【完結】母になります。

たろ

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可愛いのよね

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 子供達はなかなか大人に慣れなかった。わたしとカルロだけは近寄っても嫌がらなかった。

 だから傷の手当てや食事のお世話は二人で交代ですることにした。

 グレイ様はわたしに何も言わない。て言うか会いにも来てくれないし、話すこともない。

 夫婦仲はあまり良くなかったらしいので、あまり気にしないことにした。だって彼のことよく知らないしわたし自身も今は子供達のことで忙しいもの。

 ただ……アンミリカさんのことは気になる。どうしてこんな可愛い子供達にひどいことをできるのかしら?
 グレイ様の愛人なのかしら?

 うーん、そこだけはちょっと気になるのだけど……カルロには聞きづらい。

 ノエル君をわたしが抱っこして連れてきた時とても怒った。まるでわたしがノエル君に酷いことをしたかのように言われた。

 ううん、躊躇わずにわたしが悪いと決めつけた言葉だった。

 多分記憶さえ戻ればこの違和感からもアンミリカさんのこともわかって納得できるのだろうけど……思い出すのが怖いと言う気持ちも少しある。






「ティアさま?どうしたの」

 アリスちゃんがわたしの顔を覗き込んだ。
 手には読み終わった絵本を握っていた。

「あっ、ごめんね。次の絵本は何がいいかしら?」

「おうじさまの、ほん!」

「ぼく、おひめしゃま!」

「王子様とお姫様ね?待っててね」

 書庫から子供用の絵本を子供部屋に運んでもらった。

 たくさんの中からわたしが好きだった物語を選んでまた二人に読み聞かせをした。

 まだまだ傷も治っていないし、痩せ細ってはいるけど二人は互いを守ろうと今も必死で支え合って過ごしている。

 この場所は安全で怖くないと少しずつ伝えている。少しでも二人が笑顔で過ごせるようにわたしができることをしてあげたい。

 今はまだあまり動く遊びはできない二人はお絵描きをしたり絵本を読んでもらうことくらいしか楽しみがない。

「もう少し元気になったら一緒にお庭に出てお散歩しましょうね?お外で美味しいお菓子を食べるのもとっても楽しいわ。あと……アリスちゃんとお花の冠を作ってみたいわ」

「おはなのかんむりぃ?ってなに?」

「うーん?なぁに?」ノエル君も真似して聞いてきた。
 二人は知らない言葉を耳にすると興味津々で聞いてくる。

 知識欲や好奇心が旺盛でいろんなことを質問してくる二人。おかげでわたしも頭の中がフル回転するので悩みなんてついわすれてしまう。

「お姫様にとっても似合う頭に飾るものなの。アリスちゃんとノエル君にも絶対似合うと思うわ」


「のえるも?」

「わたし、ほしい!」

「うん、お医者様に許可をもらったらお外にでましょうね?」

「「うん!!」」

 ーー二人ともとっても可愛い。




 数日経つと二人はずいぶん元気になった。

 少しずつだけど食欲も出てきて食べる量も増えてきた。毎日清潔な服を着て湯浴みもするようになった。
 ボサボサだった髪も綺麗にカットして櫛で梳かしてリボンで二つ結びをしてあげる、
 アリスちゃんはとっても可愛いらしい女の子になった。ーーうん、満足!

 ノエル君も伸びて絡んだ髪を短く切ったら……グレイ様に似ている気がする。

 うん、多分、グレイ様の子供なのだろう。

 ではやっぱりアンミリカさんとの?

 でもタバサもカルロもなにも言わないしわたしも聞かない。


 使用人達とも子供達を通じて少しずつ話すようになった。

「服はどんなものがあるのかしら?」

「買い足した方がいい?」

「まだまだ食欲は少ないから食べやすいものから用意して欲しいの」

「おやつはわたしが作ってみたいわ」

 不思議よね、記憶を失くしてみんなとどう接していいのかわからなくて困っていたのに、子供達を通して意識せずに話ができてる。

「ティア様、子供達にぬいぐるみを作ったのですが」
 そう言ってクマのぬいぐるみをプレゼントしてくれたメイドや痩せ細ったアリスちゃんにはガバガバの服を補正してくれるメイド、二人に食べやすいようにと作ってくれる料理人のみんな。

 庭だって子供達が喜ぶようにと庭師が遊具を作ってくれた。

 木の枝を使ってブランコを作ってくれたり滑り台も作ってくれた。ペンキで大きな石にカラフルな色を塗って子供が座れる椅子も作ってくれた。

 屋敷のみんなも毎日明るい笑い声を聴かせてくれる二人に、ニコニコしながら見守ってくれている。

 ーー少しずつ他の人たちにも慣れてきてよかった。

 だけど夜眠る時はわたしがそばにいないと不安がる。それがまた可愛いし、わたしだけってちょっと嬉しくて最近は二人のベッドで一緒に眠るようになった。



「ティアさま!あそぼう!」

 目覚めた瞬間この言葉を言う二人にあわてて「起きたばかりなのよ?」とタジタジしてしまう。

「朝食もまだなのよ?まずはお顔を洗ってお洋服を着替えましょうね?お散歩は楽しみかもしれないけど好き嫌いしないで朝食を食べたあとね?」


「ええ?」
 アリスちゃんは最近ちゃんと自分の意思を表に出せるようになった。

「がんばって…たべるねっ?」
 ノエル君は3歳になったばかりでまだまだ幼い。今まで虐待されていたのもあって、おとなしい男の子でいつもアリスちゃんの後ろに隠れていることが多い。

「うん、ノエル君、一緒に食べようね?ティアもね、ピーマン嫌いなの。ノエル君と一緒ね?お互い頑張ろう!」

「が……んばる……」
 ピーマンと聞いて顔を引き攣らせるノエル君をみてクスクス笑ってしまった。

 ーー大丈夫。わたしも嫌いだから、一口だけでもいいんだもの。

 わたしも幼い頃タバサに好き嫌いをなくすようによく言われたわ。











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