11 / 35
可愛いのよね
しおりを挟む
子供達はなかなか大人に慣れなかった。わたしとカルロだけは近寄っても嫌がらなかった。
だから傷の手当てや食事のお世話は二人で交代ですることにした。
グレイ様はわたしに何も言わない。て言うか会いにも来てくれないし、話すこともない。
夫婦仲はあまり良くなかったらしいので、あまり気にしないことにした。だって彼のことよく知らないしわたし自身も今は子供達のことで忙しいもの。
ただ……アンミリカさんのことは気になる。どうしてこんな可愛い子供達にひどいことをできるのかしら?
グレイ様の愛人なのかしら?
うーん、そこだけはちょっと気になるのだけど……カルロには聞きづらい。
ノエル君をわたしが抱っこして連れてきた時とても怒った。まるでわたしがノエル君に酷いことをしたかのように言われた。
ううん、躊躇わずにわたしが悪いと決めつけた言葉だった。
多分記憶さえ戻ればこの違和感からもアンミリカさんのこともわかって納得できるのだろうけど……思い出すのが怖いと言う気持ちも少しある。
「ティアさま?どうしたの」
アリスちゃんがわたしの顔を覗き込んだ。
手には読み終わった絵本を握っていた。
「あっ、ごめんね。次の絵本は何がいいかしら?」
「おうじさまの、ほん!」
「ぼく、おひめしゃま!」
「王子様とお姫様ね?待っててね」
書庫から子供用の絵本を子供部屋に運んでもらった。
たくさんの中からわたしが好きだった物語を選んでまた二人に読み聞かせをした。
まだまだ傷も治っていないし、痩せ細ってはいるけど二人は互いを守ろうと今も必死で支え合って過ごしている。
この場所は安全で怖くないと少しずつ伝えている。少しでも二人が笑顔で過ごせるようにわたしができることをしてあげたい。
今はまだあまり動く遊びはできない二人はお絵描きをしたり絵本を読んでもらうことくらいしか楽しみがない。
「もう少し元気になったら一緒にお庭に出てお散歩しましょうね?お外で美味しいお菓子を食べるのもとっても楽しいわ。あと……アリスちゃんとお花の冠を作ってみたいわ」
「おはなのかんむりぃ?ってなに?」
「うーん?なぁに?」ノエル君も真似して聞いてきた。
二人は知らない言葉を耳にすると興味津々で聞いてくる。
知識欲や好奇心が旺盛でいろんなことを質問してくる二人。おかげでわたしも頭の中がフル回転するので悩みなんてついわすれてしまう。
「お姫様にとっても似合う頭に飾るものなの。アリスちゃんとノエル君にも絶対似合うと思うわ」
「のえるも?」
「わたし、ほしい!」
「うん、お医者様に許可をもらったらお外にでましょうね?」
「「うん!!」」
ーー二人ともとっても可愛い。
数日経つと二人はずいぶん元気になった。
少しずつだけど食欲も出てきて食べる量も増えてきた。毎日清潔な服を着て湯浴みもするようになった。
ボサボサだった髪も綺麗にカットして櫛で梳かしてリボンで二つ結びをしてあげる、
アリスちゃんはとっても可愛いらしい女の子になった。ーーうん、満足!
ノエル君も伸びて絡んだ髪を短く切ったら……グレイ様に似ている気がする。
うん、多分、グレイ様の子供なのだろう。
ではやっぱりアンミリカさんとの?
でもタバサもカルロもなにも言わないしわたしも聞かない。
使用人達とも子供達を通じて少しずつ話すようになった。
「服はどんなものがあるのかしら?」
「買い足した方がいい?」
「まだまだ食欲は少ないから食べやすいものから用意して欲しいの」
「おやつはわたしが作ってみたいわ」
不思議よね、記憶を失くしてみんなとどう接していいのかわからなくて困っていたのに、子供達を通して意識せずに話ができてる。
「ティア様、子供達にぬいぐるみを作ったのですが」
そう言ってクマのぬいぐるみをプレゼントしてくれたメイドや痩せ細ったアリスちゃんにはガバガバの服を補正してくれるメイド、二人に食べやすいようにと作ってくれる料理人のみんな。
庭だって子供達が喜ぶようにと庭師が遊具を作ってくれた。
木の枝を使ってブランコを作ってくれたり滑り台も作ってくれた。ペンキで大きな石にカラフルな色を塗って子供が座れる椅子も作ってくれた。
屋敷のみんなも毎日明るい笑い声を聴かせてくれる二人に、ニコニコしながら見守ってくれている。
ーー少しずつ他の人たちにも慣れてきてよかった。
だけど夜眠る時はわたしがそばにいないと不安がる。それがまた可愛いし、わたしだけってちょっと嬉しくて最近は二人のベッドで一緒に眠るようになった。
「ティアさま!あそぼう!」
目覚めた瞬間この言葉を言う二人にあわてて「起きたばかりなのよ?」とタジタジしてしまう。
「朝食もまだなのよ?まずはお顔を洗ってお洋服を着替えましょうね?お散歩は楽しみかもしれないけど好き嫌いしないで朝食を食べたあとね?」
「ええ?」
アリスちゃんは最近ちゃんと自分の意思を表に出せるようになった。
「がんばって…たべるねっ?」
ノエル君は3歳になったばかりでまだまだ幼い。今まで虐待されていたのもあって、おとなしい男の子でいつもアリスちゃんの後ろに隠れていることが多い。
「うん、ノエル君、一緒に食べようね?ティアもね、ピーマン嫌いなの。ノエル君と一緒ね?お互い頑張ろう!」
「が……んばる……」
ピーマンと聞いて顔を引き攣らせるノエル君をみてクスクス笑ってしまった。
ーー大丈夫。わたしも嫌いだから、一口だけでもいいんだもの。
わたしも幼い頃タバサに好き嫌いをなくすようによく言われたわ。
だから傷の手当てや食事のお世話は二人で交代ですることにした。
グレイ様はわたしに何も言わない。て言うか会いにも来てくれないし、話すこともない。
夫婦仲はあまり良くなかったらしいので、あまり気にしないことにした。だって彼のことよく知らないしわたし自身も今は子供達のことで忙しいもの。
ただ……アンミリカさんのことは気になる。どうしてこんな可愛い子供達にひどいことをできるのかしら?
グレイ様の愛人なのかしら?
うーん、そこだけはちょっと気になるのだけど……カルロには聞きづらい。
ノエル君をわたしが抱っこして連れてきた時とても怒った。まるでわたしがノエル君に酷いことをしたかのように言われた。
ううん、躊躇わずにわたしが悪いと決めつけた言葉だった。
多分記憶さえ戻ればこの違和感からもアンミリカさんのこともわかって納得できるのだろうけど……思い出すのが怖いと言う気持ちも少しある。
「ティアさま?どうしたの」
アリスちゃんがわたしの顔を覗き込んだ。
手には読み終わった絵本を握っていた。
「あっ、ごめんね。次の絵本は何がいいかしら?」
「おうじさまの、ほん!」
「ぼく、おひめしゃま!」
「王子様とお姫様ね?待っててね」
書庫から子供用の絵本を子供部屋に運んでもらった。
たくさんの中からわたしが好きだった物語を選んでまた二人に読み聞かせをした。
まだまだ傷も治っていないし、痩せ細ってはいるけど二人は互いを守ろうと今も必死で支え合って過ごしている。
この場所は安全で怖くないと少しずつ伝えている。少しでも二人が笑顔で過ごせるようにわたしができることをしてあげたい。
今はまだあまり動く遊びはできない二人はお絵描きをしたり絵本を読んでもらうことくらいしか楽しみがない。
「もう少し元気になったら一緒にお庭に出てお散歩しましょうね?お外で美味しいお菓子を食べるのもとっても楽しいわ。あと……アリスちゃんとお花の冠を作ってみたいわ」
「おはなのかんむりぃ?ってなに?」
「うーん?なぁに?」ノエル君も真似して聞いてきた。
二人は知らない言葉を耳にすると興味津々で聞いてくる。
知識欲や好奇心が旺盛でいろんなことを質問してくる二人。おかげでわたしも頭の中がフル回転するので悩みなんてついわすれてしまう。
「お姫様にとっても似合う頭に飾るものなの。アリスちゃんとノエル君にも絶対似合うと思うわ」
「のえるも?」
「わたし、ほしい!」
「うん、お医者様に許可をもらったらお外にでましょうね?」
「「うん!!」」
ーー二人ともとっても可愛い。
数日経つと二人はずいぶん元気になった。
少しずつだけど食欲も出てきて食べる量も増えてきた。毎日清潔な服を着て湯浴みもするようになった。
ボサボサだった髪も綺麗にカットして櫛で梳かしてリボンで二つ結びをしてあげる、
アリスちゃんはとっても可愛いらしい女の子になった。ーーうん、満足!
ノエル君も伸びて絡んだ髪を短く切ったら……グレイ様に似ている気がする。
うん、多分、グレイ様の子供なのだろう。
ではやっぱりアンミリカさんとの?
でもタバサもカルロもなにも言わないしわたしも聞かない。
使用人達とも子供達を通じて少しずつ話すようになった。
「服はどんなものがあるのかしら?」
「買い足した方がいい?」
「まだまだ食欲は少ないから食べやすいものから用意して欲しいの」
「おやつはわたしが作ってみたいわ」
不思議よね、記憶を失くしてみんなとどう接していいのかわからなくて困っていたのに、子供達を通して意識せずに話ができてる。
「ティア様、子供達にぬいぐるみを作ったのですが」
そう言ってクマのぬいぐるみをプレゼントしてくれたメイドや痩せ細ったアリスちゃんにはガバガバの服を補正してくれるメイド、二人に食べやすいようにと作ってくれる料理人のみんな。
庭だって子供達が喜ぶようにと庭師が遊具を作ってくれた。
木の枝を使ってブランコを作ってくれたり滑り台も作ってくれた。ペンキで大きな石にカラフルな色を塗って子供が座れる椅子も作ってくれた。
屋敷のみんなも毎日明るい笑い声を聴かせてくれる二人に、ニコニコしながら見守ってくれている。
ーー少しずつ他の人たちにも慣れてきてよかった。
だけど夜眠る時はわたしがそばにいないと不安がる。それがまた可愛いし、わたしだけってちょっと嬉しくて最近は二人のベッドで一緒に眠るようになった。
「ティアさま!あそぼう!」
目覚めた瞬間この言葉を言う二人にあわてて「起きたばかりなのよ?」とタジタジしてしまう。
「朝食もまだなのよ?まずはお顔を洗ってお洋服を着替えましょうね?お散歩は楽しみかもしれないけど好き嫌いしないで朝食を食べたあとね?」
「ええ?」
アリスちゃんは最近ちゃんと自分の意思を表に出せるようになった。
「がんばって…たべるねっ?」
ノエル君は3歳になったばかりでまだまだ幼い。今まで虐待されていたのもあって、おとなしい男の子でいつもアリスちゃんの後ろに隠れていることが多い。
「うん、ノエル君、一緒に食べようね?ティアもね、ピーマン嫌いなの。ノエル君と一緒ね?お互い頑張ろう!」
「が……んばる……」
ピーマンと聞いて顔を引き攣らせるノエル君をみてクスクス笑ってしまった。
ーー大丈夫。わたしも嫌いだから、一口だけでもいいんだもの。
わたしも幼い頃タバサに好き嫌いをなくすようによく言われたわ。
1,587
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ヒスババアと呼ばれた私が異世界に行きました
陽花紫
恋愛
夫にヒスババアと呼ばれた瞬間に異世界に召喚されたリカが、乳母のメアリー、従者のウィルとともに幼い王子を立派に育て上げる話。
小説家になろうにも掲載中です。
【完結】この地獄のような楽園に祝福を
おもち。
恋愛
いらないわたしは、決して物語に出てくるようなお姫様にはなれない。
だって知っているから。わたしは生まれるべき存在ではなかったのだと……
「必ず迎えに来るよ」
そんなわたしに、唯一親切にしてくれた彼が紡いだ……たった一つの幸せな嘘。
でもその幸せな夢さえあれば、どんな辛い事にも耐えられると思ってた。
ねぇ、フィル……わたし貴方に会いたい。
フィル、貴方と共に生きたいの。
※子どもに手を上げる大人が出てきます。読まれる際はご注意下さい、無理な方はブラウザバックでお願いします。
※この作品は作者独自の設定が出てきますので何卒ご了承ください。
※本編+おまけ数話。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる