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別ルート もう一つの話。クロード編。⑤

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クロード殿下に思いを打ち明けてから、彼は南の領地へ帰って行った。

わたしはあと二年半の間、学生として過ごす。

クロード殿下は地元の学園であと半年で卒業して、そのまま領地で公爵としての勉強をしながら過ごすことになる。

ジョシュア様は早めに引退してクロード殿下に公爵の地位を譲るらしい。

ユシリス様が最近安定してきたので二人でゆっくりと別邸で暮らす予定だと聞いた。

そして、クロード殿下は、わたしのお父様にわたしとの婚約を申し込んだ。

お父様は何も言わずに
「エリーゼが決めたことだから」と承諾してくれた。

わたしは彼の婚約者となった。

レンス殿下はわたしに会いにきて、祝ってくれた。
「エリーゼ様おめでとうございます。幸せになって下さい」

ノアは不機嫌で
「エリーゼが決めたことだからね」
としか言ってくれなかった。

お兄様は
「エリーゼが幸せになるのなら、僕は何も言わないよ。でも、嫌なことがあったら言って欲しい。
いつでも君が帰って来れるように、この屋敷には君の居場所を作っておくからね」

うん、前回の記憶があるだけに、クロード殿下のこと信用していない。

婚約してからは長期休暇の時は南の領地を訪れることにしている。



ユシリス様は……


「お姉ちゃん、わたし約束守ってるわ」

「幸せになるって約束したから、ユシリスは頑張るね」

と、わたしと過ごした時間にいる時もある。

「レンス、クロード、お勉強は捗っているかしら?」

「今日はクロードの大好きなアップルパイを焼いたのよ」
と、子供達を世話している時間を過ごしている時もある。

そして……

「エリーゼ、クロードと幸せになってね」

「クロードは最近しっかりしてきたわ、これでジャシュアも安心ね」

など、「今」の時間を過ごすことも増えてきた。


どの時も、ユシリス様には過去の暗い時間を過ごすことはなくなった。

ジョシュア様はそんなユシリス様を慈しみ愛して、大切に守っている。

ユシリス様もジョシュア様といる時の顔は、幸せそうで落ち着いている。

このまま幸せな時間を過ごしていければいい。
これ以上の幸せは望まない。

そしてわたしの卒業パーティーの日、クロード様はわたしのために王都に来てくれた。

わたしは、前回今回合わせて、初めて彼のエスコートでパーティーに出ることになった。

ドレスはクロード様が贈ってくれた。

それに合わせて宝石はお父様。

靴と髪飾りはお兄様。

ブルーのシルクのドレスに金の糸を使った薔薇の刺繍。
背中は大きく開いて、スカートはプリンセスラインではあっても、フリルはつけない大人のドレスに仕上がっていた。

宝石はやはりわたしの瞳の色に合わせてベニトアイトの青い宝石を使っている。
チェーンと土台は金を使ってもらった。

わたしの色を2色。

クロード様の髪の色も金髪なので、本当は彼の色でもある。

わたしは彼の色を纏い、卒業する。

二人で初めて踊るダンスは不思議に息が合っている。

楽しい……でも少し気恥ずかしい。

彼の顔をずっと見つめる……

(こんなにずっと顔を見たのは初めてかもしれない)

ずっと避けていた。

顔を合わさないように、見ないように。

それが今は会えることが嬉しくて、でも恥ずかしくて、こんな気持ちになるとは思わなかった。



◇ ◇ ◇


エリーゼの卒業パーティー。

彼女のドレス姿を見てドキドキとしてしまった。


ずっと彼女だけを見てきた今回。

何故、前回はあんなに目を逸らしていたのだろう。

マリーナに気持ちを移すなんて、本当に馬鹿だった。

僕が好きなのも愛しているのも、エリーゼだけ。

いくら諦めようとしても諦めきれず、婚約を他の人から打診されてもどうしてもできなかった。

僕は一人で生きることを選んだ。

エリーゼが他の人と幸せになるなら僕は遠くから見守るつもりでいた。

もう、誰とも結婚するつもりはなかった。

エリーゼがあの時……

『クロード殿下、わたしは……貴方をお慕いしております。遅すぎてごめんなさい、意地を張っていてごめんなさい、嫌いと言い続けて嫌な態度ばかり取ってごめんなさい』

僕は夢なら覚めないで。

そう思わずにいられなかった。

だってエリーゼが僕を好きになってくれるなんて奇跡はないと思っていたから。

「エリーゼ、卒業おめでとう」

「クロード様ありがとうございます」

エリーゼの可愛らしい笑顔を僕は独り占めして誰にも見せたくない気分だった。

僕に向けて笑いかけてくれる。

それは僕が一番欲しくてでも無理だと諦めていたもの。

「早く僕の領地へ来て欲しい」
思わず心の声が口から出てしまった。

「ふふ、ありがとうございます。お世話になったみんなに最後に挨拶をして回って、全てを終わらせたらそちらに参ります」

「わかってる……ごめんね。実感がないんだ、早くエリーゼを自分のものだと確かめたいんだ。ずっと諦めていたからね、僕のそばに来てくれたら、それだけで僕は安心する」

「もちろんそばにいます。
クロード様、今回は浮気は許しませんよ」

エリーゼは、少し怖い顔で僕を見た。

「もう二度とあんな思いはさせない。僕は君と結ばれなくてもずっと君だけを思い続けてこの人生を終わらせるつもりだった。君の幸せを遠くから見守るつもりだったんだ」

「では、今回こそわたしを幸せにしてくれますか?
わたしも貴方を幸せにしますから」







END


最後まで読んでいただいてありがとうございました。

クロード殿下とのハッピーエンド。

エリーゼはやっと素直に自分の気持ちを伝えることができました。

これで番外編も別ルート編も終わりです。

お付き合いいただきありがとうございました。

                     たろ。


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