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オリソン国⑤
しおりを挟むわたしは18歳になった。
文官として王宮で働くことになったわたしはたまにオリエ様やカイ様にお会いすることがあった。
もちろんすれ違うくらいだけど挨拶したりときには話しかけてもらえたりする。
それだけでも新人のわたしには十分すぎるくらい安心感がある。やはり知人に会うと常に緊張し続ける気持ちを楽にさせてくれる。
ちなみにマーラも文官として働き出したのだけど部署が違うので会うことはあまりない。
ーーーーー
「新人と教育係数人で国外研修に行ってもらう」
噂では聞いていた国外研修。毎年研修先は決まっていない。わたしのいる部署は財務部なので他国での勉強も大事らしい。
新人から選ばれたのはわたしとレックス、そして上司達五人。合わせて七人で国外研修へ行くことになった。
「カトリーヌはやっぱり選ばれたわね。わたしは残念ながらダメだったわ」
寮では隣の部屋だったアリッサ。
同じ文官になった一人。
「わたしは総務部から選ばれたわ」
マーラが嫌そうな顔でため息混じりに呟いた。
「なんで選ばれたのかしら?運悪すぎよね」
「確かに………でもどこの国に行くかわからないしね」
「毎年行き先は着くまで教えないらしいわ」
「どうしてなのかしら?」アリッサが不思議そうに聞いた。
「あらかじめ伝えると先入観が出てしまうし嫌がって逃げられても困るから?」
マーラが笑いながら言った。
「逃げるって………」
アリッサが驚いていた。
「以前は伝えていたらしいのよ、でもその行くと決まった国の噂があまり良くなくて当日に頭が痛いとかお腹を壊したとか熱が出たとか病人がたくさん出て中止さぜるを得なかったらしいの…」
「…え?仮病?」
わたしもアリッサもお互いの顔を見て驚いた。
「ふふ、だからわたしも行きたくないの」
「……わたしも今の話を聞いて行きたくなくなったかも……」
「まぁその一件以来国選びは慎重になったので変な国には行かないらしいのだけど……それでもねぇ、他国で勉強しないといけないし、上司が沢山いて息が詰まりそう」
「……そうだね、でもわたしはマーラが一緒で今とてもホッとしたわ」
「うん、今回新人が10人選ばれた中で5人は同じ学校だったからわたしもホッとした、特にカトリーヌがいてくれるしね。語学が堪能なので通訳なしでもいけるかもしれないわよね」
「うーん、でもわたしは共通語として使える国の言葉をメインで覚えたからどうかな」
「行きたくなかったけど、話してたら少しは楽しそうに感じてきたわ」
ーーわたしは内心どこの国に行くのか教えてもらえないことが不安だった。
ま、まさかね。うん、それはないと思う。
何十カ国もあるのに……うん、わたしはジャン様が言ってた魔道具があるモリス国にとても興味がある。
どこの国も失われたはずの魔法を使うことが出来るという不思議な国。
高価でなかなか手に入らない魔道具。
それをお義兄様とお姉様に使ってくれた陛下。感謝しかない。二人の脅威を心配しなくても安心して暮らせる。
わたしは王宮内にある女子寮で今は暮らしている。
両親からの援助は全て断った。もう一人でも生きていける。除籍も願ったけどまだ両親はそれを嫌がりわたしは侯爵令嬢のまま。
でもオリソン国ではあえてカトリーヌと名前だけで通している。
この国は平民でも貴族でも外国人でも、努力と才能さえあれば自分の力を認めてくれる。
暮らしやすい国だ。
「カトリーヌは今回の国外研修に行くのよね?」
久しぶりに会うオリエ様と二人で夜食事会をした。
「はい行きます」
「そう、わたしも護衛として行くのよ。マーラもいるし楽しみだわ」
それを聞いてわたしも楽しみになってきた。
そして国外研修へと向かった。
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