8 / 55
彼と彼女とわたし。
しおりを挟む
「お久しぶりです」わたしは食べていたスプーンを慌ててお皿に置いて、席を立った。
この場所では一つ年上の先輩。そして爵位も侯爵令嬢であるイザベラ様。
横で「何あたふたしているのよ?」とわたしをつっつくマリアナに「やめて」と小さな声で言ってから二人とそして周囲にいる先輩達の顔を見た。
そこにはスティーブ様とイザベラ様、スティーブ様の友人のルーク様とテオドール様、あと知らない二人の令嬢がわたし達を見ていた。
スティーブ様の友人の二人は面識はあるもののあまり話したことはない。
だけどわたしが婚約者だと言うことは知っている……はず⁈
わたしは特に挨拶以外会話も浮かばず、イザベラ様が何か言ってくるのを静かに待っていた。
「スティーブ、やっぱりセレン様って酷いわ。黙ってわたしを睨んでいるわ」
ーーえ?睨む?わたし自慢ではないけど目つきは悪いと言われたことはない。
キョトンとした顔をしたのがわかったのかマリアナが立ち上がった。
「セレン、まだ残っているわよ。さっさと食べなさい」そう言ってわたしを座らせてスプーンを持たせた。
そしてマリアナはにこりと微笑み
「先輩方は後輩に挨拶に来てくれたのですわよね?挨拶したのだからそれ以上何を言えと言うのです?睨む?こんな可愛らしいわたしのセレンが睨むわけないでしょう?貴女のその目、腐っているのですか?」
「ぶっほお!!」
食べていた物を吐きそうになり咽せた。
ーーマリアナ、駄目だよ!イザベラ様は強かですぐ周りを味方につける厄介な人なの!
心の中で叫んでいたら、ブラッドがわたしの背中を摩ってくれた。
「セレン、大丈夫か?苦しそうだぞ」
「あ、うん、だ、だい……」
ブラッドに「ありがとう」と言おうと思って下を向いていたけど上を向く………と斜め前に立っていたスティーブ様の冷たい視線が痛いほど突き刺さってきた。
「セレン、来い」突然わたしの前に来て腕を掴み、スティーブ様が引っ張って連れて行こうとした。
「痛いっ」
わたしの声にブラッドが「何するんですか?暴力はやめてください」と勇気ある一言を言ってくれた。
「ブラッド」
思わず「ありがとう」の気持ちを込めて名前を呼ぶとわたしの腕を掴んでいるスティーブ様から冷たい氷のような空気が流れてきた。
「君には関係ない。セレン行くぞ」
スティーブ様の力はとても強くて仕方なくついて行くことにした。
「セレン、後で助けるから!」と全く助ける気がないマリアナの声も聞こえてきた。
マリアナはわたしがスティーブ様の婚約者だと知っている。だからわたしが連れて行かれても動じることなく「スティーブ様なら仕方がないわね」と呟くと何もなかったかのように席に座り再び食事を始めた。
イザベラ様は「スティーブ、何?何でセレン様なんかに構うのよ?」とかなりお怒りの様子。
ルーク様とテオドール様がイザベラ様に「まあまあ」「食事でもしよう」と言っているのが後ろから聞こえてきた。
食堂を出て廊下をひたすら歩いた。
まだわたしの腕はしっかり掴まれていた。
そして空き教室に入るといきなり壁にわたしを押しやった。
「痛っ!もうさっきから何?腕を掴んだり引っ張って無理やり歩かせたり、今度は壁に押しやられたと思ったらわたしを睨みつける。スティーブ様ってやっぱり変わっていないんですね?」
何だか悔しかった。
三年ぶりに会っても話しかけてもくれない。
学校でもわたしのことを見ようともしない。
なのに……イザベラ様とは相変わらず仲が良い。またわたしのことを責めるつもりでこんなところまで連れてくるなんて……腹が立って仕方がなかった。
「イザベラ様がわたしが睨んだと言ったからわたしに文句を言いたいんでしょう?
昔っからそうですよね?どんなにイザベラ様がわたしを馬鹿にしたり意地悪をしても、イザベラ様が言ったことしか信じない。何もしていないのにわたしが悪くてわたしがいつも怒られていたもの」
悔しくて唇を思いっきり噛んでしまった。
ーー痛っ。血が……
だけどスティーブ様の前でだけは泣きたくない。
壁に押し付けられ、腕を掴まれているのを必死に何とか逃れようともがいた。
「僕は……」
私の腕を離すと、壁をドンっと叩いた。
「くそっ」
この場所では一つ年上の先輩。そして爵位も侯爵令嬢であるイザベラ様。
横で「何あたふたしているのよ?」とわたしをつっつくマリアナに「やめて」と小さな声で言ってから二人とそして周囲にいる先輩達の顔を見た。
そこにはスティーブ様とイザベラ様、スティーブ様の友人のルーク様とテオドール様、あと知らない二人の令嬢がわたし達を見ていた。
スティーブ様の友人の二人は面識はあるもののあまり話したことはない。
だけどわたしが婚約者だと言うことは知っている……はず⁈
わたしは特に挨拶以外会話も浮かばず、イザベラ様が何か言ってくるのを静かに待っていた。
「スティーブ、やっぱりセレン様って酷いわ。黙ってわたしを睨んでいるわ」
ーーえ?睨む?わたし自慢ではないけど目つきは悪いと言われたことはない。
キョトンとした顔をしたのがわかったのかマリアナが立ち上がった。
「セレン、まだ残っているわよ。さっさと食べなさい」そう言ってわたしを座らせてスプーンを持たせた。
そしてマリアナはにこりと微笑み
「先輩方は後輩に挨拶に来てくれたのですわよね?挨拶したのだからそれ以上何を言えと言うのです?睨む?こんな可愛らしいわたしのセレンが睨むわけないでしょう?貴女のその目、腐っているのですか?」
「ぶっほお!!」
食べていた物を吐きそうになり咽せた。
ーーマリアナ、駄目だよ!イザベラ様は強かですぐ周りを味方につける厄介な人なの!
心の中で叫んでいたら、ブラッドがわたしの背中を摩ってくれた。
「セレン、大丈夫か?苦しそうだぞ」
「あ、うん、だ、だい……」
ブラッドに「ありがとう」と言おうと思って下を向いていたけど上を向く………と斜め前に立っていたスティーブ様の冷たい視線が痛いほど突き刺さってきた。
「セレン、来い」突然わたしの前に来て腕を掴み、スティーブ様が引っ張って連れて行こうとした。
「痛いっ」
わたしの声にブラッドが「何するんですか?暴力はやめてください」と勇気ある一言を言ってくれた。
「ブラッド」
思わず「ありがとう」の気持ちを込めて名前を呼ぶとわたしの腕を掴んでいるスティーブ様から冷たい氷のような空気が流れてきた。
「君には関係ない。セレン行くぞ」
スティーブ様の力はとても強くて仕方なくついて行くことにした。
「セレン、後で助けるから!」と全く助ける気がないマリアナの声も聞こえてきた。
マリアナはわたしがスティーブ様の婚約者だと知っている。だからわたしが連れて行かれても動じることなく「スティーブ様なら仕方がないわね」と呟くと何もなかったかのように席に座り再び食事を始めた。
イザベラ様は「スティーブ、何?何でセレン様なんかに構うのよ?」とかなりお怒りの様子。
ルーク様とテオドール様がイザベラ様に「まあまあ」「食事でもしよう」と言っているのが後ろから聞こえてきた。
食堂を出て廊下をひたすら歩いた。
まだわたしの腕はしっかり掴まれていた。
そして空き教室に入るといきなり壁にわたしを押しやった。
「痛っ!もうさっきから何?腕を掴んだり引っ張って無理やり歩かせたり、今度は壁に押しやられたと思ったらわたしを睨みつける。スティーブ様ってやっぱり変わっていないんですね?」
何だか悔しかった。
三年ぶりに会っても話しかけてもくれない。
学校でもわたしのことを見ようともしない。
なのに……イザベラ様とは相変わらず仲が良い。またわたしのことを責めるつもりでこんなところまで連れてくるなんて……腹が立って仕方がなかった。
「イザベラ様がわたしが睨んだと言ったからわたしに文句を言いたいんでしょう?
昔っからそうですよね?どんなにイザベラ様がわたしを馬鹿にしたり意地悪をしても、イザベラ様が言ったことしか信じない。何もしていないのにわたしが悪くてわたしがいつも怒られていたもの」
悔しくて唇を思いっきり噛んでしまった。
ーー痛っ。血が……
だけどスティーブ様の前でだけは泣きたくない。
壁に押し付けられ、腕を掴まれているのを必死に何とか逃れようともがいた。
「僕は……」
私の腕を離すと、壁をドンっと叩いた。
「くそっ」
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
1,734
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる