【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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王城にて。

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 無理矢理前公爵を連行した。

 屋敷にいた護衛騎士達は抵抗したのでそのまま捕まえさせて全員を連行した。

 馬車の中で前公爵は
「このガタガタした馬車はなんだ!」
 と不満を言った。
 連行する馬車に、乗り心地など考慮しない。
 まだこの馬車はきちんと座席があるし、座るところにクッションがあるんだから十分じゃないかと思う。
 黙っていると
「ったく今時の若い者は礼儀すらないのか!ダイアナはわたしのものだ。エレファが亡くなってからはあの子が代わりなんだ。なのにダニエルはダイアナに会わせようとしないし、国王達は勝手にお前と婚約させるしわたしの思うようにいかない。お前はいずれこの国から追い出してやるから待っていろ」

 ーーあんたはもう終わりだ。

 その一言をぐっと飲み込んだ。

 今はまだ陛下から呼び出されただけ。罪を告げて断罪するのはもう少し我慢だ。

 馬車の中一人文句を言う前公爵を横目でみながらもずっと黙り続ける。
 ひと月の間、前公爵は貴族を入れるための隔離する塔で過ごすことになった。
 そこでは「わたしは帰る!」「なぜこんなところにいないといけないのか」など横柄な態度で過ごしていた。自分が犯罪者だと忘れているのか自覚すらないのか。









 前公爵を連れてきたのは王宮の間。

 何を勘違いしているのか前公爵はまだ客だと思っているようだ。
 なぜこの間にしたのか。
 それはジャスティア殿下の事件が絡んでいるからだ。

 彼女の罪は無かったことにして、彼の罪だけを認めさせるためにここにいるのは団長と副団長の俺とそして陛下と王妃、それからジャスティア殿下本人。

 あとは宰相にも証人として来てもらった。

 ダイアナはこの場にはいない。王妃に頼んで安心して過ごせる場所で過ごしてもらっている。もうこれ以上彼女をこんな下劣な男と関わらせたくない。
 血が繋がっていることも忘れさせてやりたい。

「久しぶりですな、陛下、王妃」

 自分の方が上のように横柄な態度で話しかける前公爵。陛下は怒ることもなく黙っていた。

 王妃様は呆れた顔をしつつもやはり返事はしなかった。
 二人とも前公爵に対していつも通りに接するつもりのようだ。

「二人とも相変わらずですね、そんなことでこの国は大丈夫なのでしょうか?もっと自分の思いを発言していかなければ貴族達に侮られます。それに陛下、貴方のように娘に甘いと碌な子に育たない。噂は聞いております。色々と問題を起こされているようですね。わたしがいい嫁ぎ先をご紹介いたしましょう。この国に少しでも有利となる婚姻は大切なことですからね」

「カステル、娘の婚姻はわたしが決める。そなたの力は借りぬ」

 陛下はやはり怒ることもなく答えた。

「カステル、それよりも貴方は色々として回っているようね」

「何をでしょう?」
 ニヤニヤ笑いながら王妃を見ていた。

「あら?もう歳だから自分のしたことは忘れたのかしら?」

「さあ、何もしておりませんので忘れることはありません」

「そう、忘れることはないのね?」

「ええ、もちろんです。わたしは記憶力だけはしっかりありますからね」

「宰相、カステルがそう言ってるわ。きちんと覚えておいてね」

「はい、わかりました」

 すると団長が前公爵の前に立った。

「バーランド前公爵、貴方が鉱山とお金の代わりに孫であるダイアナ様を売ろうとしたことはわかっております」

「は?売るなどとは。わたしは可愛い孫の嫁ぎ先を決めただけだ」

「しかしこちらには売買契約書があります。これは貴方の屋敷から見つけ出したので確固たる証拠になります」

「わ、わたしの屋敷の中を勝手に!ふざけるな!それも罪になるだろう!」

 真っ赤な顔をして怒鳴る前公爵に団長は全く動じない。
「バーランド前公爵、貴方にはバイゼント伯爵を使い違法薬物を売り捌いているとある人物から告発があった。それを元に貴方を調べたら隣国の違法薬物を輸入していると情報が入って来た。
 だから「影」を使い貴方のことを調べることにした。「影」は見たことをそのまま話すし証言する。彼らの話は絶対だ。嘘はつかないし誤魔化しもきかない。
 その影からの報告が、貴方のこの売薬契約書とここ数ヶ月の貴方の動きを記録したこの用紙だ。ここにいるみんなが全て読んでいる」

「わたしの記録?わたしはそれなりに歳です。忘れていることの一つや二つありますよ」

 前公爵は陛下を見てニヤッと笑った。まだ誤魔化せると思っているようだ。

「それに売り捌いているのは……誰だったのでしょうね?」
 今度はジャスティア殿下を見てニヤニヤと笑い出した。

「バーランド前公爵、君は歳なんだろう?忘れていることもあるらしいな」
 陛下は顔色を変えることなく淡々と言った。

「ええ、だがこのことは忘れていませんよ?」

 前公爵の言葉に俺は横から話に加わった。

「ジャスティア殿下に似せた令嬢に違法薬物を紹介して、その令嬢がニセ殿下になりすまし、殿下の顔をよく知らない令嬢達に売りつけたことはこちらでも掴んでいます」

「はあ?バイゼント伯爵は確かにジャスティア殿下に違法薬物を紹介したはずだ。わたしがそのように指示して紹介したんだ」

「陛下、お聞きになりましたか?バーランド前公爵が違法薬物を偽物のジャスティア殿下に紹介したんです」
 俺は冷たく言い放った。

「ち、違う!ジャスティア殿下に確かに紹介させたんだ」

「前公爵、ジャスティア殿下はその頃大病をされて外に出ることはできませんでした。これは陛下も王妃様もご存知のことです。お二人が証明してくださいます。ここに診断書もございます」

 前公爵は目を見開いて俺を睨みあげた。

「いつこの馬鹿娘が寝込んでいたんだ?そんな話一度も聞いたことなんかないわ」

「もちろん王族のご病気のことです。敢えて大きくならないようにしておりましたので知らない方の方が多いと思われます」
 俺がそう答えると前公爵はジャスティア殿下の方を見た。

「おい殿下、貴女がいつ寝込んだと言うのです?健康でよく食べ我儘三昧の馬鹿娘、寝込むことなどあり得ないだろう?馬鹿は寝込まないと聞いたことがあるからな」

 ーー思わず首を縦に振りそうになりながらも俺はチラッとジャスティア殿下を見た。

 ジャスティア殿下は赤い顔を通り越して真っ赤っかになって目が吊り上がりフーフーと荒い息をしているのがわかった。
 それを陛下が「騒ぐな!」と諌めている。







◆ ◆ ◆


遅くなりました。

お盆はやはり忙しいです。゚(゚´Д`゚)゚。







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