【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ

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さぁ入学だ!

 朝早くから高級ないつもの馬車に乗ってマリアナが迎えに来てくれた。

 伯爵家の馬車と侯爵家の馬車では確かに違う。造りも乗り心地も……

「さあ!いざ出発よ!」

「もう!まだ早すぎるって!後1時間は余裕があるのよ?」

「何言ってるの!初日が肝心よ!田舎者だと舐められたらどうするの?」

「わたしは元々王都で暮らしていたから別に田舎者ではないのだけどーーー」

「うるさいわね!どうせわたしは初めての王都暮らしよ!それの何が悪いの?
 自然豊かな領地での暮らしはとても最高だったわ。でもこれから婚約者探しや社交会デビューも待っているから仕方なく王都へ来たの」

「わかってるわ。急いで支度をするから待ってて。ミル、簡単でいいわ。櫛で梳かしてくれるだけでいいわ。制服に着替えて、朝食は包んでちょうだい。馬車の中で食べるから!」

 何とも慌ただしい入学式の日になってしまった。

「馬車の中で食事をするなんてお行儀が悪いわね」
 マリアナが呆れ顔で言うので
「貴女が早く来たからじゃない!」と文句を言うと
「あら?わたしの所為にするの?」と澄まし顔になった。

 とりあえず馬車の中では二人で話すのが楽しくて、今日からの学校生活について語り合った。





 わたしが屋敷を出た後に、スティーブ様が迎えにきていたことは知らなかった。

「もう学校へ行った?マリアナ嬢が一緒に?」

「申し訳ございません」
 執事が何度もぺこぺこ謝った。
「約束をしていたわけではないから。セレンには迎えに来たこと伝えないでください」

 そう言ってスティーブ様は帰ったらしい。

 これは後日ミルから聞いた話だけど、この時のわたしは全く知らなかった。





 学校へ着くとマリアナが「なんて広くて綺麗な学院なの?ねえ?これからの3年間がとても楽しみね」

 わたしに振り返ると満面の笑みを浮かべていた。

「うん、あまり目立たないように大人しくしていてね?」

 わたしの言葉を全く聞いていなかったことがわかるのもまだ先の話。

 この時のマリアナはただ新しい生活にワクワクしていた。







 学校生活に慣れた頃、マリアナ以外にも友人が出来てみんなで食堂へ初めて行くことにした。

 普段はマリアナの屋敷の料理人がわたしの分のお弁当も一緒に作ってくれる。
 だけど、田舎の領地ではなかった食堂にとても興味があったわたしとマリアナは初めての食堂デビューをすることになった。

「どんなメニューがあるのかしら?」マリアナが友人達に聞いている。
 わたしは廊下を歩いているとふと目に止まった。

 あの人は………
 ーーイザベラ・べルディー様……スティーブ様の幼馴染。

 まずい、気づかれないようにしなければ。

 そう思って視線を外した。

 マリアナ達に「ねえ、急いで行かないと席がないかもしれないわ」と急かした。

「そうね急ぎましょう」「うん」
 わたしの言葉に同意してその場を急いで離れることが出来た。

 スティーブ様が苦手になった理由のもう一つが彼女だった。婚約者になってスティーブ様の屋敷に通っていた頃、彼女はたまに屋敷に遊びに来ていた。

 当たり前のようにスティーブ様と話をして当たり前のように隣にいる。

 わたしの姿を見ると彼の横でバカにしたようにクスッと笑う。わたしを上から下を舐めるように見て、また馬鹿にしたように微笑む。

 もちろんそんな顔を横でイザベラ様がしていてもスティーブ様は気が付かない。
 わたしが顔を引き攣らせていると
「イザベラに対して何でそんなに態度が悪いんだ?挨拶くらいきちんと出来ないの?」と叱られる。

「こんにちわイザベラ様」と挨拶をすると

「スティーブ、怖い。セレン様ったらいつもわたしを睨むのよ」と泣きそうな顔でスティーブ様に訴える。

 すると「イザベラ、大丈夫だ。僕がついているから」と二人の仲良しごっこが始まる。

 そんな時何故かエディ様が後ろから現れて

「セレン、一緒に虫取りしよう!」
 と走ってきてくれる。
「お兄様、イザベラ様と遊ぶならセレンは僕と一緒にいてもいいですよね?セレン今日は何して遊ぼうか?」
 三人の何とも言えない空気を綺麗さっぱり無かったことにしてくれるエディ様にわたしはいつも救われて過ごした。



 なんて事を思い出しながらわたしは食堂でランチを食べ始めた。

『本日のおすすめ』と言うのを選んだ。
 友人になったブラッドが「これ絶対頼むべき。毎回楽しみなんだ」と教えてくれた。
 食堂デビューのわたしとマリアナは「じゃあそれで!」と初めて頼んで男の子も含めて6人で食事をしていた。

 白身魚のレモンバターソテー、ふわふわの白いパンに色とりどりサラダ、そしてデザートの柔らかプリン。

「これとっても美味しい」「ほんと!」
「次の時は何頼もうかしら?」

 わたし達が楽しく話していると………見つかってしまった。

 やっぱりここにくるべきではなかった。

「セレン様?お久しぶりね?」

 スティーブ様の横に立ち、にこやかに笑うイザベラ様がわたしを見ていた。










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