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17話 ジェフ編
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エリーゼが屋敷から突然消えた。
宰相補佐官を辞任して公爵として二人の子どもの父親として生きていこうと決めた。
エリーゼは、話しかけるとビクッとして目を逸らす。
スコットもなんとかエリーゼと会話をしようと試みるがうまくいかないようだ。
お互い前回の時、エリーゼを蔑ろにしてきた。
6歳のエリーゼならまだなんとかなるだろうと浅はかにも思っていた。
しかしエリーゼの目は、わたしに対して不信感と拒絶しかなかった。
父親であるわたしをあんな感情のない冷たい目で見る。
それはわたしにとって絶望的なものだった。それでもまだなんとかなると思っていた。
どんなに優しく声をかけても、逃げるように立ち去る娘の姿。
よくても困った顔や戸惑いの顔。
笑顔なんてどこにもなかった。
友人のグレイの嫁のリンスにエリーゼの家庭教師を頼んでいた。
妻のオーリスの友人でもあったリンスなら、エリーゼの気持ちに少しでも寄り添ってくれることを期待していた。
なのにいつの間にか屋敷から出て行った。
エリーゼがわたし達の前から消えた理由は一つしかない。
わたしやスコット、殿下から逃げたのだ。
それはわたし達と同じ、死んで時間が巻き戻ったんだと思った。
だから、あの子は戸惑い、わたしにビクビクしていたのだ。
殿下と会ったお茶会で気を失ったのは、記憶があって殿下が怖かったからなのだろう。
自分を殺したのは殿下だと思っているはずだ。
まさかマリーナとハウエル公爵の陰謀だとは知らないはずだ。
殿下が自分を処刑したと思っているエリーゼは、殿下に対して恐怖と嫌悪しかないだろう。
マリーナといつも寄り添い愛し合う姿しか見ていない。
わたしに対しては………冷たい親だと思っているはずだ。
わたしは仕事ばかりして娘を蔑ろにしていた。
殿下との結婚があの子の幸せだと思い込んでいたし、あの子を軟禁状態にした時も、本当の理由も言わず、殿下の愛するマリーナを虐めた罰として謹慎させた。
それは屋敷の者が、どこで噂を広めるかわからないので、本当らしく見せるためだった。
全てが終わってから伝えればいいと思っていた。
あの子の周りから悪意や余計なモノを全て取り除いて、幸せな結婚をさせてあげるつもりだった。
まさかマリーナと公爵が暴走して娘を処刑するなど思ってもいなかった。
わたしは今回の生の中で、マリーナとハウエル公爵の力を削ぐつもりでいる。
あいつは変に力を持ったから、更に王家を傀儡にして自分達のいいようにしようとした。
ならば力を削ぎ、弱小の貴族にするつもりだ。
今、殿下と一緒に王家の影に動いてもらって証拠を集めている。
すぐには無理だが、徐々に弱らせて今回は必ず阻止するつもりだ。
だが、エリーゼが行方不明になった今、どうあの子と接するべきなのかわからなくなった。
記憶があるなら、わたしの顔など見たくないはずだ。
自分を殺した一人だと思っているだろう。
殿下が殺人未遂犯としてエリーゼを連れて行った時、わたしがエリーゼを見捨てたと思っているはずだ。
犯罪者の娘を邪魔だから殿下にさっさと引き渡した父親。
エリーゼの認識だ。
わたしは頭を抱えて唸るしかなかった。
16歳の娘を絶望させて、首を切られて殺された。
壁を何度も叩き、手に血が滲んでも止めることが出来なかった。
あの子には記憶がある。
それはあの子が絶望の中、今を生きているということだ。
わたしは考えれば気づくことなのに、やり直してあの子を助けることしか考えていなかった。
あの子はわたしをどんな風にみて感じていたのだろう。
馬鹿なわたしは笑いかけ、声をかけた。
もう一度笑顔を取り戻したいなんて、簡単に考えていた。
わたしはとにかくあの子を必死で探した。
ここに居たくないなら、あの子にとって居心地のいい場所を見つけるつもりだ。
わたしと居たくないならそれでもいい。
わたしにはあの子と一緒にいる資格はないんだ。だけど、突然消えるのだけは、耐えられない。
エリーゼの死んだ時のことを思い出してしまう。
泣き叫び、怒り、後悔して、絶望の日々だった。
あの子のためなら、そしてスコットのためなら、わたしの命なんていくらでも差し出す。
だから、どうかあの子達にこれからの人生を楽しく幸せに過ごさせてやりたい。
わたしは、必死でエリーゼを探した。
宰相補佐官を辞任して公爵として二人の子どもの父親として生きていこうと決めた。
エリーゼは、話しかけるとビクッとして目を逸らす。
スコットもなんとかエリーゼと会話をしようと試みるがうまくいかないようだ。
お互い前回の時、エリーゼを蔑ろにしてきた。
6歳のエリーゼならまだなんとかなるだろうと浅はかにも思っていた。
しかしエリーゼの目は、わたしに対して不信感と拒絶しかなかった。
父親であるわたしをあんな感情のない冷たい目で見る。
それはわたしにとって絶望的なものだった。それでもまだなんとかなると思っていた。
どんなに優しく声をかけても、逃げるように立ち去る娘の姿。
よくても困った顔や戸惑いの顔。
笑顔なんてどこにもなかった。
友人のグレイの嫁のリンスにエリーゼの家庭教師を頼んでいた。
妻のオーリスの友人でもあったリンスなら、エリーゼの気持ちに少しでも寄り添ってくれることを期待していた。
なのにいつの間にか屋敷から出て行った。
エリーゼがわたし達の前から消えた理由は一つしかない。
わたしやスコット、殿下から逃げたのだ。
それはわたし達と同じ、死んで時間が巻き戻ったんだと思った。
だから、あの子は戸惑い、わたしにビクビクしていたのだ。
殿下と会ったお茶会で気を失ったのは、記憶があって殿下が怖かったからなのだろう。
自分を殺したのは殿下だと思っているはずだ。
まさかマリーナとハウエル公爵の陰謀だとは知らないはずだ。
殿下が自分を処刑したと思っているエリーゼは、殿下に対して恐怖と嫌悪しかないだろう。
マリーナといつも寄り添い愛し合う姿しか見ていない。
わたしに対しては………冷たい親だと思っているはずだ。
わたしは仕事ばかりして娘を蔑ろにしていた。
殿下との結婚があの子の幸せだと思い込んでいたし、あの子を軟禁状態にした時も、本当の理由も言わず、殿下の愛するマリーナを虐めた罰として謹慎させた。
それは屋敷の者が、どこで噂を広めるかわからないので、本当らしく見せるためだった。
全てが終わってから伝えればいいと思っていた。
あの子の周りから悪意や余計なモノを全て取り除いて、幸せな結婚をさせてあげるつもりだった。
まさかマリーナと公爵が暴走して娘を処刑するなど思ってもいなかった。
わたしは今回の生の中で、マリーナとハウエル公爵の力を削ぐつもりでいる。
あいつは変に力を持ったから、更に王家を傀儡にして自分達のいいようにしようとした。
ならば力を削ぎ、弱小の貴族にするつもりだ。
今、殿下と一緒に王家の影に動いてもらって証拠を集めている。
すぐには無理だが、徐々に弱らせて今回は必ず阻止するつもりだ。
だが、エリーゼが行方不明になった今、どうあの子と接するべきなのかわからなくなった。
記憶があるなら、わたしの顔など見たくないはずだ。
自分を殺した一人だと思っているだろう。
殿下が殺人未遂犯としてエリーゼを連れて行った時、わたしがエリーゼを見捨てたと思っているはずだ。
犯罪者の娘を邪魔だから殿下にさっさと引き渡した父親。
エリーゼの認識だ。
わたしは頭を抱えて唸るしかなかった。
16歳の娘を絶望させて、首を切られて殺された。
壁を何度も叩き、手に血が滲んでも止めることが出来なかった。
あの子には記憶がある。
それはあの子が絶望の中、今を生きているということだ。
わたしは考えれば気づくことなのに、やり直してあの子を助けることしか考えていなかった。
あの子はわたしをどんな風にみて感じていたのだろう。
馬鹿なわたしは笑いかけ、声をかけた。
もう一度笑顔を取り戻したいなんて、簡単に考えていた。
わたしはとにかくあの子を必死で探した。
ここに居たくないなら、あの子にとって居心地のいい場所を見つけるつもりだ。
わたしと居たくないならそれでもいい。
わたしにはあの子と一緒にいる資格はないんだ。だけど、突然消えるのだけは、耐えられない。
エリーゼの死んだ時のことを思い出してしまう。
泣き叫び、怒り、後悔して、絶望の日々だった。
あの子のためなら、そしてスコットのためなら、わたしの命なんていくらでも差し出す。
だから、どうかあの子達にこれからの人生を楽しく幸せに過ごさせてやりたい。
わたしは、必死でエリーゼを探した。
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