14 / 35
そばにいてあげたい。
しおりを挟む
ノエル君はまだまだ体力がなくて熱を出してしまった。
アリスちゃんは「いっしょにいたい」と泣いてグズった。だけど風邪を移してもいけないのでタバサと過ごしてもらうことにした。
アリスちゃんは少しずつ使用人達にも慣れて笑顔を向けられるようになった。
ダバサに絵本を読んでもらったり一緒にお話をして過ごして今はなんとか落ち着いている。
だけどノエル君は熱が下がらなかった。
元々体が丈夫ではなかったところに冷たい水の中に落ちてしまい熱が下がらない。
額に冷たいタオルを当てて取り替えてはいるのだけど、とてもキツそう。
「ま、ま………」
ノエル君が母親を探しているのにどこの誰かわからない。
でも父親ならわかる。
グレイ様だ。だってお顔がとても似ているんだもの。
カルロを探して廊下へ出た。
どこにいるのだろう?グレイ様本人にノエル君の母親は?と聞きたいけど答えてくれない気がして、聞く勇気が持てない。
カルロなら教えてくれるかしら?タバサは知っているようだけど答えてくれない。聞きづらいけどここは聞くしかない!
「カルロは?」
廊下で会った使用人に聞くとグレイ様の隣の部屋で仕事をしてあると教えてくれた。
ーー隣の部屋………
微妙に行きづらい場所だけど……ノエル君のためにも……
勇気を振り絞ってカルロに会いにいくことにした。
部屋をノックするとカルロは一人で仕事をしていた。
「どうなさいましたか?」
「カルロに聞きたいことがあるの。ノエル君はアンミリカさんの息子ではないの?ノエル君がお母様を探しているの……熱が下がらなくて『ママ』って何度も呼んでるの」
「…………残念ですがノエル様のお母様はいません、あのお方はもういないのです……」
ーー亡くなられているのね。
「………そうなの……ノエル君に会わせてあげたかったのに……あんなに母親を求めているのよ?」
「お力になれず申し訳ございません」
「じゃあせめて父親であるグレイ様がノエル君に会いに行ってもらえないかしら?」
「………ノエル様の父上がグレイ様だと?」
「違うの?どう見てもそうだし、他に考えられるかしら?」
ーーだって顔も似ているし、この屋敷の離れの小さな家だけど住まわせていたし、カルロが『ノエル様』と呼んでいるのよ?
何を今更!
「私には旦那様に命令することは出来ません。お隣の部屋にいらっしゃいますのでどうかお話をされてみては如何でしょうか?」
「わ、わたし?えっ……でもグレイ様はわたしと話すの嫌なのでは?ほとんどわたしとは顔を合わせようとしないし、わたしって嫌われているのよね?」
思わず動揺してしまう。
だって記憶を失くしてからあまりにも接点がないんだもの!
「ご夫婦なんです。お互い逃げてばかりいないで向き合われてはいかがですか?」
「………でも、グレイ様にはノエル君がいる……ということは亡くなったとはいえ他に愛する人がいたのでしょう?」
ーーわたしと向き合う必要があるの?
「グレイ様には確かに愛するお方がおりましたが、今はあなたがいます。記憶をなくしたあなたがいらっしゃいます」
カルロはそういうと席を立ち隣の部屋へ続く扉をノックして開けた。
「どうぞ、お入りください」
わたしは思わず首を横に振った。
ーー無理無理!
椅子に座ったまま動こうとしないでいると扉の向こうから「どうした?カルロ、中に入って扉を閉めろ」と声が聞こえてきた。
「グレイ様、奥様がわたしの部屋でお待ちです」
わたしが動こうとしないので、グレイをこちらに呼んだ。
ーーあ~、もう、心の準備が!
アリスちゃんは「いっしょにいたい」と泣いてグズった。だけど風邪を移してもいけないのでタバサと過ごしてもらうことにした。
アリスちゃんは少しずつ使用人達にも慣れて笑顔を向けられるようになった。
ダバサに絵本を読んでもらったり一緒にお話をして過ごして今はなんとか落ち着いている。
だけどノエル君は熱が下がらなかった。
元々体が丈夫ではなかったところに冷たい水の中に落ちてしまい熱が下がらない。
額に冷たいタオルを当てて取り替えてはいるのだけど、とてもキツそう。
「ま、ま………」
ノエル君が母親を探しているのにどこの誰かわからない。
でも父親ならわかる。
グレイ様だ。だってお顔がとても似ているんだもの。
カルロを探して廊下へ出た。
どこにいるのだろう?グレイ様本人にノエル君の母親は?と聞きたいけど答えてくれない気がして、聞く勇気が持てない。
カルロなら教えてくれるかしら?タバサは知っているようだけど答えてくれない。聞きづらいけどここは聞くしかない!
「カルロは?」
廊下で会った使用人に聞くとグレイ様の隣の部屋で仕事をしてあると教えてくれた。
ーー隣の部屋………
微妙に行きづらい場所だけど……ノエル君のためにも……
勇気を振り絞ってカルロに会いにいくことにした。
部屋をノックするとカルロは一人で仕事をしていた。
「どうなさいましたか?」
「カルロに聞きたいことがあるの。ノエル君はアンミリカさんの息子ではないの?ノエル君がお母様を探しているの……熱が下がらなくて『ママ』って何度も呼んでるの」
「…………残念ですがノエル様のお母様はいません、あのお方はもういないのです……」
ーー亡くなられているのね。
「………そうなの……ノエル君に会わせてあげたかったのに……あんなに母親を求めているのよ?」
「お力になれず申し訳ございません」
「じゃあせめて父親であるグレイ様がノエル君に会いに行ってもらえないかしら?」
「………ノエル様の父上がグレイ様だと?」
「違うの?どう見てもそうだし、他に考えられるかしら?」
ーーだって顔も似ているし、この屋敷の離れの小さな家だけど住まわせていたし、カルロが『ノエル様』と呼んでいるのよ?
何を今更!
「私には旦那様に命令することは出来ません。お隣の部屋にいらっしゃいますのでどうかお話をされてみては如何でしょうか?」
「わ、わたし?えっ……でもグレイ様はわたしと話すの嫌なのでは?ほとんどわたしとは顔を合わせようとしないし、わたしって嫌われているのよね?」
思わず動揺してしまう。
だって記憶を失くしてからあまりにも接点がないんだもの!
「ご夫婦なんです。お互い逃げてばかりいないで向き合われてはいかがですか?」
「………でも、グレイ様にはノエル君がいる……ということは亡くなったとはいえ他に愛する人がいたのでしょう?」
ーーわたしと向き合う必要があるの?
「グレイ様には確かに愛するお方がおりましたが、今はあなたがいます。記憶をなくしたあなたがいらっしゃいます」
カルロはそういうと席を立ち隣の部屋へ続く扉をノックして開けた。
「どうぞ、お入りください」
わたしは思わず首を横に振った。
ーー無理無理!
椅子に座ったまま動こうとしないでいると扉の向こうから「どうした?カルロ、中に入って扉を閉めろ」と声が聞こえてきた。
「グレイ様、奥様がわたしの部屋でお待ちです」
わたしが動こうとしないので、グレイをこちらに呼んだ。
ーーあ~、もう、心の準備が!
1,423
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
月夜に散る白百合は、君を想う
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢であるアメリアは、王太子殿下の護衛騎士を務める若き公爵、レオンハルトとの政略結婚により、幸せな結婚生活を送っていた。
彼は無口で家を空けることも多かったが、共に過ごす時間はアメリアにとってかけがえのないものだった。
しかし、ある日突然、夫に愛人がいるという噂が彼女の耳に入る。偶然街で目にした、夫と親しげに寄り添う女性の姿に、アメリアは絶望する。信じていた愛が偽りだったと思い込み、彼女は家を飛び出すことを決意する。
一方、レオンハルトには、アメリアに言えない秘密があった。彼の不自然な行動には、王国の未来を左右する重大な使命が関わっていたのだ。妻を守るため、愛する者を危険に晒さないため、彼は自らの心を偽り、冷徹な仮面を被り続けていた。
家出したアメリアは、身分を隠してとある街の孤児院で働き始める。そこでの新たな出会いと生活は、彼女の心を少しずつ癒していく。
しかし、運命は二人を再び引き合わせる。アメリアを探し、奔走するレオンハルト。誤解とすれ違いの中で、二人の愛の真実が試される。
偽りの愛人、王宮の陰謀、そして明かされる公爵の秘密。果たして二人は再び心を通わせ、真実の愛を取り戻すことができるのだろうか。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ヒスババアと呼ばれた私が異世界に行きました
陽花紫
恋愛
夫にヒスババアと呼ばれた瞬間に異世界に召喚されたリカが、乳母のメアリー、従者のウィルとともに幼い王子を立派に育て上げる話。
小説家になろうにも掲載中です。
【完結】この地獄のような楽園に祝福を
おもち。
恋愛
いらないわたしは、決して物語に出てくるようなお姫様にはなれない。
だって知っているから。わたしは生まれるべき存在ではなかったのだと……
「必ず迎えに来るよ」
そんなわたしに、唯一親切にしてくれた彼が紡いだ……たった一つの幸せな嘘。
でもその幸せな夢さえあれば、どんな辛い事にも耐えられると思ってた。
ねぇ、フィル……わたし貴方に会いたい。
フィル、貴方と共に生きたいの。
※子どもに手を上げる大人が出てきます。読まれる際はご注意下さい、無理な方はブラウザバックでお願いします。
※この作品は作者独自の設定が出てきますので何卒ご了承ください。
※本編+おまけ数話。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さくら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる