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143話
馬車に乗り込みオリソン国を目指す。
「ビアンカ様、5年ぶりですね」
シズナは、ウキウキしているのを隠そうとしながらも嬉しそうにしているのが分かる。
ミリィとジェイは乗ってすぐは、しばらくはしゃいでいたけど、馬車の揺れが気持ちがいいのか、今は二人ともお昼寝の真っ最中。
それぞれ母親の膝の上に頭を置きスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
彼女は私について来て、帰国せずにずっとそばにいてくれた。
本当なら、シズナは私から離れて自由に人生を選べるのに、私のそばにいて苦労ばかりして、たくさん辛い思いをさせてしまった。
そんな中ヨハンと愛し合い、今では仲睦まじく暮らしている。ずっと幸せでいてほしいのに、私のせいで怪我を負い、ヨハンにまで迷惑をかけた。なのに二人は文句も言わずに、こうしてまたオリソン国へとついて来てくれた。
ただ、実家に帰れることを内心喜んでくれているので、少しだけホッとした。
「うん、シズナ……ごめんなさいね、たくさん心配と迷惑ばかりかけて」
「そんなことありません!私が選んだんです。ずっとビアンカ様のそばにいることを!ビアンカ様がいたから、わたしは自分に自信が持てたんです」
シズナは思い出すように馬車の天井をじっと見つめた。
「………優秀な兄と比べられて育ったわたしは劣等感の塊でした。何をしても駄目で、いつも下を向いてばかり。そんな時、ビアンカ様についておそばでお世話をさせてもらえて、少しずつ自信が持てるようになりました。わたしでも人の役に立つんだと。ビアンカ様が領地のために動かれているのをそばにいて見てきました。わたしも少しだけお手伝いさせてもらっただけなのに、たくさんの人から感謝されて、わたしでも役に立てるんだと嬉しくて……あの頃はそれだけで胸がいっぱいでした」
私はシズナのことを知っているようで知らなかったんだと思った。
領地で過ごした充実した日々を思い出す。フェリックス様との関係が終わり、領地で必死で過ごした日々。
嫌なことを忘れるように、仕事にのめり込んだ。シズナはそんな私に黙ってついて来てくれた。
でも、彼女のそんな心の中まで知ろうとしなかったし、シズナ自身も人に話したくなかったのだろう。
「そうだったの……」
ごめんと言うのもおかしいし、どう返事をしたらいいのか躊躇っているとシズナが私の手を握った。
「ビアンカ様、わたし、娘を連れて両親や兄に会えることがとても嬉しいんです。わたしはこんなに幸せなんだって誇らしい気持ちでいるんです」
「うん、そうだね。私もフェリックス様のこともあるけど、初めてジェイをお祖母様に会わせてあげられると思うと、とても嬉しいわ」
二人で顔を見合わせて微笑みあった。
夕方になって宿に泊まる。
ジェイは元気にお散歩に行きたいと言い出して、二人で宿の近くを歩くことにした。
夕焼けがとても綺麗でジェイは「うわぁ!」と大きな声を出して私の手を引っ張って「はしろうよ!かぁさま!」と夕焼けに向かって走り始めた。
久しぶりに娘と手を繋いで走った。
手の温もりが私に勇気を与えてくれた。
オリソン国へ帰ったらすぐに動くつもりだ。手紙も送っているのでアッシュ達もすぐに動いてくれるだろう。
「ビアンカ!」
背後から私を呼ぶ声。
「アリア!」
アリアが迎えに来てくれていた。
「カイが、ビアンカを迎えに行くように言ってくれたの」
お姫様の時とは違う、手入れされた髪でも肌でもないし、ドレスを着ているわけでもないけど、アリアはやっぱり綺麗で、気品がある。
「ありちゃん!」
ジェイはアリアに気がつくと私の手を離して、彼女に抱きついた。
「ジェイ!久しぶりね?また大きくなったわね」
「へへっ」
アリアはジェイを抱っこしたまま歩き始めた。
「わたしも同じ宿に部屋をとったの」
「そうなのね、じゃあ一緒に食事をしましょうよ」
「もちろんそのつもりよ。シズナは部屋にいるの?」
「ミリィが疲れちゃうからゆっくりしているわ」
「ミリィももう一歳過ぎたのよね?」
「ええ」
ジェイがそばにいるのでお互いフェリックス様のことは話さなかった。
夕食が終わり子供達が寝付いた後、アリアが部屋を訪れた。
「二人がオリソン国に着く前に、今のところ、マリアナ様達がどうなっているのか説明しておこうと思っているの」
「聞きたいと思っていたの」
「マリアナ様は心の病気でしばらく療養されることになったわ」
それは、どこかに隔離されて幽閉されることを意味していた。
「ビアンカ様、5年ぶりですね」
シズナは、ウキウキしているのを隠そうとしながらも嬉しそうにしているのが分かる。
ミリィとジェイは乗ってすぐは、しばらくはしゃいでいたけど、馬車の揺れが気持ちがいいのか、今は二人ともお昼寝の真っ最中。
それぞれ母親の膝の上に頭を置きスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている。
彼女は私について来て、帰国せずにずっとそばにいてくれた。
本当なら、シズナは私から離れて自由に人生を選べるのに、私のそばにいて苦労ばかりして、たくさん辛い思いをさせてしまった。
そんな中ヨハンと愛し合い、今では仲睦まじく暮らしている。ずっと幸せでいてほしいのに、私のせいで怪我を負い、ヨハンにまで迷惑をかけた。なのに二人は文句も言わずに、こうしてまたオリソン国へとついて来てくれた。
ただ、実家に帰れることを内心喜んでくれているので、少しだけホッとした。
「うん、シズナ……ごめんなさいね、たくさん心配と迷惑ばかりかけて」
「そんなことありません!私が選んだんです。ずっとビアンカ様のそばにいることを!ビアンカ様がいたから、わたしは自分に自信が持てたんです」
シズナは思い出すように馬車の天井をじっと見つめた。
「………優秀な兄と比べられて育ったわたしは劣等感の塊でした。何をしても駄目で、いつも下を向いてばかり。そんな時、ビアンカ様についておそばでお世話をさせてもらえて、少しずつ自信が持てるようになりました。わたしでも人の役に立つんだと。ビアンカ様が領地のために動かれているのをそばにいて見てきました。わたしも少しだけお手伝いさせてもらっただけなのに、たくさんの人から感謝されて、わたしでも役に立てるんだと嬉しくて……あの頃はそれだけで胸がいっぱいでした」
私はシズナのことを知っているようで知らなかったんだと思った。
領地で過ごした充実した日々を思い出す。フェリックス様との関係が終わり、領地で必死で過ごした日々。
嫌なことを忘れるように、仕事にのめり込んだ。シズナはそんな私に黙ってついて来てくれた。
でも、彼女のそんな心の中まで知ろうとしなかったし、シズナ自身も人に話したくなかったのだろう。
「そうだったの……」
ごめんと言うのもおかしいし、どう返事をしたらいいのか躊躇っているとシズナが私の手を握った。
「ビアンカ様、わたし、娘を連れて両親や兄に会えることがとても嬉しいんです。わたしはこんなに幸せなんだって誇らしい気持ちでいるんです」
「うん、そうだね。私もフェリックス様のこともあるけど、初めてジェイをお祖母様に会わせてあげられると思うと、とても嬉しいわ」
二人で顔を見合わせて微笑みあった。
夕方になって宿に泊まる。
ジェイは元気にお散歩に行きたいと言い出して、二人で宿の近くを歩くことにした。
夕焼けがとても綺麗でジェイは「うわぁ!」と大きな声を出して私の手を引っ張って「はしろうよ!かぁさま!」と夕焼けに向かって走り始めた。
久しぶりに娘と手を繋いで走った。
手の温もりが私に勇気を与えてくれた。
オリソン国へ帰ったらすぐに動くつもりだ。手紙も送っているのでアッシュ達もすぐに動いてくれるだろう。
「ビアンカ!」
背後から私を呼ぶ声。
「アリア!」
アリアが迎えに来てくれていた。
「カイが、ビアンカを迎えに行くように言ってくれたの」
お姫様の時とは違う、手入れされた髪でも肌でもないし、ドレスを着ているわけでもないけど、アリアはやっぱり綺麗で、気品がある。
「ありちゃん!」
ジェイはアリアに気がつくと私の手を離して、彼女に抱きついた。
「ジェイ!久しぶりね?また大きくなったわね」
「へへっ」
アリアはジェイを抱っこしたまま歩き始めた。
「わたしも同じ宿に部屋をとったの」
「そうなのね、じゃあ一緒に食事をしましょうよ」
「もちろんそのつもりよ。シズナは部屋にいるの?」
「ミリィが疲れちゃうからゆっくりしているわ」
「ミリィももう一歳過ぎたのよね?」
「ええ」
ジェイがそばにいるのでお互いフェリックス様のことは話さなかった。
夕食が終わり子供達が寝付いた後、アリアが部屋を訪れた。
「二人がオリソン国に着く前に、今のところ、マリアナ様達がどうなっているのか説明しておこうと思っているの」
「聞きたいと思っていたの」
「マリアナ様は心の病気でしばらく療養されることになったわ」
それは、どこかに隔離されて幽閉されることを意味していた。
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最初からビアンカもフェリックスも変な所でいつも意地を張ってるのかな??
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フェリックスは病気で長く生きれないのであればビアンカの幸せを考えたら身を引く方がいいと考えた。
貴族令嬢が妊娠し産む事も愛してるがゆえにだし。
ただ、忘れられてる人に縋り付くことはビアンカにはできなかったのかな。
フェリックスは思い出せなかったんだもん、結婚もしちゃうよね。
ただ奥さん、頭おかしいからビアンカの継母と同じ人種みたいだしビアンカパパのようになればいいんじゃないかなー
奥さん抱いて子供作ってオリソン国で暮らしていくしかないんじゃない?
お互い方向は間違ったとしても相手を思い遣ってる事には違いないし、誰とどこで過ごしてもお互いが幸せであれば愛なんて要らないんじゃない?
それはもう愛なんて言葉を超越してると思うし。
ただ、ビアンカも最後ぐらい素直になって欲しいものを欲しいってわがまま言ってもバチは当たらないよと思ってしまう笑笑
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更新ありがとうございます。
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