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27話 ジョセフィーヌ編
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イアン殿下の所へ側室として結婚が決まった時、恋人の護衛騎士と二人どうやって逃げようかと思い悩んでいた。
でもお母様が 「ジョセフィーヌ、この婚姻はあなた達を守るためなの。この国では身分差がある結婚は許されないの。だからわたしの祖国に嫁ぐことにして二人をこの国から逃すわ。あちらで側室となって一年過ごしなさい。その後のあなたは騎士と共に暮らそうと自由になれるの」
わたし達二人にはその選択肢しか残されていない。
たとえ一年間、違う男に抱かれたとしても避妊薬さえ飲めば懐妊することはない。
彼のそばで他の男に抱かれることは辛い。
それでも二人のためなら……
「一緒に逃げましょう」
彼が何度も言うけど逃げても知らない土地で生活出来るわけがない。
それに追われて逃げ回る生活など続くわけがないことも、わたしの祖国にいればわかる。何人もの人たちが身分差の愛で逃げて捕まり引き裂かれてきたのだ。
二人が結ばれるには、祖国では死ぬしかなかった。あの世で二人で暮らす他ないのだ。
お父様は厳格な人でわたし達のことはもちろん大反対だった。
でも病床のお母様の最後の願いを聞き入れてわたしをイアン様の側室として嫁がせてくれた。
「イアン殿下のところで一年辛抱しなさい。そのあとは二人で幸せになりなさい。もう二度と会うことはないだろう。お前の幸せを陰ながら願っている」
最後の別れにお父様の優しい言葉を聞きわたしは涙が止まらなかった。お父様は彼とのことを一番反対して引き裂こうとしていた。
でもお母様から願われたとは言えわたしに優しい言葉を下さるとは思わなかった。
そしてイアン殿下のところに嫁いだ。
お母様は避妊薬をわたしにそっと渡してくれた。
わたしは初夜の日、避妊薬を飲んで震える中、彼を待つ。
イアン様はわたしの部屋に来ると、黙ったまま立っていた。
そして、わたしの目を見ると、
「貴女を抱くことは出来ない、愛しているのはオリエだけなんだ」
と言った。
「……良かった……わたしにも愛する人がいます。父に無理矢理嫁がされて抵抗することができずに諦めておりました」
わたしは思わずホッとして涙を流した。
その時はすぐに本当のことを言うつもりはなく誤魔化した。
でも彼がオリエ様を愛していることがわかったのでわたしも愛しているのは護衛騎士だと告げた。
父親にバレないように二人はこっそりと愛を育んでいたこと。
認めてもらえないのはわかっていたので駆け落ちしようかと考えていた時にイアン様との結婚が決まり逃げることができなくなったこと。
護衛騎士の彼はそれでも、そばで守り続けたいとわたしについて来てくれた。
わたしが他の男と結婚して他の男に抱かれるとわかっていてもそばで寄り添ってくれようとした。
でも、お母様の出生の秘密とかお父様に1年したら離縁できることは伝えていない。
これは陛下に謁見した時にイアン様は知らないことだから伝えてはいけないと言われていた。
そして初夜の部屋にわたしの恋人が呼ばれた。
「君がジョセフィーヌの男か?」
「ジョセフィーヌ様には何の罪もございません、どうか罰するならわたしだけにしてください、お願いします」
彼は土下座をして地面に頭を擦り付けながらイアン様に頭を下げて必死でわたしの命を守ろうとした。
「俺は悪人か?」
「へ?」
彼はイアン様の言葉に頭を上げて、キョトンとした顔をした。
「俺が呼び出したのはお前やジョセフィーヌを断罪するためではない。父上から無理矢理ジョセフィーヌを側室として娶れと言われたが、俺が愛しているのはオリエだけなんだ」
「?」
「ハアー、俺はオリエしか愛せない。だが周囲には俺がジョセフィーヌを寵愛していると勘違いさせないとまた新たな側室を俺に当てがおうとするだろう。だから寵愛しているように振る舞うつもりだ。だがそれだけだ。お前とジョセフィーヌがどうしようと俺の知ったことではない。
ただ、もしジョセフィーヌに子どもが出来ても王位継承権は与えないし俺の子どもとして認知はしない。私生児になってしまうが、これだけは譲れない。そのことを覚悟して二人が付き合いたければ付き合えばいい。
数年辛抱してくれれば必ず離縁する。
だからそれまでジョセフィーヌを支えてやって欲しい。俺は愛するオリエだけで手一杯だから」
「……殿下に感謝いたします」
彼は深々と頭を下げて去って行った。
「オリエとの関係を何とかしないとこのままでは俺の方が離縁されてしまう」
彼深い溜息をついた。
そして、わたしはイアン様の事情を聞き、イアン様の手助けをすることになった。
ただ最初は「オリエ様に真実を話すことを勧めます」とは言ったのだけど、
「俺はオリエに向き合うことが出来ない」と、肩を落としていた。
あまりにも拗れた感情は、すぐにオリエ様に向き合えることはないとわかった。
わたし自身もイアン様がわたしに興味がないことにホッとしたし、恋人と過ごすことができる幸せでオリエ様のことまで考えることなんてなかった。
だってイアン様に愛されているのだから……傷つくなんて思っていなかった。
オリエ様に伝わっていないのに、わたしとイアン様はイチャイチャ(したふり)しているのに、オリエ様をわたし自身が傷つけているなんて考えていない……浅はかだった。
本宮から離宮に引っ越され、王太子妃としての仕事もなくなり、オリエ様は引きこもることになった。
でも、命が狙われているオリエ様には、安心だと思ってしまった。
わたしは自分の今の幸せに浮かれて周りをしっかり見ていなかった。ううん、見ようとしなかった。
早くジーナ様とのことが解決してしまえばわたしは離縁して恋人と幸せに暮らせる。
自分勝手な事しか考えていなかった。
でもお母様が 「ジョセフィーヌ、この婚姻はあなた達を守るためなの。この国では身分差がある結婚は許されないの。だからわたしの祖国に嫁ぐことにして二人をこの国から逃すわ。あちらで側室となって一年過ごしなさい。その後のあなたは騎士と共に暮らそうと自由になれるの」
わたし達二人にはその選択肢しか残されていない。
たとえ一年間、違う男に抱かれたとしても避妊薬さえ飲めば懐妊することはない。
彼のそばで他の男に抱かれることは辛い。
それでも二人のためなら……
「一緒に逃げましょう」
彼が何度も言うけど逃げても知らない土地で生活出来るわけがない。
それに追われて逃げ回る生活など続くわけがないことも、わたしの祖国にいればわかる。何人もの人たちが身分差の愛で逃げて捕まり引き裂かれてきたのだ。
二人が結ばれるには、祖国では死ぬしかなかった。あの世で二人で暮らす他ないのだ。
お父様は厳格な人でわたし達のことはもちろん大反対だった。
でも病床のお母様の最後の願いを聞き入れてわたしをイアン様の側室として嫁がせてくれた。
「イアン殿下のところで一年辛抱しなさい。そのあとは二人で幸せになりなさい。もう二度と会うことはないだろう。お前の幸せを陰ながら願っている」
最後の別れにお父様の優しい言葉を聞きわたしは涙が止まらなかった。お父様は彼とのことを一番反対して引き裂こうとしていた。
でもお母様から願われたとは言えわたしに優しい言葉を下さるとは思わなかった。
そしてイアン殿下のところに嫁いだ。
お母様は避妊薬をわたしにそっと渡してくれた。
わたしは初夜の日、避妊薬を飲んで震える中、彼を待つ。
イアン様はわたしの部屋に来ると、黙ったまま立っていた。
そして、わたしの目を見ると、
「貴女を抱くことは出来ない、愛しているのはオリエだけなんだ」
と言った。
「……良かった……わたしにも愛する人がいます。父に無理矢理嫁がされて抵抗することができずに諦めておりました」
わたしは思わずホッとして涙を流した。
その時はすぐに本当のことを言うつもりはなく誤魔化した。
でも彼がオリエ様を愛していることがわかったのでわたしも愛しているのは護衛騎士だと告げた。
父親にバレないように二人はこっそりと愛を育んでいたこと。
認めてもらえないのはわかっていたので駆け落ちしようかと考えていた時にイアン様との結婚が決まり逃げることができなくなったこと。
護衛騎士の彼はそれでも、そばで守り続けたいとわたしについて来てくれた。
わたしが他の男と結婚して他の男に抱かれるとわかっていてもそばで寄り添ってくれようとした。
でも、お母様の出生の秘密とかお父様に1年したら離縁できることは伝えていない。
これは陛下に謁見した時にイアン様は知らないことだから伝えてはいけないと言われていた。
そして初夜の部屋にわたしの恋人が呼ばれた。
「君がジョセフィーヌの男か?」
「ジョセフィーヌ様には何の罪もございません、どうか罰するならわたしだけにしてください、お願いします」
彼は土下座をして地面に頭を擦り付けながらイアン様に頭を下げて必死でわたしの命を守ろうとした。
「俺は悪人か?」
「へ?」
彼はイアン様の言葉に頭を上げて、キョトンとした顔をした。
「俺が呼び出したのはお前やジョセフィーヌを断罪するためではない。父上から無理矢理ジョセフィーヌを側室として娶れと言われたが、俺が愛しているのはオリエだけなんだ」
「?」
「ハアー、俺はオリエしか愛せない。だが周囲には俺がジョセフィーヌを寵愛していると勘違いさせないとまた新たな側室を俺に当てがおうとするだろう。だから寵愛しているように振る舞うつもりだ。だがそれだけだ。お前とジョセフィーヌがどうしようと俺の知ったことではない。
ただ、もしジョセフィーヌに子どもが出来ても王位継承権は与えないし俺の子どもとして認知はしない。私生児になってしまうが、これだけは譲れない。そのことを覚悟して二人が付き合いたければ付き合えばいい。
数年辛抱してくれれば必ず離縁する。
だからそれまでジョセフィーヌを支えてやって欲しい。俺は愛するオリエだけで手一杯だから」
「……殿下に感謝いたします」
彼は深々と頭を下げて去って行った。
「オリエとの関係を何とかしないとこのままでは俺の方が離縁されてしまう」
彼深い溜息をついた。
そして、わたしはイアン様の事情を聞き、イアン様の手助けをすることになった。
ただ最初は「オリエ様に真実を話すことを勧めます」とは言ったのだけど、
「俺はオリエに向き合うことが出来ない」と、肩を落としていた。
あまりにも拗れた感情は、すぐにオリエ様に向き合えることはないとわかった。
わたし自身もイアン様がわたしに興味がないことにホッとしたし、恋人と過ごすことができる幸せでオリエ様のことまで考えることなんてなかった。
だってイアン様に愛されているのだから……傷つくなんて思っていなかった。
オリエ様に伝わっていないのに、わたしとイアン様はイチャイチャ(したふり)しているのに、オリエ様をわたし自身が傷つけているなんて考えていない……浅はかだった。
本宮から離宮に引っ越され、王太子妃としての仕事もなくなり、オリエ様は引きこもることになった。
でも、命が狙われているオリエ様には、安心だと思ってしまった。
わたしは自分の今の幸せに浮かれて周りをしっかり見ていなかった。ううん、見ようとしなかった。
早くジーナ様とのことが解決してしまえばわたしは離縁して恋人と幸せに暮らせる。
自分勝手な事しか考えていなかった。
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