あなたの愛はもう要りません。

たろ

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87話

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 アッシュは私の顔色を見て「早めに切り上げるか」と真剣な顔をした。

「うん、逃げずに顔を出したからもう十分だわ」

「よく頑張ったな」

「やっと気持ちに整理がついたの」

 何度も悩み、迷い、心を切り捨てようとしたけど切り捨てられなかった。

 でも卒業式で泣いたおかげでスッキリした。

 もう振り返らない。

 ただ今は嫌な予感がする。
 これまで何度となく危険に曝されてきたからこそ感じる。



 アッシュと馬車に乗り込んだ。



 御者も普通の使用人にしか見えないけど実はかなり猛者の騎士。

 アッシュが心配して護衛として数人をこの馬車に忍ばせてくれていた。

 私に付いてくれているメイドも女騎士で、馬車に乗ってくれていた。アッシュの執事も騎士が変装していた。

 三人の騎士が傍に居てくれた。



「後ろからずっとついてくる馬車がいます」

 緊張が走る。

 そっと窓から外を見たが私にはわからない。でも馬車の中はただならぬ空気。

「ビアンカ、体を屈めてじっとしていろ」

「うん」

 急いで椅子から立ち、床にしゃがんで体を丸めた。

 私ができることは邪魔しないこと。出来るだけみんなの負担にならないようにしているだけしかない。

 アッシュも騎士に負けないくらい強いとお祖母様が言っていた。

 馬車のスピードが速まった。

 ガタガタとかなり揺れている。椅子に座っていたら転んでいたかもしれない。

 アッシュ達は扉のそばにいていつでも飛び出せるようにしていた。私はみんなの邪魔にならないように真ん中の床でじっとしていた。

「ビアンカ、もし敵が扉を開けようとしたら椅子の中に隠れて中から鍵を閉めろ。絶対に何があっても開けるな」

「うん、でも……」

「狙いはお前だ」

「どうして私を狙うの?アッシュ、何か知ってるの?」

「……狙っているのは……ルワン国の奴らだ」

「どうして?」

「知られてしまったんだと思う。お前が見つけたものを」

「なにを?私は何も知らないわ」

「この国に遊びに来たことが何度かあると言っただろう?」

「うん」

「お前はミリルの意地悪で山に置いてきぼりにされて迷子になったんだ。その時……お前は見つけてしまったらしい」

「??何を?」

「絶対に見つけてはいけないものだ」

「わからないわ」

「必死で捜索して見つけた時、お前の手には一輪の花が握られていたんだ。その花は、この国で絶滅させたはずの花だった。この世には出てはいけない花。
 だから、父上はお前からこの国で過ごしたその時の記憶を無理やり消したんだ」

「消す?そんなことできるの?」

「………ああ、カイさんがある国から秘薬を持ってきた……魔女が作った忘却薬……俺もまだ子供だったから聞かされていなかったが、昨日父上に呼ばれて知ったんだ」

「昨日?」

「カイさんが昨夜帰国して、うちの屋敷に来て話を聞かされた。ルワン国はあの花を栽培しようと企てているんだ。多額の富を得ることができる。
 オリソン国に昔咲いていたことも知っていて、何か手がかりがないか探し回っていた。そしてお前がその花を見つけたことを知ってしまった」

「でも記憶が消されたのなら、わからないじゃない」

「また記憶を無理やり取り戻させられたら?」

「そんなことできるの?」

「カイさん曰く、ルワン国ならお前を廃人になるまで実験して思い出させようとするだろうと言っていた」

「じゃあ、私はこれからずっと狙われるの?」

「カイさんがルワン国の組織を潰すため動いている。少し時間はかかるが、他国とも協力して必ず潰してくれると言った。だからお前の身を早く隠すつもりだった……まさかこんな早く向こうが動くとは思っていなかった」

「動きが早すぎる」

 アッシュがかなり怖い顔をしていた。

「ミリル……あいつが裏で手を回してるのかもしれない」

「ミリル殿下が?」

「ガルカッタ王国は今国内で騒動が起きている……だからミリルもオリソン国に留学してきたんだ。ミリルは昔からお前のことが気に入らないらしい。いつも意地悪ばかりしていたからな、それにあの花のことを知っているのは数人しかいない。その中の一人がミリルだ」

「私が何をしたっていうの?納戸に閉じ込めたり山に放置したり、やることが酷すぎるんじゃないかしら?」

 フェリックス様も無理やり奪って……

「あいつは自分が一番なんだ。自分より可愛がられたり、大切にされるのを許せないんだ。友人の俺がお前を可愛がったことが許せないらしい」

「……違うわ、アッシュのことを好きだから、そばに居る私が嫌いなのだと思う」

「はっ?あいつが俺のことを好き?そんな訳ないだろう?」

「だから婚約の打診をしたんだと思うわ」

「あいつが今好きなのはフェリックスだろう?もうすぐ婚約するんだぜ?」

「それは……」

「きゃっ」「うわっ」

 突然馬車が止まった。
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