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25話
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「かなり形振り構わず動いたんだな」
陛下はイライラしながら聞いていた。
「はい、お父様は危険を感じてこれ以上対立することはできませんでした」
「そして、スコット様はハウエル公爵派の残党に執拗に追われていました。そして戦って亡くなりました」
「スコットはニューベル公爵にとって邪魔だったんだろう。わたしが王族派でもし生きていたら王弟殿下を推していた。スコットも勿論王弟殿下の後ろ盾となるだろう。わが公爵家はニューベル公爵家に唯一意見を言え、同じかそれ以上の力を持っているからな」
この国の貴族の頂点に立つのがニューベル家とバセット家だ。
特に下に従える貴族の数、持っている領地、金、全て我が家が上回っている。
我が家は諸外国にもいくつかの領地を持ち、大きなルートを持っていて商売をしている。
さらに鉱山もいくつか所有しているので、金銭的にもかなり裕福だ。
ニューベル家からすると目の上のたんこぶであろう。
「お前が死んだことで王族派の力は緩んだんだな」
陛下がわたしをチラリと見た。
あの時のわたしは、周りを見て冷静に考えてはいられなかった。
エリーゼへの贖罪と生きる希望すらなく、こんな国がどうなろうとどうでもよかった。
「王族派はだんだん力を失い、貴族派がまた新たに力をつけていきました。レンス殿下は陛下が亡くなってすぐに王位につきました。そして宰相となったのが、ニューベル公爵です」
「それからの国は、税率が上がり庶民は今まで以上に貧しくなりました。少しでも反乱が起こそうとした者は見つかると一家全員捕まり、女子供関係なく処刑されました。それはもちろん貴族も一緒です」
「バセット家は、スコット様が亡くなり、ニューベル公爵の親戚の娘がが新しいバセット公爵になったジーク様の奥様になり、実質ニューベル公爵の傀儡になってしまいました」
「ジークが公爵?あんな力も頭もない奴が公爵など務まるわけがない。それも全てニューベルの奴が裏で動いたんだな」
「ニューベル公爵家は、国で強大な力も持ってしまいました。少しでも睨まれれば一家全員殺されます。誰も逆らうことはできませんでした。
皇后様は何人かの愛人達と離宮で贅沢三昧の暮らしをしていました。彼女は公務にも権力にも興味がなく、国がどうなろうと関係ないみたいでした」
「レンス陛下は、宰相に言われるまま動くだけ。いつも宰相であるお祖父様のご機嫌伺いばかりしていました」
「わたし達のお父様はこの国を捨てて、隣国へ移り住むことにしました。もちろんバレれば殺されます。
でもこの国にいても、王族派だったわたし達は何か理由を付けて殺されていたと思います。だから一か八かこの国から逃げることに賭けました」
カイラとエレンは辛い何かを思い出したのか涙が止まらなかった。
「逃げる途中、お父様達は殺されました。お母様達とわたし達は捕まりました」
二人は、泣き出した。
涙が止まらず話しができなくなっていた。
「……………す、すみません。陛下の前で……申し訳ございません。…………」
しばらくみんな黙って立っていた。
少し落ち着いた二人は、気持ちを持ち直して話し始めた。
「お母様やお姉様、妹や従姉妹達、女性はみんな娼館に売られました。もちろんわたし達もです」
「………そんな……」
わたしは何も言えず、顔が青くなった。
「そこで貴族達の慰み者になりました。10歳の妹もです。泣こうと叫ぼうと誰も助けてくれませんでした。ただ毎日地獄の中で知りもしない男達に無理矢理犯されるのです」
10歳のエレンとカイラの口から出てくる話に、お父様と陛下は怖い顔をして聞いていた。
「その中にはニューベル公爵もいました。彼は少女趣味でわたし達はよく相手をさせられました」
「その時に、話していた言葉……
陛下はユリシスに媚薬を盛られ、精神を操られていた馬鹿な男だと言っていました
それに5年間、ユリシスにずっと少量の毒薬を飲まされ続けて、医師にも分からないように少しずつ体調を悪くさせたと言っていました」
「ニューベル公爵がやはり全ての元凶か……」
陛下は怒りを露わにしていた。
「父上、僕もマリーナとハウエル公爵に言いように操られました。今回は、ハウエル公爵が他の貴族達に近寄り、甘い言葉を使って懐柔している証拠を握っています。
それから、領地での収入をかなり誤魔化して計上して税金も誤魔化しています」
「わたしが調べたところ、平民の可愛い子どもや男の子を言葉巧みに親に言って、屋敷に使用人として連れて来ています。そこに親しくなった貴族達に遊びに来てもらい体を売らせているそうです、いわゆる少年少女の高級娼館のようなものですね」
「そんな!なんて酷いの!」
わたしは、初めて二人を見た。
「どうしてわかっているのに止めないのですか?」
「今やっと場所を特定したところだ。今日陛下と話し合って、どのように踏み込むか決めようとしていた時に、ヴィクトリアから急ぎ知らせが入ったので、それを取りやめて3人で急いで来たんだ」
「陛下、貴方の弱さが全ての原因です。貴方がユシリス様の罠に嵌った事から、全てが悪い方へ行ったのでしょう?」
今まで黙って聞いていた院長先生が、陛下に向かって冷たく言った。
「ヴィクトリア、わたしが間違えていた。ユシリスに媚薬を盛られ操られていたとしても、ユシリスにのめり込んだのは間違いない。それから、ニューベル公爵が力を持ち始めさらに力を持とうとしたんだ、全てわたしの甘さが招いた」
「父上、僕もマリーナに同じように懐柔されて愛していたエリーゼを死なせてしまいました」
陛下はイライラしながら聞いていた。
「はい、お父様は危険を感じてこれ以上対立することはできませんでした」
「そして、スコット様はハウエル公爵派の残党に執拗に追われていました。そして戦って亡くなりました」
「スコットはニューベル公爵にとって邪魔だったんだろう。わたしが王族派でもし生きていたら王弟殿下を推していた。スコットも勿論王弟殿下の後ろ盾となるだろう。わが公爵家はニューベル公爵家に唯一意見を言え、同じかそれ以上の力を持っているからな」
この国の貴族の頂点に立つのがニューベル家とバセット家だ。
特に下に従える貴族の数、持っている領地、金、全て我が家が上回っている。
我が家は諸外国にもいくつかの領地を持ち、大きなルートを持っていて商売をしている。
さらに鉱山もいくつか所有しているので、金銭的にもかなり裕福だ。
ニューベル家からすると目の上のたんこぶであろう。
「お前が死んだことで王族派の力は緩んだんだな」
陛下がわたしをチラリと見た。
あの時のわたしは、周りを見て冷静に考えてはいられなかった。
エリーゼへの贖罪と生きる希望すらなく、こんな国がどうなろうとどうでもよかった。
「王族派はだんだん力を失い、貴族派がまた新たに力をつけていきました。レンス殿下は陛下が亡くなってすぐに王位につきました。そして宰相となったのが、ニューベル公爵です」
「それからの国は、税率が上がり庶民は今まで以上に貧しくなりました。少しでも反乱が起こそうとした者は見つかると一家全員捕まり、女子供関係なく処刑されました。それはもちろん貴族も一緒です」
「バセット家は、スコット様が亡くなり、ニューベル公爵の親戚の娘がが新しいバセット公爵になったジーク様の奥様になり、実質ニューベル公爵の傀儡になってしまいました」
「ジークが公爵?あんな力も頭もない奴が公爵など務まるわけがない。それも全てニューベルの奴が裏で動いたんだな」
「ニューベル公爵家は、国で強大な力も持ってしまいました。少しでも睨まれれば一家全員殺されます。誰も逆らうことはできませんでした。
皇后様は何人かの愛人達と離宮で贅沢三昧の暮らしをしていました。彼女は公務にも権力にも興味がなく、国がどうなろうと関係ないみたいでした」
「レンス陛下は、宰相に言われるまま動くだけ。いつも宰相であるお祖父様のご機嫌伺いばかりしていました」
「わたし達のお父様はこの国を捨てて、隣国へ移り住むことにしました。もちろんバレれば殺されます。
でもこの国にいても、王族派だったわたし達は何か理由を付けて殺されていたと思います。だから一か八かこの国から逃げることに賭けました」
カイラとエレンは辛い何かを思い出したのか涙が止まらなかった。
「逃げる途中、お父様達は殺されました。お母様達とわたし達は捕まりました」
二人は、泣き出した。
涙が止まらず話しができなくなっていた。
「……………す、すみません。陛下の前で……申し訳ございません。…………」
しばらくみんな黙って立っていた。
少し落ち着いた二人は、気持ちを持ち直して話し始めた。
「お母様やお姉様、妹や従姉妹達、女性はみんな娼館に売られました。もちろんわたし達もです」
「………そんな……」
わたしは何も言えず、顔が青くなった。
「そこで貴族達の慰み者になりました。10歳の妹もです。泣こうと叫ぼうと誰も助けてくれませんでした。ただ毎日地獄の中で知りもしない男達に無理矢理犯されるのです」
10歳のエレンとカイラの口から出てくる話に、お父様と陛下は怖い顔をして聞いていた。
「その中にはニューベル公爵もいました。彼は少女趣味でわたし達はよく相手をさせられました」
「その時に、話していた言葉……
陛下はユリシスに媚薬を盛られ、精神を操られていた馬鹿な男だと言っていました
それに5年間、ユリシスにずっと少量の毒薬を飲まされ続けて、医師にも分からないように少しずつ体調を悪くさせたと言っていました」
「ニューベル公爵がやはり全ての元凶か……」
陛下は怒りを露わにしていた。
「父上、僕もマリーナとハウエル公爵に言いように操られました。今回は、ハウエル公爵が他の貴族達に近寄り、甘い言葉を使って懐柔している証拠を握っています。
それから、領地での収入をかなり誤魔化して計上して税金も誤魔化しています」
「わたしが調べたところ、平民の可愛い子どもや男の子を言葉巧みに親に言って、屋敷に使用人として連れて来ています。そこに親しくなった貴族達に遊びに来てもらい体を売らせているそうです、いわゆる少年少女の高級娼館のようなものですね」
「そんな!なんて酷いの!」
わたしは、初めて二人を見た。
「どうしてわかっているのに止めないのですか?」
「今やっと場所を特定したところだ。今日陛下と話し合って、どのように踏み込むか決めようとしていた時に、ヴィクトリアから急ぎ知らせが入ったので、それを取りやめて3人で急いで来たんだ」
「陛下、貴方の弱さが全ての原因です。貴方がユシリス様の罠に嵌った事から、全てが悪い方へ行ったのでしょう?」
今まで黙って聞いていた院長先生が、陛下に向かって冷たく言った。
「ヴィクトリア、わたしが間違えていた。ユシリスに媚薬を盛られ操られていたとしても、ユシリスにのめり込んだのは間違いない。それから、ニューベル公爵が力を持ち始めさらに力を持とうとしたんだ、全てわたしの甘さが招いた」
「父上、僕もマリーナに同じように懐柔されて愛していたエリーゼを死なせてしまいました」
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