あなたの愛はもう要りません。

たろ

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33話

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 数日後、傷の痛みもなくなり侯爵家へ戻ることにした。

 王妃様とシャルマ夫人にお礼を述べると二人は「理由を何か作るからもう少しここにいなさい」と引き留めてくれた。

「ありがとうございます。でもずっと隠れて暮らすわけにはいきませんので」

 寂しそうに微笑む私に「アーシャが居てくれたらこんなことにはならなかったのに」と悔しそうにシャルマ夫人が私を抱きしめた。

 うん、お母様が生きてくださっていれば……多分、継母や父から逃げ出し、二人で外国で暮らしていたかもしれない。

 そうすれば継母は父を独り占めして私たちのことなんて見向きもしなかっただろう。

 父の愛情は継母にだけあるのに、私のことなんてなんとも思っていないのに、どうして私を放っておいてくれないのか……
 もう捨てた娘なんてどうでもいいだろう。
 この王宮にいる間も父が顔を出すことはなかった。

 この宮廷の中で父は国王の片腕として、財務大臣として働いている。

 忙しいだろうと思う。でも、妻が娘を怪我させた醜聞は広まっているはずだし、王妃が自分の宮で療養させてもらっていることも知っているはずなのに、なんの音沙汰もない。

 それは、捨てられた娘として当たり前のことなんだろう。

 遠くから父が無表情で淡々と歩く姿を何度か見た。

 あの目で見つめられると心まで冷えてしまう。あの人は顔だけはいいけど、感情を表に出さない。

 あんな冷たい人の何が継母は好きなのだろう。

 ふとそんなことを考えながら、部屋の中を整えた。
 ほとんどベッドで横になっていることが多かったとは言え、2週間もここで過ごさせてもらった。

 お礼に綺麗に掃除をしてここを去るつもり。

 青い薔薇が目に入る。この花はここから出すことは出来ない。

 かと言って安易に誰にでもあげてしまうこともできない。

 どうしようか………やはり殿下に返すしかない。

 まだ生き生きと咲いている青い薔薇を捨てる気にはなれない。

 仕方なく花を紙に包み殿下のいる王宮へと足を運ぶ。

 使用人に先触れを出してもらったので会いに行くことにした。

 久しぶりに足を運ぶ彼の住む王宮は記憶の中とほとんど変わっていなかった。

 護衛騎士の中には顔見知りもたくさん残っていて挨拶をするたびに「お久しぶりですね」「大きくなられて」と懐かしそうに声をかけてくださった。

 侍女達も「まあ、ビアンカ様!」と嬉しそうに声をかけてくれて、すぐに殿下の部屋へと案内された。

 そこは執務室で今仕事をしている最中だった。

「殿下は今仕事中なんですよ」

「お忙しそうなので伝言だけ残して帰ります」

 まだ扉は開けていない。今なら引き返せる。

 そうだ、私がしている仕事なんかより殿下はもっと重要で大切な仕事をされているんだった。
 いつも暇そうに私に会いにきていたからつい軽く会いにきてしまった。

 自分の甘い考えに反省しながら引き返そうとした。

「入れ」

 部屋の中から殿下の不機嫌な声が聞こえた。

「ビアンカ様、どうぞご遠慮なさらず中にお入りください」

 そう言って扉を開けてくれたのは殿下の乳母だったマリサさんだった。
 私も幼い頃、殿下と一緒に面倒をみてもらい遊んでもらった。

 母のような人。

「何帰ろうとしてるんだ?」

 不機嫌を隠そうともしない。

「お仕事中に来てしまい申し訳ございませんでした」

「マリサの前ではいつも通りでいい」
 そう言われてももう会うことはないだろうし、きちんとしないと。

「………殿下……お花をありがとうございました」

 私の腕の中にある花をじっと見つめた。彼の眉根が寄って、不機嫌な顔がさらにイラついているのがわかる。

 他人の前ではいつもニコニコ朗らかにしているくせに、いつも私の前では感情をそのまま出すんだから!少しくらい私の前では隠しなさいよ!

 多分私が気に入らず花を返しに来たと思っているのね。

 文句を言われる前に先に口を開いた。

「せっかくのお花なのですが、私、今日の午後には帰ろうと思っております」

「帰る?まだ完全には治っていないだろう?それに伯爵夫人が屋敷に戻ってしまったんだろう?今度は何をされるかわからないだろう?」

「………私なりに考えていることがありますので大丈夫です」

 そう、誰にも頼らずこれからは生きていくつもり。

 




◆ ◆ ◆

少しあらずじが変わっています。
申し訳ありません。
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