【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

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48話  キリアン編

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ターナがやっとエレン夫人と接触した。

最近はエレン夫人が慎重に動いて中々尻尾を掴ませてくれなかった。

カイザ様が国王に息子のクリス殿下のことを苦言を申し出てから、クリス殿下は謹慎させられて学園に通う以外にはあまり人と接触していなかった。

エレン夫人も様子を伺い、クリス殿下の教育係の時間を減らしていた。

俺がエレン夫人が気になったのは、彼女の持つ異様な空気だった。

彼女の周りから闇が持つ重たい空気を感じた。

それはどこかで感じたものと同じだった。

しばらくはそれが何かわからず、王宮内ですれ違うことがあったり、遠くから見かけることがあってもモヤッと何かを感じるだけだった。

彼女の名前はエレン・プラザ。

外国のとある貴族の未亡人で、今はルビラ王国にいる親戚のガイスラー侯爵の元に身を寄せている。

外国のとある貴族の未亡人だと言われている。
でもどうしても気になった俺は彼女の過去を調べた。

すると親戚のガイスラー侯爵から辿ってもどこにもエレン・プラザという名前と亡きプラザ侯爵など存在しなかった。

おかしい。

彼女の所作はとても綺麗で高位貴族の持つ優雅さや華やかさを兼ね備えていた。

でも記憶にない顔。でもあの空気感はどこかで見覚えがあった。

調べれば調べるほど謎が深まる。
だけど、調べていくとガイスラー侯爵は、エレン夫人が身を寄せるようになってから事業で失敗して出来た借金がなくなり傾きかけていた侯爵家に勢が戻ってきていた。

そんな時、バナッシユ国のゴードン様から連絡が届いた。

前王妃が収容所での爆発事故で行方不明になり、逃亡している可能性があるらしいと伝えられた。
足取りを調べたらルビラ王国に潜入して暮らしているかもしれないと言うのだ。

前王妃が隠し財産をルビラ王国にかなり隠し持っていることがわかった。

ルビラ王国のある小さな家を買取、そこに老夫婦を住まわせて、地下にお金や財宝を溜め込んでいたらしいと今頃になってわかった。

ただその場所は誰にもわからない。
何故ならその場所に運んだ者は毎回帰ってこないからだ。
場所を隠匿するために、誰にもわからないように隠した。
その財産をちらつかせて前王妃は誰かに脱走を手助けさせたのではないかと国王であるジャン様は考えているようだ。

俺がいるこのルビラ王国、奇しくもアイシャのいるこの国に。

アイシャに対する神の意地悪なのか?それとも偶然?

俺は前王妃の顔を覚えていない。
小さすぎて記憶にない。
似顔絵で送られてきたが今の所そんな女性は見当たらなかった。
もちろんこの国全ての人を探したわけではないが、あの前王妃が見窄らしく市井で平民として生きていくわけはない。
ならば……

ふと思い出したのがエレン夫人だった。

過去がわからない。
身を寄せている侯爵が突然借金がなくなる。

エレン夫人は確かに似顔絵の姿とは違う。

髪の色を変えて、鼻を高くして目元も一重から二重に変え、ぽっちゃりしていた体のラインを引き締めれば……確かに前王妃に似ている。

エレン夫人が前王妃だと気づいても証拠がない。

ただクリス殿下に近づいて教育係をしていること、たまにターナにも会い何かしら話していることがわかった。
クリス殿下がアイシャに怪我を負わせ、取り巻き達もアイシャに怪我をさせた。
ターナのアイシャへの態度が酷くなったのもこの一年だと聞いた。

全てエレン夫人がこの国にやって来てクリス殿下に近づいてからなのだ。

何かあの前王妃が動いている気はするのだが、全く証拠は出てこない。
そんな話も聞こえてこない。

国王も王妃もエレン夫人の優秀さに関心と信頼を寄せている。
クリス殿下はエレン夫人から教わり出してかなり優秀な成績を収めていると聞いた。

情報だけなら集められるが実際にエレン夫人にお会いすることは15歳で留学して来ただけの俺では難しい。
まず会う理由すらない。
それにゴードン様の義孫でサラの孫だと分かれば、エレン夫人が不信感を持たれ、逃げられても困る。
アイシャに前世で辛い思いをさせた元凶だとゴードン様に聞いている。

「悪」でしかない前王妃。
あの闇を持つあの重たい空気は、幼い自分が会った時に感じた奥底に残っていた記憶。

だから、会ったこともないはずのエレン夫人が気になったのだ。

エレン夫人が前王妃だとどうやって確定させるか悩んでいた。

ガイスラー侯爵側から証拠を探すしかない。

今は何人かの俺の部下に動いてもらっている。
ゴードン様が留学時につけてくれた者達だ。

エレン夫人の方はカイザ様に話してみることにした。
この国で信用できるのはカイザ様と恩師であるイルマナ様だけだ。

カイザ様はかなり驚いていた。
前王妃のことはアイシャのこともあり事情を知っているし、性格も把握している。

「あの前王妃ならこの国でアイシャを見つければまた何かして来てもおかしくはない。ただ今回は自ら動かず子供達を操っていたのかもしれないな」

「俺もそう思います。それでも貴方の孫のターナは操られていても、それを言い訳には出来ません」

「……わかっている、ターナのあれは元からだ。リサの傲慢さや我儘、それをしっかり受け継いでいる」

「俺は証拠が欲しい。貴方の孫を利用しようと思っています」

「そ、それは……」

「別に命の危険に晒そうとは思っていません。でもターナは矯正しなければいけません。ちょうどエレン夫人は教育係として王家で信頼される人物です。ハイド様にそのことをカイザ様が軽く話されておけばハイド様はその気になるのではないですか?」

「わたしにハイドを操れと?」

「さぁ?そこまではわかりませんが、カイザ様ならハイド様を誘導するのは簡単なことでしょう?」

俺はそして
「リサ様は邪魔なのでハイド様の母上のところにしばらくやって閉じ込めておけばいいのではないですか?リサ様より激しい性格なのであのリサ様でも少しは辛い思いをするのでは?」

「ハイドの母上か……あの気性は物凄く怖いぞ。わたしでも手に負えない、女のくせに前公爵の夫を尻に敷いていたからな。確かにハイドがリサをもう一度なんとかしようとしても、リサは反発するだけだろう、ハイドの母上にしっかり教育されてからの方がハイドの言うことを聞くかもしれないな……
はあー、気が重いがハイドの母上にリサのことを話すか……それもハイドにそうさせるように仕向けるとしよう」

「お願いします。あの二人を変えない限りアイシャが今世で幸せになることはありません。たとえそれであの二人が壊れて消えても仕方がないですしね」

「……キリアン、あの二人はアレでもわたしの娘と孫なんだ……まぁ、わたしもわかっていて二人をそうさせるんだ。変わらないか……」

カイザ様は少し暗い顔をしたが、やはり公爵であり大魔法使いと言われているだけある。

血が繋がっているが、切り捨てる時はきっちり切り捨てる。

そして、ハイド様はでターナをエレン夫人に託し、リサ様を母上に託した。

さすがカイザ様。

ハイド様には悪いが、今まで家庭を顧みなかったんだ。
俺たちの策略に引っ掛けられても文句は言わせない。

カイザ様の「囁き」の魔法はもちろんあまり知られていない。
人を思うように動かすことは、一歩間違えれば国をも動かしかねない、混乱や戦乱を招く恐ろしい魔法だから。

これでエレン夫人をとっ捕まえてやる。









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