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89話
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「何を勝手に抜けてビアンカのところへ行ったんだ!」
カイさんが突然ダイガットの姿を見つけ頭を叩いた。
カイさんはいつの間にか目の前に立っていた。
「ビアンカ、不安で怖かっただろう?駆けつけるのが遅くなってすまなかった」
そう言うとまたダイガットの頭をガツンと殴りつけた。
「痛いです!やめてください!俺はそもそもビアンカに会いに来ただけなんです!こんな事件に巻き込まれて……」ダイガットは腕の傷を見せた。
「ほら見てください!怪我してるんですよ?」
「お前が学校の前でうろうろと怪しい行動をしていたから、うちの騎士達が誤解してお前がビアンカを狙った奴だと思ってしまったんだ!ったく、お前のせいで時間を無駄にしたんだ」
「???」
話の内容についていけずに固まった。
「ビアンカ、すまなかった。お前を守るために待機していた護衛が、この怪しい男とその護衛を敵と間違えて捕らえてしまったんだ。その間にお前たちの乗っている馬車が狙われてしまった。ほんと、こいつ、本当は敵なのかと思うくらい、敵のために動きやがって!」
そう言うとまたさらに殴りつける。
「痛いですってば!
俺は、ビアンカの住む屋敷に会いに行っても追い返されたから、どうにかして会おうと考えていたら、今日が卒業パーティーだと知って学校の門で待っていただけだ」
「何人の護衛をつけているんだ?怪しすぎるだろう?」
「この国は俺の住む国じゃないから何かあった時のために護衛を多めに雇ったんだ。なぜか侯爵家の者たちが、俺の行動を監視していたから、対抗するためだったんだ」
「お前が碌でもない奴だと知っているからだろう。
今夜に限って侯爵家は護衛を減らしてたんだ。俺たちが代わりに見張ることになっていたからな。俺が急きょ他の用事ができて遅れて学校に着いたら、騎士たちとダイガットが揉めていたから驚いたぜ」
「俺の顔を見て悪人に間違えるなんて失礼ですよ!」
「要するにダイガットのせいで助けが遅くなったと言うの?」
「違う!こいつらが間違えたからだ!」
「お前が怪しすぎたんだろう?まあ、うちの者が勘違いしたのも悪かったし、俺も遅れたし、ビアンカを怖がらせてすまなかった」
「いえ、カイさん達はお仕事をしてくださっていたのです。感謝しております」
ダイガットに冷たい視線を送ったけど、とにかくみんなが助かってホッとした。
「アッシュは?無事ですか?」
「アッシュなら向こうで騎士たちと話をしているところだ。これからまだ詳しく事情を聞かないといけないからな」
「でもアッシュも怪我をしているみたい」
「まあ、あれだけ戦ったんだから多少の怪我は仕方がないだろう」
「ビアンカ!俺も加勢して戦ったんだ!ほらこの腕を見てくれ!」
「………それよりもどうしてこの国に来たのですか?貴方は大切なフランソア様とご結婚されるのでは?」
二人にはもうそういう関係があるので、責任をとって結婚すると聞いていた。
「フランソアとは……もちろん結婚するつもりだ。でもその前に………酷いことをして一言だけでも謝罪したかった。すまなかった」
「貴方からの謝罪はいりません。だって結婚はしていなかったですし、二人の間には何もありませんでした」
そう言って傷つくこともなかった。
「何もなかった……」
なぜかダイガットが傷ついているように見えた。
元々愛しているのはフランソア様、幼馴染で大切な存在だった。そこに事情があるとはいえ、割り込んできたのは私だ。
「ええ、私の方が謝らなければいけないのかもしれませんね。お二人の愛の邪魔をしてしまって」
ダイガットがなんともいえない顔をしているのを、少し不思議に思いながらも言った。
「申し訳ございませんでした。お二人のこれからの幸せをお祈りいたしておりますわ」
ダイガットに頭を下げてから「アッシュのところに行ってもいいですか?無事であることを一目だけでも見て確認して安心したいのです」と、カイさんにお願いした。
「そうだな、アッシュもお前の無事な姿を近くで見たいだろう。行こう」
「お、おい、ビアンカ!おい、まだ話は終わってない!」
「ダイガット、傷の手当てをしてもらってね?じゃあ、お元気で!」
カイさんは私の横で「クククッ」と笑い出した。
「ビアンカ、お前なかなかいい性格しているな?」
「ダイガットと話すことなんて特にありません。横柄で冷たい態度、仕事だって私に押し付けていたし、どうして私が優しくしなければいけないのですか?彼はいつもフランソア様を守ることに命をかけていたの。これからもその気持ちを貫いて生きてほしいわ」
別に幸せになってほしいとまでは思わないけど。私って意地悪なのかしら?
「あの男は女の尻に敷かれながら生きていくんだろうな」
カイさんは苦笑してそっと振り返ってから肩をすくめた。
私の目はもうアッシュだけを見ていた。
私のせいで命すら危うかった。
ダイガットになんて構ってる余裕はない。
「アッシュ?」
小さな声で、声をかけるとこちらに振り向いた。
「ビアンカ!どこも怪我はないか?」
「うん」
「それならよかった」
血だらけで服はボロボロ、顔も汚れているのに、アッシュは私を見て笑った。
カイさんが突然ダイガットの姿を見つけ頭を叩いた。
カイさんはいつの間にか目の前に立っていた。
「ビアンカ、不安で怖かっただろう?駆けつけるのが遅くなってすまなかった」
そう言うとまたダイガットの頭をガツンと殴りつけた。
「痛いです!やめてください!俺はそもそもビアンカに会いに来ただけなんです!こんな事件に巻き込まれて……」ダイガットは腕の傷を見せた。
「ほら見てください!怪我してるんですよ?」
「お前が学校の前でうろうろと怪しい行動をしていたから、うちの騎士達が誤解してお前がビアンカを狙った奴だと思ってしまったんだ!ったく、お前のせいで時間を無駄にしたんだ」
「???」
話の内容についていけずに固まった。
「ビアンカ、すまなかった。お前を守るために待機していた護衛が、この怪しい男とその護衛を敵と間違えて捕らえてしまったんだ。その間にお前たちの乗っている馬車が狙われてしまった。ほんと、こいつ、本当は敵なのかと思うくらい、敵のために動きやがって!」
そう言うとまたさらに殴りつける。
「痛いですってば!
俺は、ビアンカの住む屋敷に会いに行っても追い返されたから、どうにかして会おうと考えていたら、今日が卒業パーティーだと知って学校の門で待っていただけだ」
「何人の護衛をつけているんだ?怪しすぎるだろう?」
「この国は俺の住む国じゃないから何かあった時のために護衛を多めに雇ったんだ。なぜか侯爵家の者たちが、俺の行動を監視していたから、対抗するためだったんだ」
「お前が碌でもない奴だと知っているからだろう。
今夜に限って侯爵家は護衛を減らしてたんだ。俺たちが代わりに見張ることになっていたからな。俺が急きょ他の用事ができて遅れて学校に着いたら、騎士たちとダイガットが揉めていたから驚いたぜ」
「俺の顔を見て悪人に間違えるなんて失礼ですよ!」
「要するにダイガットのせいで助けが遅くなったと言うの?」
「違う!こいつらが間違えたからだ!」
「お前が怪しすぎたんだろう?まあ、うちの者が勘違いしたのも悪かったし、俺も遅れたし、ビアンカを怖がらせてすまなかった」
「いえ、カイさん達はお仕事をしてくださっていたのです。感謝しております」
ダイガットに冷たい視線を送ったけど、とにかくみんなが助かってホッとした。
「アッシュは?無事ですか?」
「アッシュなら向こうで騎士たちと話をしているところだ。これからまだ詳しく事情を聞かないといけないからな」
「でもアッシュも怪我をしているみたい」
「まあ、あれだけ戦ったんだから多少の怪我は仕方がないだろう」
「ビアンカ!俺も加勢して戦ったんだ!ほらこの腕を見てくれ!」
「………それよりもどうしてこの国に来たのですか?貴方は大切なフランソア様とご結婚されるのでは?」
二人にはもうそういう関係があるので、責任をとって結婚すると聞いていた。
「フランソアとは……もちろん結婚するつもりだ。でもその前に………酷いことをして一言だけでも謝罪したかった。すまなかった」
「貴方からの謝罪はいりません。だって結婚はしていなかったですし、二人の間には何もありませんでした」
そう言って傷つくこともなかった。
「何もなかった……」
なぜかダイガットが傷ついているように見えた。
元々愛しているのはフランソア様、幼馴染で大切な存在だった。そこに事情があるとはいえ、割り込んできたのは私だ。
「ええ、私の方が謝らなければいけないのかもしれませんね。お二人の愛の邪魔をしてしまって」
ダイガットがなんともいえない顔をしているのを、少し不思議に思いながらも言った。
「申し訳ございませんでした。お二人のこれからの幸せをお祈りいたしておりますわ」
ダイガットに頭を下げてから「アッシュのところに行ってもいいですか?無事であることを一目だけでも見て確認して安心したいのです」と、カイさんにお願いした。
「そうだな、アッシュもお前の無事な姿を近くで見たいだろう。行こう」
「お、おい、ビアンカ!おい、まだ話は終わってない!」
「ダイガット、傷の手当てをしてもらってね?じゃあ、お元気で!」
カイさんは私の横で「クククッ」と笑い出した。
「ビアンカ、お前なかなかいい性格しているな?」
「ダイガットと話すことなんて特にありません。横柄で冷たい態度、仕事だって私に押し付けていたし、どうして私が優しくしなければいけないのですか?彼はいつもフランソア様を守ることに命をかけていたの。これからもその気持ちを貫いて生きてほしいわ」
別に幸せになってほしいとまでは思わないけど。私って意地悪なのかしら?
「あの男は女の尻に敷かれながら生きていくんだろうな」
カイさんは苦笑してそっと振り返ってから肩をすくめた。
私の目はもうアッシュだけを見ていた。
私のせいで命すら危うかった。
ダイガットになんて構ってる余裕はない。
「アッシュ?」
小さな声で、声をかけるとこちらに振り向いた。
「ビアンカ!どこも怪我はないか?」
「うん」
「それならよかった」
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