【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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キースVSお祖父様

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 ダイアナの寝顔を見て焦る気持ちを落ち着かせた。

 前公爵を捕まえるためにもまずは王宮へ行き報告をして全体の話をまとめないと動くことは出来ない。

 自室で睡眠をとらずに報告書をまとめた。

 日が昇り始めた頃、一人着替えて屋敷を出た。

「ダイアナを頼む。彼女が不安がるかもしれない。出来るだけそばにいてやってくれ」
 我が家の侍女長にダイアナのことをくれぐれも頼んで王宮へ急ぎ向かった。

 ダイアナの事件の報告をしている時にジャスティア殿下の事件も前公爵の仕業だとわかったのは団長が頭を抱えて話してくれたからだ。

 ジャスティア殿下をいいように操っていたのはバイゼント伯爵だが、このバイゼント伯爵をいいように動かしているのも前公爵だと言うことがわかった。

 ジャスティア殿下に「この薬はとても疲れた体に素早く効く薬」と紹介させたのはバイゼント伯爵に前公爵の声掛けがあったからだ。

 前公爵にとっては王妃が可愛がっている義娘が犯罪を犯せば王妃がダイアナに構うだけの余裕がなくなるだろうと予測してだった。
 さらにジャスティア殿下の犯罪は陛下と王妃への脅しのネタになると踏んでいた。
 もし捕まってもバイゼント伯爵だけで自分が捕まる事はない。
 元々バイゼント伯爵がやっていた違法薬物の売買、前公爵は何も犯罪は犯していない。ただ殿下にどうかと軽く口添えしただけ。証拠もない。
 バイゼント伯爵の周辺を調べていて彼の子飼いの商会の一人を取り調べてわかったことで、自供はあっても証拠がない。前公爵ほどの力を持った人をこの事件で捕まえるのは難しい。

「やはりダイアナの件で捕まえるしかない。ミリア様の尋問は?」

 他の騎士達に聞くと

「始めてはいるのですが、何も答えようとしません。ただ笑っているだけなんです」

「笑ってる?」

「はい、捕まったくらいで動揺していないし自分は悪くないと思っている感じです」

「じゃあ俺が交代するよ」

「お願いします」

 昨夜、ダイアナを助けてから騎士団の中では慌ただしい時間が流れている。

 王妃様が付けてくれていた「影」の報告書もまとめられている。ほぼ前公爵の犯罪の証拠がない中、「影」の見てきたことだけが証拠として残ることになるだろう。

 ただジャスティア殿下の犯罪は「影」を付けて調べていない。「影」が見たことは誤魔化すことができない。「影」は真実だけを述べるのでこの国で絶対的な証拠とされる。
 だからジャスティア殿下が違法薬物での売買をしていたことも証言されることは避けなせればいけない。

 前公爵は狡賢い狸だ。
 陛下達の弱みであるジャスティア殿下を使い犯罪をさせる。その弱みにつけ入り脅しのネタを手に入れる。

 陛下は殿下を切り捨てると言っている。王妃様は何があっても助けたいと頑張っている。

 ただ甘やかして与えるだけの愛情、不利になれば切り捨てる陛下。
 厳しくも愛情をかけていた義母である王妃様は、最後まで見捨てずになんとか助けようとしている。

 俺は殿下に対してなんの感情も湧かないが王妃様が足掻くのなら俺はそれに従うつもりだ。

「団長、とにかく前公爵を捕まえられるだけの証拠は揃っています。「影」のおかげで前公爵の発言が犯罪を犯していると立証されました。捕まえに行きましょう」
 
「早まるな、前公爵は狡猾だ。自分が捕まらないようにしているはずだ。勇足で捕まえられるはずの者を逃すことだけはしたくない」

「でも、早く捕まえないと!」

「そろそろ前公爵に付いているもう一人の「影」から報告があるはずだ。もう少しだけ待て」

「バイゼント伯爵の方ももうすぐ取り押さえる。前公爵とは今の所証拠がなく繋がっていないが何かしら口を割らせるつもりだ。
 そしてジャスティア殿下にはしばらく夜会やお茶会などの活動は自粛してもらうことになっている。本人にも今日話すことになっている。殿下がそれを知って少しでも反省してくれれば王妃様の気持ちも伝わるのだろうが、甘やかされて育った殿下にどこまで話が通じるのか……難しいところだな」

「わかりました、「影」の報告を待ちます」

 一旦話終わると、俺は前公爵についていた「影」からの報告書に目を通した。

 そこにはダイアナを鉱山を手に入れるために売る発言など腹立たしい報告が多かったが、信じられない彼の発言の報告も書かれていた。

『エレファ様を犯していた』
『ダニエルに媚薬を盛りミリアとの関係を強要していた』
『ダイアナに対しても何度となく性的な関係を強要しようとしたがダニエルがなんとか会わせないようにしていた』
『跡取りをミリアとの間に産ませることを強要していた』

 など、前公爵の人と思えない行動だった。
 息子の妻を犯す?
 それも脅していたらしい。

 あの美しく優しいエレファ様は脅されて無理やり犯されていたのか?夫は他の女を抱いていて?

 報告書を投げ捨てたい気持ちになりながら、前公爵をなんとかしなければダイアナが安心して暮らすことは出来ないとしみじみ思った。
 酷い父親でしかない公爵も本能的に前公爵とダイアナを会わせないようにしていたのだろう。

 公爵自身は父親のしていたことを全て知らないようだ。公爵自身も父親の言いなりになっていた、そんな中で唯一ダイアナに対してだけは手を出させないようにしていたらしい。
 ただそのやり方はダイアナには伝わらないだろう。

 




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