【完結】母になります。

たろ

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そばにいてあげたい。

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 ノエル君はまだまだ体力がなくて熱を出してしまった。

 アリスちゃんは「いっしょにいたい」と泣いてグズった。だけど風邪を移してもいけないのでタバサと過ごしてもらうことにした。

 アリスちゃんは少しずつ使用人達にも慣れて笑顔を向けられるようになった。
 ダバサに絵本を読んでもらったり一緒にお話をして過ごして今はなんとか落ち着いている。

 だけどノエル君は熱が下がらなかった。

 元々体が丈夫ではなかったところに冷たい水の中に落ちてしまい熱が下がらない。

 額に冷たいタオルを当てて取り替えてはいるのだけど、とてもキツそう。

「ま、ま………」

 ノエル君が母親を探しているのにどこの誰かわからない。

 でも父親ならわかる。

 グレイ様だ。だってお顔がとても似ているんだもの。

 カルロを探して廊下へ出た。

 どこにいるのだろう?グレイ様本人にノエル君の母親は?と聞きたいけど答えてくれない気がして、聞く勇気が持てない。

 カルロなら教えてくれるかしら?タバサは知っているようだけど答えてくれない。聞きづらいけどここは聞くしかない!

「カルロは?」

 廊下で会った使用人に聞くとグレイ様の隣の部屋で仕事をしてあると教えてくれた。

 ーー隣の部屋………

 微妙に行きづらい場所だけど……ノエル君のためにも……

 勇気を振り絞ってカルロに会いにいくことにした。

 部屋をノックするとカルロは一人で仕事をしていた。

「どうなさいましたか?」

「カルロに聞きたいことがあるの。ノエル君はアンミリカさんの息子ではないの?ノエル君がお母様を探しているの……熱が下がらなくて『ママ』って何度も呼んでるの」

「…………残念ですがノエル様のお母様は、あのお方はもうのです……」

 ーーなられているのね。

「………そうなの……ノエル君に会わせてあげたかったのに……あんなに母親を求めているのよ?」

「お力になれず申し訳ございません」

「じゃあせめて父親であるグレイ様がノエル君に会いに行ってもらえないかしら?」

「………ノエル様の父上がグレイ様だと?」

「違うの?どう見てもそうだし、他に考えられるかしら?」
 ーーだって顔も似ているし、この屋敷の離れの小さな家だけど住まわせていたし、カルロが『ノエル様』と呼んでいるのよ?

 何を今更!

「私には旦那様に命令することは出来ません。お隣の部屋にいらっしゃいますのでどうかお話をされてみては如何でしょうか?」

「わ、わたし?えっ……でもグレイ様はわたしと話すの嫌なのでは?ほとんどわたしとは顔を合わせようとしないし、わたしって嫌われているのよね?」

 思わず動揺してしまう。
 だって記憶を失くしてからあまりにも接点がないんだもの!


「ご夫婦なんです。お互い逃げてばかりいないで向き合われてはいかがですか?」

「………でも、グレイ様にはノエル君がいる……ということはとはいえ他に愛する人がいたのでしょう?」

 ーーわたしと向き合う必要があるの?

「グレイ様には確かにがおりましたが、あなたがいます。あなたがいらっしゃいます」

 カルロはそういうと席を立ち隣の部屋へ続く扉をノックして開けた。

「どうぞ、お入りください」

 わたしは思わず首を横に振った。
 ーー無理無理!

 椅子に座ったまま動こうとしないでいると扉の向こうから「どうした?カルロ、中に入って扉を閉めろ」と声が聞こえてきた。

「グレイ様、奥様がわたしの部屋でお待ちです」

 わたしが動こうとしないので、グレイをこちらに呼んだ。

ーーあ~、もう、心の準備が!
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