【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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新しいお義母様と異母弟。

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ことの始まりは……

わたしが父親に愛されていないことから始まった。

 お母様が亡くなったのはわたしが6歳の時だった。亡くなって半年後新しい義母が我が家にやって来た。
 それも、お父様にそっくりな異母弟を連れて。
 異母弟は2歳だった。6歳のわたしはすぐに理解した。お母様がいる時にはもうお父様には別に愛する人がいたのだと。
 お父様は新しいお義母様を連れてわたしの部屋に来て「お義母様の言うことを聞いて異母弟を可愛がるように」と冷たい目でわたしに言った。

「お父様はお母様を愛してはいなかったのですね?」
 
 わたしは我慢できずに唇を噛み締めてお父様に言った。

バシンッ!

 お父様は体を小刻みに震わせていた。わたしを叩いてしまったことに対してなのかそれともわたしに腹が立ったからなのか。

 わたしの頬は真っ赤に腫れ上がった。そしてまた手を振り上げた。

ーーあ、もう一度叩かれる!

「ダイアナ様!!」
 わたしを可愛がってくれている侍女長のサリーはわたしを抱きしめて庇ってくれた。

「旦那様お願いです、ダイアナ様にこれ以上手を挙げないでください」

「うるさい!!ダイアナいいか?
 これ以上わたしの前でお前の母親の話はするな!お前の母親は死んだんだ。これからはここにいる人がお前の母親だ!わかったか?」

 そう言うと舌打ちをしてわたしの部屋から出て行った。

 新しいお義母様はその時わたしをどんな風に見ていたのだろう?わたしは叩かれたショックとお母様を裏切った父親への嫌悪でいっぱいで周りのことまで見ていなかった。

「ダイアナ様頬を冷やしましょう」
 サリーはわたしの腫れた頬を濡れたタオルで冷やしてくれた。
「サリーわたしは泣かないわ。お母様が泣いたらダメだって、悲しんだらダメだって、強くなりなさいって言ったの」

 お母様は亡くなるニ年前から体調が悪くて寝込んでいることが多かった。わたしは心配でいつもお母様のそばから離れようとしなかった。
 少しでも体調が悪くなると不安でいつも泣いてばかりだった。
 体調の悪いお母様に心配をかけてしまう、わかっていても不安で。そんな時お母様はわたしの頭を優しく撫でながら言った。

「ダイアナ泣かないで。わたしはあなたの笑った顔が好きよ、悲しまないで、強くなりなさい。いつでも笑っていて、あなたの笑顔が大好きなの」

 だからわたしは泣かない。





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