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2話
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「こんなところで何をしている?」
彼の冷たい視線が私を刺す。
うーん、やはり、ここでは、この言葉よね。
定番のこの一言に、フランソア様の視線が怖い。これも、定番ね。
「申し訳ございません。乗合馬車を待っておりました」
「ダイガット先輩、ビアンカ姉様を叱らないでください」
バァズは私とダイガットの結婚を知っている一人。
そして事情も知っている。
でも、ダイガットはバァズが知っているなんて知らないはず。
バァズをチラリと見たけど、すぐに私に視線を戻した。
私は、クーパー侯爵家にお世話になっている居候。
ううん、使用人だとフランソア様には思われているの。
だからダイガットが私に気軽に声をかけることも私が気軽に返事することも不満でしかない。
「ダイガット、早く馬車に乗りましょう。遅くなると予約した時間に間に合わないわ」
ダイガットの腕にフランソア様の腕が絡みついているのが見えた。
彼の腕にピタリとくっついているのはフランソア様の大きなお胸。
思わず羨ましくてジーッと見てしまう。
もちろんあの大きな胸に。
いいな、いいな、どうやればあんな大きな胸になるのかしら?
そういえばこの前読んだ小説に、胸を大きくするには恋人や旦那様にいっぱい愛されたらいいと書いてあったわ。
ダイガット様の愛はとても大きくて深いのかしら?でも愛だけであんなに大きくなれるの?
ふと自分の可愛らしい胸に手を置こうとした時。
「ビアンカ、うちの馬車がどうして迎えにきていないんだ?」
ピタリと手が固まった。
ああ、もう!みんなの前で胸を触ろうとしてたじゃない!恥ずかしい!
「………」
返事をしないといけないのに、我に返って恥ずかしくなった。
「ダイガット……さっきからビアンカ様がわたくしを睨んでいるみたい」
小さな震える声でダイガットの耳で囁くようにフランソア様が話している。しっかり胸を引っ付けて。
でも聞こえるくらいの囁きって、囁きとは言えないか………
「ビアンカっ」
ダイガットの声に怒気が少し入り混じっている。
「はいっ!あ、あの、睨んでいるのではなく、その……羨ましいなと思って(胸が)」
「まぁ、ビアンカ様ったら。ダイガットはあなたにとって主人なのよ?主人が恋人と仲良くしている姿をそんなにマジマジと見つめるなんて、あまりよろしくなくてよ?」
えー?別に羨ましくなんてないのですが……
と心の中で思っていたら、私の制服の袖をぐいぐいっと引っ張るバァズ。
「ビアンカ、僕のところの馬車が迎えにきたから一緒に送るよ」
バァズはこれ以上ここに居れば私が二人の悪意?に晒されると心配して、実はずっと前から馬車は到着していたのに、今来たかのように私に告げた。
「ダイガット先輩、これからデートなんですね?お邪魔だからビアンカ姉様は僕が送ります」
2歳年下のバァズは、可愛らしく微笑みあざとい笑顔を二人に向けた。
バァズ、自分の可愛らしさを十分に活かしているわ。思わずそのあざとさも可愛らしくて『いい子いい子』して頭を撫でてあげたくなるもの。
「……気をつけて帰れ」
ダイガットは私たちにすぐ背を向けてフランソア様と馬車に乗り込み、去って行った。
「バァズ、助かったわ」
「フランソア様って相変わらずあざといよね、アレ、全てわかってて気づかないフリしてるんだと思うよ」
「それはバァズがあざといから、あざとい人の気持ちがわかるの?」
「ビアンカ、よくわかってるね?」
「でもバァズ、あまりフランソア様には関わらないほうがいいと思うわ。彼女、けっこう策士だもの」
いろいろ仕掛けてくるから、面倒なのよね。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
今回は短めの話を投稿していく予定です。
(作者の時間の都合により)すみません^^;
いつも読んでいただきありがとうございます。
彼の冷たい視線が私を刺す。
うーん、やはり、ここでは、この言葉よね。
定番のこの一言に、フランソア様の視線が怖い。これも、定番ね。
「申し訳ございません。乗合馬車を待っておりました」
「ダイガット先輩、ビアンカ姉様を叱らないでください」
バァズは私とダイガットの結婚を知っている一人。
そして事情も知っている。
でも、ダイガットはバァズが知っているなんて知らないはず。
バァズをチラリと見たけど、すぐに私に視線を戻した。
私は、クーパー侯爵家にお世話になっている居候。
ううん、使用人だとフランソア様には思われているの。
だからダイガットが私に気軽に声をかけることも私が気軽に返事することも不満でしかない。
「ダイガット、早く馬車に乗りましょう。遅くなると予約した時間に間に合わないわ」
ダイガットの腕にフランソア様の腕が絡みついているのが見えた。
彼の腕にピタリとくっついているのはフランソア様の大きなお胸。
思わず羨ましくてジーッと見てしまう。
もちろんあの大きな胸に。
いいな、いいな、どうやればあんな大きな胸になるのかしら?
そういえばこの前読んだ小説に、胸を大きくするには恋人や旦那様にいっぱい愛されたらいいと書いてあったわ。
ダイガット様の愛はとても大きくて深いのかしら?でも愛だけであんなに大きくなれるの?
ふと自分の可愛らしい胸に手を置こうとした時。
「ビアンカ、うちの馬車がどうして迎えにきていないんだ?」
ピタリと手が固まった。
ああ、もう!みんなの前で胸を触ろうとしてたじゃない!恥ずかしい!
「………」
返事をしないといけないのに、我に返って恥ずかしくなった。
「ダイガット……さっきからビアンカ様がわたくしを睨んでいるみたい」
小さな震える声でダイガットの耳で囁くようにフランソア様が話している。しっかり胸を引っ付けて。
でも聞こえるくらいの囁きって、囁きとは言えないか………
「ビアンカっ」
ダイガットの声に怒気が少し入り混じっている。
「はいっ!あ、あの、睨んでいるのではなく、その……羨ましいなと思って(胸が)」
「まぁ、ビアンカ様ったら。ダイガットはあなたにとって主人なのよ?主人が恋人と仲良くしている姿をそんなにマジマジと見つめるなんて、あまりよろしくなくてよ?」
えー?別に羨ましくなんてないのですが……
と心の中で思っていたら、私の制服の袖をぐいぐいっと引っ張るバァズ。
「ビアンカ、僕のところの馬車が迎えにきたから一緒に送るよ」
バァズはこれ以上ここに居れば私が二人の悪意?に晒されると心配して、実はずっと前から馬車は到着していたのに、今来たかのように私に告げた。
「ダイガット先輩、これからデートなんですね?お邪魔だからビアンカ姉様は僕が送ります」
2歳年下のバァズは、可愛らしく微笑みあざとい笑顔を二人に向けた。
バァズ、自分の可愛らしさを十分に活かしているわ。思わずそのあざとさも可愛らしくて『いい子いい子』して頭を撫でてあげたくなるもの。
「……気をつけて帰れ」
ダイガットは私たちにすぐ背を向けてフランソア様と馬車に乗り込み、去って行った。
「バァズ、助かったわ」
「フランソア様って相変わらずあざといよね、アレ、全てわかってて気づかないフリしてるんだと思うよ」
「それはバァズがあざといから、あざとい人の気持ちがわかるの?」
「ビアンカ、よくわかってるね?」
「でもバァズ、あまりフランソア様には関わらないほうがいいと思うわ。彼女、けっこう策士だもの」
いろいろ仕掛けてくるから、面倒なのよね。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
今回は短めの話を投稿していく予定です。
(作者の時間の都合により)すみません^^;
いつも読んでいただきありがとうございます。
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