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シエル編①
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ライナは幼馴染でいつも俺にくっついてくる。
それが可愛くて嬉しいと感じていたのはいつまでだったのだろう。
瞳が大きく愛らしいライナ。いつも楽しそうに俺の後にくっついて「シエル!」と言ってくるのを可愛いと思っていた。
男爵家の三男の俺はいずれ平民になるか自分の力で功績を上げ一代限りの準男爵を承るか、どこかの婿に入るか……どれにしても自分の力で生き抜くしかない。
ならば……騎士になろうと思った。平民になっても家庭を作り十分生きていける。自分の力で生きていけるんだ。
そんな時ライナとの婚約の話が持ち上がった。男爵家の一人娘で商会もやっていて裕福な家庭。
両親同士が仲が良くてライナとの婚約を喜んでくれた。でも俺は……自分の力で這い上がりたかった。ライナのことも出来れば俺の力で勝ち取りたかった。
好きだと言ってから婚約を申し込みたかった。
周りからは「玉の輿」だとか「お前いいな」と羨ましがられるが俺はそれが腹立たしかった。
それでもライナと一緒にいられることは嬉しかった……はずだった。
まだライナが12歳の頃
「シエルこれ初めて作ったお菓子なの」
少し歪なクッキーを恥ずかしそうに渡して
「不味かったら捨ててくれていいから」
と俺の顔色を見ているライナ。
「美味しいよ」
俺のその言葉にパァッと明るい顔になって
「良かった喜んでもらえて」とホッとするライナ。
ーーー中等部の騎士課へ通っている頃のこと
「シエル明後日一緒にお祭りに行かない?」
そう言って俺の鍛錬の邪魔をするライナに
「鍛錬の時間が減るからごめん」と断ると
「そうだよね我儘言ってごめんなさい」とシュンとなって謝るライナ。
当日気になってライナに会いに行くと、従兄弟のバズールと楽しそうに
「もうバズール!お祭りに行くのにどうしてこんな格好しないといけないの?」
「街ではシンプルなワンピースに三つ編みくらいが丁度いいんだ、変に目立つと犯罪に巻き込まれるからな」
「そうなの?」
バズールは後ろを向いているライナの髪をそっと触り髪先にキスを落とした。
ライナはそれに気がつかず二人は楽しそうに話し込んでいた。
二人で楽しそうに話す姿を見て俺は何も言わずに黙って帰った。
屋敷の使用人には俺が来たことは言わないで欲しいと頼んだ。
ライナがあんな気軽に話す姿を俺は見たことがなかった。
いや婚約する前はライナはあんな感じだった。
今のライナは俺の前ではいつも頬を赤く染めて恥ずかしそうに話す姿しか知らない。
ーーーーー
14歳になったライナはどんどん可愛くなっていった。
大きなブルーの瞳、ふわふわとした明るい栗色の髪、愛らしい顔立ちに一つ上の俺たち騎士課でも人気があった。
「お前いいよな、ライナちゃんめっちゃ可愛い」
と良く言われていたのに、ある日友人の一人が
「なあ、あのライナちゃんっていつもバズール・フェルドナーと一緒にいるけど仲が良過ぎないか?」
と、俺が気にしていたことを言われてしまった。
「……従兄弟なんだ」
「あ、だから親しいんだ。なんだ浮気してるのかと思った。そんな訳ないよな、ライナちゃんってシエル一筋だもんな」
「……あぁ」
俺はライナと幼馴染だからバズールのことも知っている。
たまたまライナの屋敷でバズールやカイリに会ったら四人でよく遊んでいた。
バズールがライナのことを好きなのも分かっていた。でもライナは俺のことが好きなんだ。だからバズールのことなんか気にも止めていなかった。
なのに……二人が仲良く話しているだけでもイライラする。
二人が同じ年でクラスも一緒なのだから仕方がないのはわかっているのに。
どうしても我慢できなくなって昼休みになると鍛錬なんかそっちのけでライナのところへ行った。
「ライナ一緒にお昼を食べよう」
「うん、いいの?鍛錬は?」
「今日は大丈夫、放課後その分頑張るから」
「嬉しい、シエルとお昼食べるの久しぶりだわ」
ライナが喜んでくれる姿を見てこれからは一緒に食べるのも悪くはないなと思った。
鍛錬は自主なので別に絶対しなくてはならないわけではない。
放課後でも朝でも夜でも時間は作れるのだから。
ただ今までは騎士課の女子達が一緒に食べようと言ってくるのが煩わしくて急いで昼食を食べて友達と鍛錬をしていた。だからライナが中等部に入学してからもそれがいつものことだから一緒に食べようなんて思いつかなかった。
こんなに喜んでくれるなんて……俺は浮かれていた。
なのにある日の放課後、ライナとバズールが二人で馬車に乗る姿を見てしまった。
ただそれだけなのに俺は呆然と見送るしか出来なかった。
あとで気になってそのことをライナに聞いたら
「バズールと一緒に帰った?あ、うん、お祖母様に呼ばれたので馬車に乗せてもらったの。お祖母様がね、シエルと一緒に行ったらどうかって演劇のチケットをくれたの」
ーー俺と?演劇?
二人の後ろ姿を呆然と見送った時のことを思い出して俺はついイラッとして
「俺はいけない」と答えてしまった。
「………そうだよね、シエルは忙しいものね。ごめんなさいまた我儘言っちゃったね。お母様と行ってくるわ」
「うん、そうして。必ずライナの母上と行って来て」
ーーバズールとだけはいかないで……
俺はこんなに心が狭いのか。
バズールの馬車に乗ったのはお祖母様に会いに行ったから。なのに……こんな事でヤキモチ妬くなんて……
俺はいつもイライラしていた。
それが可愛くて嬉しいと感じていたのはいつまでだったのだろう。
瞳が大きく愛らしいライナ。いつも楽しそうに俺の後にくっついて「シエル!」と言ってくるのを可愛いと思っていた。
男爵家の三男の俺はいずれ平民になるか自分の力で功績を上げ一代限りの準男爵を承るか、どこかの婿に入るか……どれにしても自分の力で生き抜くしかない。
ならば……騎士になろうと思った。平民になっても家庭を作り十分生きていける。自分の力で生きていけるんだ。
そんな時ライナとの婚約の話が持ち上がった。男爵家の一人娘で商会もやっていて裕福な家庭。
両親同士が仲が良くてライナとの婚約を喜んでくれた。でも俺は……自分の力で這い上がりたかった。ライナのことも出来れば俺の力で勝ち取りたかった。
好きだと言ってから婚約を申し込みたかった。
周りからは「玉の輿」だとか「お前いいな」と羨ましがられるが俺はそれが腹立たしかった。
それでもライナと一緒にいられることは嬉しかった……はずだった。
まだライナが12歳の頃
「シエルこれ初めて作ったお菓子なの」
少し歪なクッキーを恥ずかしそうに渡して
「不味かったら捨ててくれていいから」
と俺の顔色を見ているライナ。
「美味しいよ」
俺のその言葉にパァッと明るい顔になって
「良かった喜んでもらえて」とホッとするライナ。
ーーー中等部の騎士課へ通っている頃のこと
「シエル明後日一緒にお祭りに行かない?」
そう言って俺の鍛錬の邪魔をするライナに
「鍛錬の時間が減るからごめん」と断ると
「そうだよね我儘言ってごめんなさい」とシュンとなって謝るライナ。
当日気になってライナに会いに行くと、従兄弟のバズールと楽しそうに
「もうバズール!お祭りに行くのにどうしてこんな格好しないといけないの?」
「街ではシンプルなワンピースに三つ編みくらいが丁度いいんだ、変に目立つと犯罪に巻き込まれるからな」
「そうなの?」
バズールは後ろを向いているライナの髪をそっと触り髪先にキスを落とした。
ライナはそれに気がつかず二人は楽しそうに話し込んでいた。
二人で楽しそうに話す姿を見て俺は何も言わずに黙って帰った。
屋敷の使用人には俺が来たことは言わないで欲しいと頼んだ。
ライナがあんな気軽に話す姿を俺は見たことがなかった。
いや婚約する前はライナはあんな感じだった。
今のライナは俺の前ではいつも頬を赤く染めて恥ずかしそうに話す姿しか知らない。
ーーーーー
14歳になったライナはどんどん可愛くなっていった。
大きなブルーの瞳、ふわふわとした明るい栗色の髪、愛らしい顔立ちに一つ上の俺たち騎士課でも人気があった。
「お前いいよな、ライナちゃんめっちゃ可愛い」
と良く言われていたのに、ある日友人の一人が
「なあ、あのライナちゃんっていつもバズール・フェルドナーと一緒にいるけど仲が良過ぎないか?」
と、俺が気にしていたことを言われてしまった。
「……従兄弟なんだ」
「あ、だから親しいんだ。なんだ浮気してるのかと思った。そんな訳ないよな、ライナちゃんってシエル一筋だもんな」
「……あぁ」
俺はライナと幼馴染だからバズールのことも知っている。
たまたまライナの屋敷でバズールやカイリに会ったら四人でよく遊んでいた。
バズールがライナのことを好きなのも分かっていた。でもライナは俺のことが好きなんだ。だからバズールのことなんか気にも止めていなかった。
なのに……二人が仲良く話しているだけでもイライラする。
二人が同じ年でクラスも一緒なのだから仕方がないのはわかっているのに。
どうしても我慢できなくなって昼休みになると鍛錬なんかそっちのけでライナのところへ行った。
「ライナ一緒にお昼を食べよう」
「うん、いいの?鍛錬は?」
「今日は大丈夫、放課後その分頑張るから」
「嬉しい、シエルとお昼食べるの久しぶりだわ」
ライナが喜んでくれる姿を見てこれからは一緒に食べるのも悪くはないなと思った。
鍛錬は自主なので別に絶対しなくてはならないわけではない。
放課後でも朝でも夜でも時間は作れるのだから。
ただ今までは騎士課の女子達が一緒に食べようと言ってくるのが煩わしくて急いで昼食を食べて友達と鍛錬をしていた。だからライナが中等部に入学してからもそれがいつものことだから一緒に食べようなんて思いつかなかった。
こんなに喜んでくれるなんて……俺は浮かれていた。
なのにある日の放課後、ライナとバズールが二人で馬車に乗る姿を見てしまった。
ただそれだけなのに俺は呆然と見送るしか出来なかった。
あとで気になってそのことをライナに聞いたら
「バズールと一緒に帰った?あ、うん、お祖母様に呼ばれたので馬車に乗せてもらったの。お祖母様がね、シエルと一緒に行ったらどうかって演劇のチケットをくれたの」
ーー俺と?演劇?
二人の後ろ姿を呆然と見送った時のことを思い出して俺はついイラッとして
「俺はいけない」と答えてしまった。
「………そうだよね、シエルは忙しいものね。ごめんなさいまた我儘言っちゃったね。お母様と行ってくるわ」
「うん、そうして。必ずライナの母上と行って来て」
ーーバズールとだけはいかないで……
俺はこんなに心が狭いのか。
バズールの馬車に乗ったのはお祖母様に会いに行ったから。なのに……こんな事でヤキモチ妬くなんて……
俺はいつもイライラしていた。
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