たちはわたしの顔を見て驚きはしたものの止まって頭を下げてくれた。
誰も止める者はいなかった。内心ホッとしながら歩を進めた。
“着いたね”
ーーうん
陛下に会うのは宰相の件から二月近く経っている。
またあの冷たい瞳でわたしをみるのかしら?
愛を求めることもないし父親だという感情はない。
「クリスティーナ様?」
わたしが王宮に入ろうとしたら流石に近衛騎士に止められた。
「突然来てごめんなさい。陛下にお会いしたいのですが謁見出来る日時を尋ねて来て欲しいの」
さすがにすぐに会えるとは思ってはいない。でも手紙では会ってもらえないかもしれない。だから直接くることで拒まれないで済むと思ったのだった。
待っている間王宮の前にある広い庭園でセリーヌ庭園とは違う花たちを愛でていた。
素人のわたしが手入れしていた庭と専属の庭師が手入れした庭は雲泥の差があった。
一人でゆっくりと楽しんでいると「中にどうぞ」と先ほどの騎士が声をかけてきた。
まさかすぐに中に入れるとは思っていなかった。そのまま案内されて連れてこられたのは陛下の執務室だった。
部屋をノックして中に入った。
目の前の陛下は忙しそうにたくさんの書類の前で執務をこなしている姿だった。いつも怖い冷たい顔しか見ていなかったが、陛下の国王として仕事をしている姿を見て、やはりこの人はこの国のトップなのだと感じた。
そこにいるだけで圧を感じ、部屋の空気もピリピリとしている。孤高の人。
この人には感情すら失くなったのではないかと思えるくらい張り詰めた空気の中にいる。
「……わたしに話があると聞いた」
突然顔を上げて書くのをやめてわたしの顔を見た。
一瞬突き刺す視線が怖くて唾を飲み込んだ。
「あっ…………あの、ですね、その……陛下は……わたしとお母様が死ぬことを望んでいたのですか?」
思わず一番聞きたかったことが口から出てしまった。
まずい、もっと後で聞けばよかったのに……今更元には戻せない。わたしは言った後に顔を引き攣らせて恐々と陛下の顔を見た。
◆ ◆ ◆
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