【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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 だからわたしは泣かない。

 でもわたしは笑うのが苦手だった。なのにお母様はわたしの笑った顔が好きだと言う。たぶん無意識にふと笑う時があるらしい。その笑顔が大好きなんだとお母様は言う。

 笑う練習をしたけど笑うのが苦手なわたしの作り笑顔は怖い。本人が言うのだから間違いない。
 だから見た目だけで悪役令嬢だと言われるのだろう。友人達はわたしの見た目ではなく中身の性格を知っているので怖がられることはないし、みんなわたしと仲良くしてくれる。

 ただ義母や異母弟、さらにまだ幼い異母妹からは怖がられているのか嫌われているのか、あまり関わろうとしてこない。
 同じ屋敷に住んでいても、わたしは6歳の頃から食事もお出かけも彼らと一緒にすることはない。
 わたし一人お留守番だ。避暑で領地に行く時も彼らだけで行っているみたい。わたしは気がつけばお屋敷に一人。
 まあ、使用人たちがたくさんいるので寂しいとか悲しいとかも思うことはない。みんなに気を使わなくて済むし、お父様と顔を合わせなくても済む。

 学校に行き出した13歳から週に二回は王宮へと通っている。お母様の友人である王妃様に会いに行っているのだ。わたしは王妃様の話し相手として、一応仕事として通っている。
 王妃様がお父様に許可を(無理矢理)得て通っているので怒られることも辞めさせられることもない。
 王妃様がわたしの部屋も用意してくれているので、何故か王宮に行く前日と当日はそこに泊まり、学校へ通う。
 これは王妃様曰くわたしの仕事のためらしい。
 おかげで屋敷に帰るのも週のうち三日ほど。元々顔を合わせることはあまりなかったけどさらに顔を合わせなくて済む日々が続いている。
 
 そんなある日お父様が、久々にわたしの部屋にやって来て婚約者をと言い出した。

「もう16歳なのだから婚約者は必要だろう」
と言うのだが、今までわたしに関心すらなかったくせに公爵家のためだけに政略結婚をさせようとしているのに腹が立った。
 検討中のようだが相手が決まれば父のことだから、婚約一年後には即結婚となってしまうことだろう。
 わたしを早く追い出したいあの人達にとっては週三日しかいなくても目障りで邪魔なのだろう。

ーーぶざけんな!わたしはアンタの道具じゃない!

と、言いたいところだけどまた反抗すれば頬を叩かれる。それだけで済めばいいけど外出禁止にでもされたらたまったものじゃない。

 わたしは王妃様に今の現状を話した。助けて欲しいとか思ったわけではない。
 ただ愚痴を聞いて欲しかった。お母様の親友の「おばさま」として。

「ダイアナは父親から決められた婚約者は嫌なのね?」

「はい、貴族に生まれたからには政略結婚が当たり前なのはわかっております。でもお父様から命令されて婚約することだけはどうしても嫌なんです」

「あなたは母親のエレファに見た目はそっくりなのに、意地っ張りなところは父親に似ているわね」
王妃様は苦笑してわたしの顔を見た。


ーーわたしは絶対に父になんて似ていないわ!
でも流石に王妃様に言い返すことはできない。


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